エピソード 
1998/05/18 09:51:39 [カミルーン] kakip@lilac.ocn.ne.jp

夜、きままに亭からの帰り道に:
俺はきままに亭に行く時、ある事に激しく悩んでいた。
それは自分とライムとの結婚話をライムの兄、グリーン氏に聞かされたから。
ライムは、体が弱い。それは彼女が重い荷物を運べない事や、走れない事で頷ける。一度俺の前で倒れた時に支えた彼女の身体は、姉さんと違って今にも折れそうな気がした。
俺は…グリーン氏が指摘したように、ライムが好きなんだろう。あんなに好きだったレティシアという名の女性を、ライムが現れた事で忘れてしまったくらいだから。
だが……彼女が長く生きられないからといって、俺が彼女を好きだからと言って、先月あったばかりである彼女に…「結婚しよう」なんて、言っていいのか?
そう、悩んでいて、店長も誰もいない事に気がつかないまま、俺はきままに亭に入った。
途中で誰もいない事に気がついたが、その後すぐ、リヴァースが店内に入ってきた。
彼は溜息ばかり吐いている俺に「どうした?」と聞いた。
俺は1度や2度しかあっていない彼に、全てを言っていいものか迷った。迷惑になるんじゃないだろうか。そんな事ばかり、考えていて…返答に困っていた。
「茶を飲むか?この茶は、気分が落ち着く効果があるんだ」
リヴァースは俺の心情を察知したのか、俺に紅茶を出してくれた。
「……ありがとう」
リヴァースは俺に気を使ってくれている。
そっけない言動だったが、俺はそれを感じ、感謝を彼に聞こえないくらい小さな声で、呟いた。
リヴァースは俺に紅茶を差し出すと、すぐに店を出ていった。なにか、用事があるらしい。
俺はリヴァースのついでくれた紅茶を飲んで、気分が安らぐのを感じた。
……決めた。
静かな心で、俺はライムとの結婚を決めた。
店長が来て、大勢の客が来た。その中に、バジェッドがいた。
バジェッドは歳はかなり離れているけど、何故か気が合う、といった人で、俺は彼に安らぎを覚えていた。
その彼と、店長に。俺はライムと結婚する事を述べた。
「祝言はいつだ?」
と、バジェッドはからかいの表情で俺に訊ねた。
おめでとうと、心から祝福してくれているのが判る。
「来年くらいじゃないかな」
俺はそう言い残して、店を出た。
言葉にすると、「よし、やるぞ」という意気込みが高まるのを感じながら、俺は帰途につく、はずだった。

「う……」
誰かがうめいている。かなり、苦しそうだ。
俺は暗闇の中を、目を凝らした。
姉さんが待っている俺の家の方への道に、子供が倒れている。
俺はこんな時間に子供が倒れている事に気がつき、慌ててその子に近付いた。そして、抱き上げた。
暗闇の中じゃ、傷がどれだけ深いのか、何処に傷があるかは判らない。
俺はその子を抱きかかえて、家に駆けた。薬草がおいてある場所を、頭の中で思い出しながら。

