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題名
人生反比例
登場人物
マッドスペロバ
投稿者
うゆま
投稿日時
2004/12/03 2:17:07
「人生とは」
それを考え出すに、疑問は溢れど答えはなかなかに出るものでない。
だから、人生の先など分かる訳も無く。
でも、僕は絶対に答えを見つけて見せる。
トッソ・マーデ 十歳の春、賢者の学院に入るにあたり決心せし・・・
我が名はマッドスペロバ。
今より三十年前、そこらの普通の一般市民、マーデ家に生まれる。
幼少より学問への憧れを抱き、幸いにも両親の知人である魔術師に師事。
めきめきとのその知的才能をあらわし、十歳を前に”神童”と呼ばれる。
師の紹介により、学院入学への試験を受け、見事一番で合格する。
十五の頃には奇抜な発想の論文で”才子”と呼ばれる。
魔術の才能にも恵まれ、魔術師として研鑽を積む。
未来の大賢者、大魔術師現ると、将来を嘱望されるほど。
しかし、人生とは過酷なもの。
二十歳となると、周りも似たような才覚を持つ者が現れる。
”ただの人”となった。
両親を流行り病で失ったのもこの頃だ。
人生という道に穴があるならば、丁度この頃から沢山現れるようになった。
そして徐々に過去の栄光と反比例するかのように、私は落ちぶれていく。
当初の計画。
十代にして魔術師として才能を花開かせる・・・ここまでは良い。
二十代には導師として花を咲かせ、研究室を持つ。
三十代には魔術の奥義に触れ、高名な魔術師、賢者としてオランを闊歩。
そのはずが。
「トッソさん、この本とそこの本五冊、棚に返却願います」
「違う、我が名は」
「はいはい。呼名マッドスペロバで本名トッソさん、早くしてね」
「・・・」
司書はそういうと、本を返しに来た美男子とお喋りを続ける。
私は今、図書館の雑用と言わんばかりの存在である。
現在三十代。
おちびちゃんだけどすらっとした体格。今では背は小さく痩せ気味。
癖っ毛だけどクルクルで可愛いと誉められた。今では灰色の癖っ毛ボサボサ。
瞳は灰色、綺麗な切れ長と誉められた。今ではただの悪い目付き。
両親が買ってくれた高級ローブ。今ではただのボロボロのローブ。
つまり、見た目的に、気味の悪い小さい男である。
そんな私の事を、若い学院生は”鼠”と呼ぶ。
まぁ、もう自分を卑下する事はやめよう。
無駄であることは随分と気付いている。
腰のワンドだけ。
魔術師の証として頂いた十代の頃から今も、綺麗な光沢を見せる。
優秀な者にだけと特別に創られたワンドだけは、未だに私に希望を与える。
今はこんなだが、計画の軌道へと人生を修正してやる。
今に見てろ、絶対に過去の栄光に戻ってやる。
人生今が最悪ならば、私は反比例の一番底に居るのだ。
これからだ。
そう奮起する・・・が。
今日は今日で、ギグスという体格のデカイ男と遭遇する。
本を探しているとか何とかで困っているそうだが・・・
其の前に、返却された本を棚に返したいのに邪魔で返せない。
誰だと聞かれ名(マッドスペロバ)を名乗るが「長ェ」の一言。
あまつさえ、こちらの至極簡単な要求「退いてくれ」には耳も貸さない。
海賊の本は何処だ、東方語で読める本はないのか、訳してくれと言う。
退いてくれないので、怒鳴りつけようとした矢先、返却の本に視線。
これこそが探していたものだと、喜ぶ男。
少し拍子抜けであるが、まぁ、本と出会えた事に関しては流石は私の仕事。
自分を誉める事は大事である。
しかし。
直後、持ち出し希望だと言う。
学院所属でないと駄目だと私が言うと。
「良いじゃねェか。堅ぇこと言うなよ。アンタと俺の仲だろ? 」
何時の間に!?
呆気にとられた私を余所に、ギグスという男は去っていった。
面倒な書類記入という仕事を私に増やして。
ちょっと後、翻弄された事に腹を立てた私であったが、転倒し、本を散らかす。
怒られ、思わず一言。
「す、すまなんだ〜」
己の弱気に今日も悲しくなる一日だった。
しかし。
「片牙」と「赤牙」の海賊について調べたがるとは・・・
今日、本を返却しに来た美男子といい、一昨日読み耽っていた女性といい。
最近は海賊ブームなのだろうか?
などと、独自の推理をうちたてつつ。
「トッソさん、カルタル師がお呼びですよ」
十年来の付き合いである師に呼ばれ、私は師の研究室へ。
「やぁ、トッソ君。まぁ、座り給え。今日は君にやって欲しいことがあってね・・・」
目の前に、一枚の羊皮紙を出される。
「これは・・・!」
まさか、そこで私の人生が再び栄光に戻れるチャンスを掴むとは。
想いも寄らぬ、師の言葉に私は、未来への希望に燃え始めていた。
人生悪い事ばかりではないと。
「人生とは」
修正が難しいものである。
計画通りにはいかないものである。
反比例の様に沈むものである。
そして浮き上がるものでもある。
マッドスペロバ 新王国歴516年 10月 30日に記す
■ あとがき ■
EPというより宿帳っぽいなぁ(汗)
ギグスPLの深海魚さん、上手でなくてごめんなさいです。
この作品の感想をお寄せください
蛇
さんの感想
(2004/12/03 2:18:51)[3]
これ、ええですわ。いい。思いっきりいい。
普通のヒーローものなんぞつまらん。主人公は落ちなくちゃ。落ちて落ちて、落ちる姿。
これがいいのよ。明日のジョーだってドサ周りの時期がないと名作にならないですし、
初代のガンダムの人気が出たのは、アムロがしょっちゅう失敗したり駄々こねたりするからですね。
失敗して這い上がって、また失敗して。人生七転び八起きですよ。彼の成功と挫折を(笑)期待します。
松川
さんの感想
(2004/12/03 2:18:28)[2]
同じく、楽しく読ませてもらいました(笑)
裏で作業中だったのに、フリチャも目が離せなくて困りました(笑)
マッドスペロバが、これからうゆまんの代表キャラの1人になりそうなヨカン。
深海魚
さんの感想
(2004/12/03 2:17:53)[1]
楽しく読ませていただきました。
うゆまさん仕事が早い。「す、すまなんだぁ〜」の一言にまた爆笑してしまいました。
マッドスペロバの生い立ちも簡潔に分かりますし、フリチャの内容も分かりやすく纏っていて良かったです。
フリチャで楽しませていただいただけでなくEPでも楽しませていただきました。ありがとう御座います。
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