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題名
【競作企画】若鷹の広場
登場人物
ネリー
投稿者
うゆま
投稿日時
2006/6/11 22:19:25
私はネリー。
吟遊詩人だ。
私はいつもの場所でいつも歌う。
・・・
オランの商業地区付近。
そこに”若鷹の広場”と呼ばれる広場がある。
一見、街のあちこちにあるような普通の広場。
小さな噴水を中心にして石畳に四羽の若き鷹のレリーフが石畳に刻まれている。
丁度、東西南北を意識したかのようにそれぞれの方向へ羽ばたく姿だ。
多少欠けてはいるが、その姿は今なお力強さを失っていない。
これらが彫られたのは古代王国期のものとされるが真偽は分からない。
ただ、ここに広場を造る際に土を掘り起こしたら出土したものとか。
あまりにも見事であったので、そのまま石畳の一部に使用したという。
それからここは”若鷹の広場”と称されるようになったのだと。
さて。
若鷹の広場と呼ばれる様になった所以は今語られたところ。
そんな広場には今日も多くの人が訪れる。
その人々の目的は通り過ぎるだけではない。
ここでは、ほぼ毎日歌と音楽が演奏されているのだ。
その歌と演奏の主はまだ頭角を表せない若き吟遊詩人たち。
彼らはここで毎日歌と演奏の練習をしている。
いずれは貴族に仕えて大成するため。
やがては詩人として有名になるため。
または人々に世の伝承を広めるため。
未だに無き新たな英雄譚を紡ぐため。
目的は様々だ。
そんな彼らの歌と演奏を聴きに来る。
将来の夢に向けて努力する彼らの歌を人々は。
時に拍手し。
時に批評し。
時に喝采し。
詩人たちは若き鷹の強い羽ばたきのように。
夢という大空へ飛び出そうと今日もここで腕を磨き競う。
石畳の若き鷹が四方へ旅立つようにいつかはここを去る。
時として諦め手を振りいくものもいる。
己の腕の未熟さに嘆き去るものもいる。
夢破れたと静かに姿を消すものもいる。
だが。
ここで彼らが紡いでいた歌、音楽。
それらはここの石畳の若き鷹がいつまでも覚えているだろう。
例えそれらを知るものがいなくなろうとも。
耳を澄ませば石畳の若き鷹は静かに彼らの歌と音楽を紡ぐ。
ここを新たに訪れるものに教えるため。
先にいたものたちの持っていた夢を教えるため。
・・・
耳を澄ましてごらん。
確かに鷹が鳴いているよ。
ここに溢れる歌や音楽を紡いでいるよ。
瞼を閉じてごらん。
強い羽ばたきが聞こえるよ。
夢という大空へ飛び立とうとしているよ。
歌を歌ってごらん。
幾つもの旋律が踊るよ。
東西南北へ鷹が去っていこうとしているよ。
・・・
今日も私はここで奏でる。
私だけの歌を、音楽を。
そして将来の夢を。
若き鷹の羽ばたきのように力強く。
其の日まで私はここにいる。
■ あとがき ■
随分と前に勝手ながら設定した”若鷹の広場”。
どうせならと今回のお題に便乗させて頂きました。
であであ。
この作品の感想をお寄せください
松川
さんの感想
(2006/6/16 22:41:25)[3]
時代(?)と技術、街並みから察するに、この広場にある噴水は、現代の公園にあるような吹き上げるタイプのものではなく、少し上から流れ落ちるタイプのものなのでしょう。ハザードの水流を利用して。
まだ店付きになってない詩人たちが少しでも上に行こうと努力する場所。それでいて、歌うことや奏でることが純粋に楽しいのだと再確認させてくれる場所。
いつかフリチャでこの広場を使おうと思いました。
琴美
さんの感想
(2006/6/16 22:11:40)[2]
表現を模索する人々の集う場所は、大都会の熱気の中にあってひときわ情熱に満ちた場所なのだろうと想像します。
街に活気を与え続ける場所にして、街に育てられる場所。冒険の場をひとたび離れ、詩人として芸の道に立ち返る人々にとっては、そんな場所こそが街との繋がりなのかもしれませんね。
Ken-K
さんの感想
(2006/6/16 16:23:01)[1]
「若鷹の広場」は、いうなれば駆け出しのストリートミュージシャンが大勢集まるスポットなんですね。現代世界でいうと橋上や駅前といったところでしょうか。切磋琢磨し合う音楽家たちに、耳の肥えた聴衆の姿(中にはスカウトもいるかもしれません)など、イメージが膨らみます。
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