家に辿り着き、姉さんを起こさないように道で拾った子を自分のベッドに横にさせ、ランプを点けて台所に薬草を取りに行った。
薬草のストックはまだあるはずだ。この前取りに行ったばかりだから、困らないほどある。
俺は薬草のありったけと、綺麗な布、そして水を部屋に持っていった。
そして、驚く。
俺が道で拾った子は、人間ではない。エルフだ。
エルフの子供は、めったに見掛けないと聞く。俺は故郷がエルフの村の人たちと交流を持っていたから、これまでに何度か見てきたが、オランに出てきてから、エルフの子供を見るのは始めてだった。
「なにごそごそやってるの…?」
眠たそうな姉さんの声で、はっと我に返る。
俺が姉さんに振り向くと、姉さんはエルフの子供を見て、驚愕していた。
「アナカリス!」
俺が弁解しようと口を開けるより先に、姉さんはエルフの子供に駆け寄った。
「アナカリス……?」
覚えのある、その名前。確か、花の名前だったと、記憶している。
「カミル、何処でこの子を!?」
姉さんは俺に詰め寄る。
「道で、苦しそうにしてて…俺はこの子のうめき声で、この子に気がついたんだ。外だと様子が判らないから連れてきたんだけど……」
俺は思わず、しどろもどろになる。
姉さんは俺の説明を聞くと、はっと我に返り、アナカリスに治療呪文をかけようと、呪文を口ずさむ。
姉さんの手からぽう、と淡い光がでて、アナカリスの身体に消えていく。
だが、それでもアナカリスの容体は変わる事はない。
俺はいやな予感を覚えた。姉さんを押しのけ、アナカリスの服を破り、傷の様子を見る。
「!!」
この子につき纏っている精霊が、教えてくれたとおりだ。
アナカリスは……もぅ、助からない。
「アルムーン……姉ちゃん…?」
かすかに目を開いて、アナカリスは姉さんを呼ぶ。
姉さんもアナカリスの容体を見て察したのか、再び治療呪文を唱えながらアナカリスの手を握る。
「マーファよ、この小さな魂をどうかお救い下さい……」
涙乍らに、姉さんは神に祈る。
俺は姉さんの涙を見て、アナカリスの応急処置を始めた。
助かってくれ。姉さんが、哀しむ事が無いように。
「カミルーン、兄ちゃん…?」
アナカリスは俺を見上げ、訊ねた。
「喋るんじゃない。直してやるから」
アナカリスは俺に、もう片方の手を差し伸べる。
俺は思わず、治療を中断してアナカリスの手を握った。
「もう、いい……。もういいの。あたし、助からない……」
アナカリスは、涙を流して俺に自分の生命が長くない事を告げた。
俺はその姿に、ライムを重ねていた。
「あたし、チェンジリングなの……」
苦しそうに、アナカリスは告げる。俺は目を見開く。
チェンジリングというのは、差別の対象、そして魔法使いには実験の対象となることが多い。この子も俺のように、いや俺以上に、今までたくさん辛い事があったに違いない。
石が投げられるのは、まだいい。罵声を浴びせられるより、まだ耐えられる。
「アナカリス……」
俺がこの子の名を呟くと、アナカリスは苦しそうだが、笑顔を見せた。
「……姉ちゃんと、一緒だね……。あたしがチェンジリングだって知っても、変わらなく接してくれる……」
多分、それがたまらなく嬉しいんだろう。
そういう記憶は、俺の中にもある。
「血が繋がってないって…姉ちゃん、言って……たけど…コホン、優しい心を持った、姉弟……ね」
「アナカリス。もう喋るな」
アナカリスは血を吐いた。多分、最期の時が近付いている。
「アナカリス。お願い。生きて。生きてよ……」
姉さんは涙でぼろぼろになりながら、アナカリスの手を握る。
俺も、生きてくれと願い、アナカリスの手を握っている自分の手に、力を込める。
アナカリスは、儚く微笑った。
その笑顔が、母の死に顔とそっくりだった。
「姉ちゃん、兄ちゃん……あたしを直そうとしてくれて、ありがと……。親切にしてくれて、ありがと。嬉し、かった……」
アナカリスの手から、力が抜ける。
「アナカリス!」
姉さんと俺は、同時に彼女を引き戻そうと、彼女の名前を叫ぶ。
頼む、いかないでくれ。姉さんが哀しむ姿は、見たくないんだ。
だが……アナカリスは、朝日が昇る直前……息を引き取った。

誰なんだ。アナカリスに、こんな事をした奴は。
俺は、そう涙した。

1998/05/18 08:49:48 [グリーン]

陰謀(笑) 代理者:瑞樹:
先日、カミルーンと名乗る青年が、ライムとの仲を取り持ってくれ、私はカミルーンと言う名の青年を偉く誤解していた事に気がついた。
ライムが信じられる人物なら、私にもそうだという事を、何故気がつかなかったのか。済まなさでいっぱいだ。

その後日、再びカミルーンは私の元に訪れた。
ライムが言った、私の「依頼」が判らない、と。そう彼は言った。
私はその時、いい事を考え付いた。
それはこの青年に恋するライムと、ライムに惹かれているだろうと思うカミルーンを、結婚させる事だ。
余りに突然で、しかも短絡的なこの考えに、私の妻、ライは大喜びで賛成してくれた。そして彼女は、カミルーンを騙す役目を引き受けたのである。
なに、カミルーンを騙すのはたやすい事だ。純朴そうな青年だったから、
「ライムは長く生きられないだろう」の一言で、簡単に騙されるだろう。
ふ、ふ、ふ。
これからが楽しくなりそうだぞ。
結婚してしまえばこっちのもの。後でカミルーンが「騙した」と言っても、好きな相手とくっつけてやったんだから、感謝されるべきだ。

1998/05/15 23:34:13 [ゼザ] shoju-s@msf.biglobe.ne.jp

山賊退治:
 山賊に悩まされているというその村――確かレムニ村といった――はとてもオランの近くにある村とは思えない程荒れた村だった。
 荒れ果て、野菜が散っている田畑、そして戸が堅く閉ざされている家々。ただその荒れ方を強調するかの様な、荘厳な印象を受ける五階建ての塔だけが、周りから浮いていた。
 きままに亭のマスターからの紹介でここの山賊を退治するために来た私たち――私、ハースニール、デュース、アーディの四人――はその光景から深刻な状況であることを感じ取っていた。
 私たちは焦燥感に駆られながらも、村長の家へと行ってみることにした。
村長の家を探して歩いていた私たちをハースニールが制止してきた。
「待て、何者かがいる」
 その声を聞いて立ち止まった私たちの目に、異形の怪物としか表現のしようがない怪物が見えてきた。
 豹の身体に鷲の頭を持つ四本足の怪物――それは明らかに人間界に生息する物であるとは思えなかった。
そこで私はマスターの話を思い出していた。
――昔この村で魔術師が魔神を召還して大騒ぎになったことがある――確かそのような話だった。どうやら魔神が関係しているらしい。昔の事件は終わってはいないのであろうか。
 その怪物は畑を荒らしていた。熱心に食物を探しているらしい。
「醜い…」
 デュースがそう呟いて剣を抜いた。このような怪物を許すことが出来ない様である。
 他の皆も戦う準備が出来ているらしい。
 それを確認した後、私は剣を抜いた。

 そこには首と胴が離れた怪物の死体があった。
「山賊の他に敵がいたのか?話がちがうぜ」
 アーディが言う。
 確かにこれでは話が違う。山賊が率いているのだとすれば、このメンバーでは対処出来ない可能性が高い。
 取り敢えず、私たちはまた村長の家を探すことにした。
 程なくして、私たちは村長の家を見つけた。
 その家も他の例に漏れず、戸を堅く閉ざしてあったが、私たちが呼び掛けを行うと、中から窶れた顔の老人が現れた。
「あなたたちは……どうぞお入り下さい。お待ちしておりました。」
 少し慌てた様子でその老人は中へと案内してくれた。
 中にあった椅子に腰掛けると、老人は話を始めた。
「山賊は本当に唐突に現れたのです。奴らは血も涙もない化け物で、普通に食物を搾取するだけでなく、怪物を放ってきたのです。そしてですねぇ…」
「待て、何か聞こえる…」
 そこで話を遮ったのはハースニールだった。
 彼はそう言った後、弓を持って立ち上がり、
「どうやらその山賊が攻めてきたようだ。行くぞ」
 と言った。
 彼の言葉を信じ、私も立ち上がった。
 程なくして山賊の鬨の声が聞こえた。数は十人ほどであろうか。
 家の外に出るとくっきりと、武装した山賊の姿が見えた。
 そして一呼吸の後、私は剣を抜いた。
 
 周りには五人の山賊の死体があった。他の者が逃げていくのが遠目に確認できる。
「何故、先程の怪物の姿が見えなかったのでしょう」
 デュースが言った。
 それに同意するようにアーディも続ける。
「それに奴ら何か変なこと言ってたぜ。俺たちの要求はあれだけだ。とか何とか」
 要求してくる山賊など聞いたことがない。奴らは物を搾取することしか考えていないのではないのか。
「何か裏があるようだな、この事件には」
 ハースニールが確認するかのように言った。
「じっと考えていても仕方がないでしょう。一度村長の家に戻りましょう」
 デュースの言葉に反対する理由もなく、私たちはその言葉に従い、村長の家へと向かった。
「おい、ちょっと待ってくれないか」
 唐突に後ろで声がした。明らかに私たちの中の者とは違う声だった。
 剣に手を掛けて後ろを向くと、そこには痩せた、眼光の鋭い男がいた。年齢は四十台後半だろうか。白髪が目立つ髪を後ろで縛っている。
「お前、何者だ!」
 剣を抜きながらアーディが叫ぶ。
「待って下さい。彼は何かを知っている様です」
 アーディを左手で制しながら私は言った。
「そういうこった若造。今から俺が説明してやるからそこで黙って聴いてろ」
 小馬鹿にした男の言葉にアーディが真っ赤になって怒っていたが、今はそのことに構っているときではない。
「説明してくれるか」
 ハースニールの言葉に、男は重々しく頷くと事情を話し始めた。
 彼――ガゼルと名乗った――の話をまとめると、こういうことらしい。
 ことの起こりは五年前、この地に学院を追い出された魔術師がきたことだった。この魔術師はこの地にあった古代王国の塔――当然、発掘済みではあったが――に住み着いた。そして隠し部屋を見つけ出して、その中にあった『魔神召還の壺』で魔神を召還した。動機は単純な好奇心からだが、このことは深刻な事態を招いた。壺を魔神に盗られ、命じられるままに魔神を召還しなければならなくなったのだ。そして、この地に魔神が現れ始めた。魔神の被害に晒されるようになったレムニ村は、冒険者に魔神退治の依頼をした。その結果、冒険者たちのおかげでこの村は救われたのだが、この後の事態が今回の事件につながることになる。『魔神召還の壺』が紛失したのだ。今でも学院はこの壺を探している。結論から言うと、この壺は村長の手に渡った。そして如何にして知ったのかは分からないが、そのことが山賊に伝わり、山賊が壺を手に入れる為に襲ってきた。それに対抗するために村長が壺を使った。
「……そして結局はその魔神の方が厄介な相手になっている、というわけだ」
 ガゼルはそう締めくくった。
「さて、じゃあ依頼の内容を話そうか。まず一つ目に、壺の回収。んで二つ目に魔神と山賊の退治。これだけで四人合わせて八千ガメルだ。百戦錬磨の冒険者にとっちゃあ楽な仕事だろ。壺の処理も全部お前らに任せるよ」
 私は呆気にとられながら、その話を聞いていた。
 『魔神召還の壺』といえば、かなり最悪の部類に入る魔法の道具である。確率は低いが、上位魔神が召還されることさえあるらしい。
「取り敢えず、腹が減ったな。仕事の前には腹ごしらえしなくてはな」
 ハースニールが不敵に笑って言った。
 あたりは既に暗く、視界も悪くなっている。
「それもそうだな。まぁ家に来いよ。旨いもん食わしてやるぜ。ついでに寝床も提供してやるよ」
 私たちは不安に身を駆られながらもその言葉に従った。今を楽しまねばならない。必ずしも、明日があるとは限らないのだから。

 次の日の朝早く、私たちは村長の家へと向かった。
「村長はもう気が触れているかもしれない」
 前日の夜、私は皆にそう語った。
 昔、異界の者に触れた者を見たことがある。その経験を元に私はそう語った。魔神と我々では根本的な精神構造が違うらしいのだ。
私の言葉を聞いて、皆は話し合いで壺を手に入れることを諦めた。結局は、力押ししかないのだ。
「俺が役に立つことはあるのか」
 アーディの言葉に、私は答えた。
「あなたには山賊に対する警戒をしてもらいます。あなたの力では魔神に対して役に立たない」
 こういうことははっきりと言っておいた方がいいだろう。彼も憮然とした表情ではあったが、この言葉には納得したようだった。
「さて、入るか」
 ハースニールの言葉に頷き、私は扉を叩いた。
 中から出てきたのは、目を血走らせた村長だった。
「何ですか、あなたたちは!あれは絶対に渡しませんよ!」
 やはり彼は既に錯乱しているらしかった。両手を振り上げて殴りかかってきた。
 部屋の中には異形の者が見える。
 私は村長の拳を避けながら、剣を抜いた。

 床には異形の者の死体が四体並んでいた。
 視界内には、村長を蘇生させているハースニールの姿が見える。デュースが怪我を負っているようだったが、命に関わるような傷ではなさそうだ。アーディ、ガゼルの二人は壺の確保を行っている。
 そして私はガゼルの元へ向かった。
「さて、あなたは何者なんですか」
 私の問いにガゼルは不敵に笑うとこう答えた。
「元冒険者だよ」
「それだけではないでしょう。他にも何か……」
 そこまで言った私は目を疑った。
 ガゼルの背中に醜悪な翼が見えたのだ。
「余計な詮索は身を滅ぼすぜ」
 ガゼルが呆然としている私の耳元で囁いた。
 私が振り向くと、ガゼルは作業へと戻っていた。

 山賊退治自体はすぐに終わった。
 あの後、もう一度襲ってきた山賊たちの足跡をハースニールが追っていったのだ。そして、彼らのアジトを見つけ、一網打尽にした。
 壺も学院が引き取ってくれ、多額の礼をもらった。
 村長も正気を取り戻し、これからは更正することを誓った。
 ただ私には、村を去る前のガゼルの笑みが忘れられない。

1998/05/13 12:35:05 [カール・クレンツ] 98E0313@st.keiho-u.ac.jp

ここへ来た理由:
クレンツ家は代々ファリスの神官を輩出した、ベルダインではある程度は名の通っている名門である。
そこの嫡男である彼は、ファリスの声を聞くどころか、何とチャ・ザの声を聞いてしまったのだ。
これはもう一大事、改宗を迫ろうと父親はしたがその時すでに遅し、そうなることを予測し、さっさと荷物をまとめて出ていってしまった。しかも、家宝の聖剣「公正なる裁き」をもって。
「公正なる裁き」はデータで言うと、+1の筋力13のミスリル製バスタードソード。
正義のため(こそ泥だろうが、食い逃げだろうが)となると神々しいばかりのオーラが出て打撃力+15、プリーストマジックに対する魔力のボーナスが+3となる。(宗派は問わず)
ただし、一族の中で、選ばれたものしか、使うことができません。それ以外が使うときは必要筋力は30となります。
こればかりは取り替えさねばならんと、必死になって父親は追ってきます。
それを逃げつづけて、ここまでやってきたのです。

1998/05/12 00:49:41 [セリカ・カストロール] yasya@remus.dti.ne.jp

出生の秘密((笑):
プロローグ
生い茂る森の中 激しい雷鳴の中 ある部隊がいた。
そいつらは 蛮族に囲まれて 逃げ道を失っていた

「北の山道に蛮族! 退路を絶たれました!」
「スープラ司令! いかがなさいますか?」
司令と呼ばれた男は苦々しい顔をし、こう部下の者達に命令した
「迂回して西へ向かう 敵の包囲の薄い所を突くのだ」

その西に向かう最中、蛮族達が死に絶えていた・・・。
(何故だ、魔物達の死体がある?)
雷鳴が轟き死体の山の中返り血を浴びた血の色の様に紅い髪の独りの少年が座っていた
「これはお前がやったのかね?」司令がその少年に問いかけた。
少年はその問いかけにこう答えた
「生きて国へ帰りたきゃ俺を傭いな。奴等の包囲網を突破してやる。」

第一章 セリカ・カストロール
「旦那様がお戻りになられました!」
「お帰りなさいませ 旦那様」
その家の主が戻られた時、使用人の者達にそう声をかけられる先ほどの司令の姿がいた。「お父様!」
まだ年の頃13歳頃の少女がスープラに駆け寄り、抱きつく。
「はっはっは、カレン、また大きくなったみたいだな。皆の事を聞いていたか?」
そのお父様と呼んだ肩に乗り、カレンと呼ばれた少女はこう言った。
「勿論よお父様、蝶がお父様の書斎に迷い込んで花瓶を割った時でさえ
 カレンは良い子でしたわ。」
「はっはっは、やったなこいつめ!」
そして、カレン顔をふと向けると1人の少年をみかけた。
「だんな様・・・?」使用人が声をかける。
「おお、この少年か? 今回の戦いでこのアクラに助けられてな。
 身寄りも無いというので連れてきたのだ。」
「その名前・・・・西の民?」
使用人達がざわつく。しかしそれを制すかの様にしてスープラがこう言った。
「西の民と言っても全てが好戦的な部族ではない。
 このアクラが居たタヨト族は昔から西の蛮族に名を連ねた事はないそうだ。
 そしてこの者に今日からセリカの名を与えこのカストロール家に迎える事にする。」
「お嬢様?」
カレンと呼ばれた者がセリカに近づき、こう喋った
「カレンと仲良くしてね、セリカお兄ちゃん。」
「あ、あぁ・・・。」



「カレンお嬢様〜? どこへ行かれたのか・・・・。あ、セリカの後ろを歩いてる・・」
「ねぇお兄様、セリカはうちの御先祖様だって知ってた?凄い剣の達人でしたんですって きっとお父様はお兄様にすごい期待をされているのね。」

「・・・・。なぁ、カレン、俺といて楽しいかい?」
「・・・・・・?、どうしてそんな事を考えなくてはいけないの?」
「・・いや・・。」
「だってカレンのたった1人お兄様なのですもの。
 兄弟とは仲の良いものなのでしょう?」
「どうかな、俺には良く分かんねぇや。ずっと独りで暮らしてきて
 剣しか頼る物がないから、強くなっただけだ。」
「・・・・」

その後カレンと恋仲にあったランチャ者がセリカに決闘を申しつけた
「お兄様もランチャも止めて! お父様、何故止めてくれないのです!」
「・・・。」
数分の剣闘のランチャの剣が弾き飛ばされる。
「くっ・・・・。どうした、とどめを刺せ!」
「わりぃが・・・とどめは刺せない・・・。俺は強い奴が好きでな・・・・。」
「・・・・」
2−平和、そして・・・・。
その年の入団試験で、セリカは騎士団に14歳で入団するという快挙を成し遂げる。
1年後・・・・。
「セリカ、任地はどうだったか?」
仲の良くなったランチャが聞く。
「そうだな、雪が割と多いが気音は安定していて、鎧を着ている分には過ごしやすかった カレンはどうしてる?」
「ああ、健勝だよ。お前が教え込んだ剣の腕前もずいぶん上達された・・・そして・・
「そして?」
「本当にお綺麗になられた・・。」
「・・・・。」

自宅に戻ると父スープラとカレン、そして使用人達が迎えた。
「お兄様!」
「お父様、カレン・・・ただいま帰りました。」(本当に美人になったな・・・)
「お兄様も護衛に参加されるんでしょ。」
「あぁ、領主様達と王様の会談される今度の会談だろ。騎士だから当然さ。」
「お兄様、私も騎士になりましたのよ。」
喉の乾きをいやそうとして飲んだ水を吹き出すセリカ。
「そして、私もその会談に護衛として・・・。お兄様は反対なさるのですか?」
「ゲホ、ケホ。ったく・・・・。」
「だって、お兄様こっちに帰ってこられたりしても全然家にお戻りにならないから、
 私が騎士団に入ったらお兄様に毎日会えるかな、って・・・。」
「・・・・。まぁ、お前の事だから止めてもやるつもりなんだろ、
 怪我だけには気をつけろよ。」
「御免なさい・・・・。」

そして、会談の当日
「あら?あの人・・・。ちょっと!、あなた、一般人は立ち入り禁止なのよ?」
身なりの良さそうな青年に声をかけるカレン
「そう言う君は?」
「私はお兄様を探しているのよ。」
「(答えになってないと思うけど・・)」
「今日はねここで領主様達と王様の会談されて一般人は出入り禁止なのよ。
 私が出口まで案内してあげる。」
「(違うのに・・・・)」

「あれはカレンと・・・。王子?どうして・・?」
疑問に思うセリカ しかし声はかけづらいのか、声をかけるかどうか迷ってる時に
「逆賊だ!」という声があがる。
2人をいっきに切り伏せるセリカ。しかし3人は辛いのか1人逃がす。
その1人がカレンと王子に向かう
「カレン!王子をお護りしろ!」セリカが叫ぶ。
「(え?王子って・・・?)」
そして、カレンもセリカ譲りの太刀筋で切り伏せる。
「大丈夫ですか、王子!」
取り巻きが王子に群がり、カレンはセリカに向かう。
「大丈夫か、カレン。」
「ええ・・・」
カレンが振り返ると、王子と視線が合っていた様だった。

結局国王暗殺は未遂に終わったが犯人の所持品から西の蛮族が放った刺客と言うことが
判明した。急ぎ議会は蛮族達を討伐に向うための遠征部隊を結成させた。
その遠征部隊の中にセリカとランチャの二人の名前が連ねてあった・・。
「セリカ、これから辛い、激しい戦いが待ってるぞ・・・。」
「奴等に劣るなんて事はあり得ないぜ、俺は・・・。」
「そうだったな。お前は西の出身だったな・・・。
 しかし、カレンお嬢様のあんな悲しそうな顔を見たのは初めてだったな。
 この戦いが終わったら婚儀を交わして、安心させてやらないと駄目だぞ。」
「そうだな・・。」

しかし、この遠征はかつてない蛮族の組織的な反抗に合い
壊滅的な打撃を遠征部隊は受ける事になる。それはセリカの部隊も同様であった・・・。
「セリカの部隊が壊滅?」
スープラが信じられない、という顔をする。
「野営地を敵に火攻めにされ成す術もなく・・。亡骸は確認できませんでしたが
おそらくは・・・・。」
「なんという事だ・・・。」
力無く崩れ落ちるスープラ。しかし、その横のカレンはキッと見つめ
「お兄様は生きておられます。私は待ち続けます・・・・。」

その頃、セリカは・・・・
「くっ・・・・。」
「よぉ、ようやく気がついたか、あんた4日間も目を覚まさなかったんだぜ。
 気を失っていたあんたをここまで引っ張り上げるのにどれだけ苦労したか。」
見ると、少年が横で傷ついたセリカの為に薬草を石臼でこねていた。
「ここは・・・タヨト族の村か?」
「ああ、北端のタビス村さ。・・・ってあんた何でタヨト語が喋れる?」
ふとランチャの事を思い出すセリカ。ここまで一緒に庇い合いながら歩いて来た事を
思い出す。
「ランチャは・・・。俺を連れてきた男はどうした?」
少年は禿げ山の所を指さした。そこには戦死者の為の墓標が立っていた。

墓標に向かい、セリカはランチャの亡骸が眠っている所に立った。
ランチャの言葉を思い出す。
「セリカ、お前は生きてカレン様の元へ戻らなければならないのだ!
 お前を待っているカレン様の元へ・・・。」
歯をくいしばるセリカ。それは大切な仲間への思いとともに・・。

3 Departure as adventures
タヨト族の所での戦闘は熾烈を極め、元の国へ戻るのは1年を要した。
タヨト族には多大なる感謝を受け、村の財産である宝石を貰った。
そして、国へ戻ると・・・・
「新しいお后様であるカレン様を見たかい?」という会話を聞く。
自分の耳を疑いたくなる様な言葉を聞いた。
そして、自宅ではカレンを祝う為の席を設けてあるのを見ると、
セリカは安い宿を取り、カレン宛に手紙を書いた。
そして・・・。
「俺は・・・オランへ行って自分の記憶を無くして貰おう・・。
 確か、という魔術師がそういった魔法を研究してると聞いた・・・・。
 剣の技なんざ、記憶の彼方へと飛ばしてやる・・・・。」

そして、彼の冒険者としての再出発が始まった・・・・。

1998/05/11 19:30:25 [リヴァース]

さいごの天使:
わたしの事を「ぱぱ」、シルビアを「まま」と呼ぶ半妖精の子供がいきなり酒場に現れたのは周知の通り。無論、身に覚えはない。わたしがその子供・リヴィア(名前まで似ている)の父である事はありえない。シルビアも、あれで男だから母親であるはずもない。
子供は泣くし、まわりの奴等は囃したてる。見捨てて旅にでも出たい気分だった。その日は宿を取り、次の日から身辺調査に乗り出す事にした。

衛兵の詰め所や神殿、戸籍管理所などを当たってみたが、手がかりは何一つとして出てこなかった。
それにしても子供というのはなんて扱いにくいものだ。感情の変化は激しいし、わがままだし、気まぐれだし、自分の思いどうりにいかないと人目かまわずすぐに泣く。何度置き去りにしてやろうかと思った事か。
町中を歩き回って、疲れたと泣き喚くと思ったら、次の瞬間にはピクニック気分で喜んでいる。のんきなものだ。
おもしろ半分についてきているセリカは茶化すだけだし、まったく苛立たしい。

さて、気になる点は「魔法使いのおばあさんがつれにくる」といった点。魔術師ギルド関係者の孫か?と広場で考えあぐねていると、いきなりリヴィアが倒れて苦しみ出した。すごい熱だ。
宿に連れて戻って寝かしつける。奇妙な事に、まったく汗をかいていない。 精霊の変化もわからない。
どうしようもなくて、薬を調達しにいこうとすると、リヴィアはわたしの服のすそをつかんで,おばあさんの薬を飲まないとだめだ、そばにいてほしい、という。
その「おばあさん」の居場所を聞き出す。町から離れた森の中らしい。リヴィアはそこから独りできたというのだ。
そこに行こうとするが、リヴィアはわたしを放そうとしない。仕方がないので、無理を承知で、抱きかかえて連れて行く事にした。

目的の場所は思いのほか遠かった。セリカやヤンが食料を準備してついてきてくれていなかったら、困った事になっていたことだろう。
その間にも、リヴィアの容態はどんどんおかしくなっていく。呼吸は荒いし、所々出血さえしている。焦燥が押しよせてくる。野宿の間も、ヤンは寝ろといってくれるが、それどころではなかった。

街道から外れた所にある朽ちた神殿。そこに目指すものはいた。
黒い長衣に身を包んだ老婆がこちらを見て笑っていた。わたしがリヴィアについてたずね、とにかく薬とやらをもらおうとすると、けたたましい笑い声を上げた。
「シルビアの小僧を連れてくるかと思いきや、役立たずよの・・・」
そして、2、3の古代語を発した。

抱きかかえていたリヴィアの目が赤く光る。かと思うと、すばやくわたしの腰のシミターを抜き、その勢いでわたしの肩をえぐった。ふいをうたれて痛みに思わずうずくまる。
セリカがリヴィアを突き飛ばす。ころころと部屋の隅まで転げていったリヴィアは、涙ぐんだ目で、
「ぱぁぱ、いじめるの・・・?」とこちらを見つめた。
背後の老婆の笑い。そして、どこに隠れていたのか、数人の闇司祭が現れた。
リヴィアがなおも、剣をもってかかってこようする。眠りの精霊に呼びかけて眠らせようとしたが効果がない。ならば、とドライアードに命じて、瓦礫の隙間から伸びている蔦で彼女を拘束させた。リヴィアの悲鳴が耳を打つ。

彼らはシルビアを狙う闇司祭の一味だった。シルビアの存在を疎ましく思うファリス神殿の者と手を組んで、彼を人知れず亡き者にしようとしたということだ。シルビアの側は、神殿の者達に守られてガードが堅い。そこで、彼が現在熱を上げているらしいわたしとの「子供」をつくりあげて、おびき出そうとしたのだ。

リヴィアは、神殿に運び込まれた無縁仏である、半妖精の少女の死体を材料として作り上げられた、屍肉のゴーレムだった。それに、どこから手に入れたのか、わたしとシルビアの髪の毛の細胞を加え、邪な魔法を用いて肉体の組織を蘇らせた。その体に、自分が死んだ事すら知らず、さまよっていた魂を入れ込んだのである。彼女が、両親から棄てられ、誰からも愛された事のない悲しい少女であった事は容易に想像がつく。

それらの事を、老婆は悪びれもせず、つらつらと語った。
老婆と闇司祭は、怒りに我を忘れたヤンとセリカの二人の戦士によって、あっけなく片づけられた。
しかしそれは、同時にリヴィアの2回目の死を意味した。
自然を歪めた存在であるリヴィアの体の細胞は、邪な魔力の供給を得てのみ活動し得たのだ。

「ぱぁぱ、リヴィアね、リヴィア・・・・・・」
魔力の支えを失ったリヴィアの肉体は、駆け寄ったわたしの腕の中で文字通り崩れていった。つかんだ小さな手は、ぬるりと形を失った。肉が溶け、血のような赤い液体がわたしの服に染み込んでいく。後には、グズグズになった肉塊と、白い骨が残された。

最期に彼女は何を言おうとしたのか。頭骨の眼窩の空洞は、もはや何も語らなかった。

シルビアを連れてこなかったのは本当に正解だった。彼には、リヴィアはわたしの知り合いの冒険者夫婦の娘で、仇敵に狙われていたので、娘に催眠術をかけてわたしに預けた、ということにしておいた。彼にもいろいろ敵が多い。今更、余計な負担を増やすまでもない・・・。

見返りに何も要求しない、ただ、無条件に愛してくれる血を分けた存在。家族というものの暖かみ。わたしには永遠に望み得ないものを、リヴィアは少しだけ、教えてくれたかもしれない。

鎮魂歌と子守り歌は同じだ。安らかなる眠りを祈る点で。
わたしは、また、小さな悲しき天使の為に、唄うのだろう・・・。
 私を受け入れてくれるあの空間で。

1998/05/09 15:22:54 [アーディ]

ハーピー退治:
俺とハースニール、メレディの3人でハーピー退治の依頼を受けたんだ。
場所はオランから北へ何日か歩いたところにある辺境領。
そこを治めてる領主からの依頼だったんだ。
あのオヤジ、見るからに駆け出しの俺とメレディ見て「大丈夫ですよね・・・?」と何度もぬかしてた。
ここの領主に取っては一大事、頼もしそうな冒険者に来てもらって少しでも安心したいんだろう、
とハースは言ったが・・・やっぱむかつくもんはむかつく。
おおっと、話が脇道にそれちまった。

問題のハーピーは領地の近くにある山から来るらしい。
俺達は領主の館で一休みして、次の日の朝早くその山に登ったんだ。
この仕事に出る前、きままに亭でヤンからハーピーに魅了されて危うく旦那になるところだった、
と言う話を聞いていた。
俺達が相手にしたのはそれとは違う、ワシを旦那にする魅了しない種類のハーピーだったけど、
その数が半端じゃなかった。最初やってきた時はそいつらの影で夜になったのかって思ったもんな。

その後は縄張り荒らされて怒り狂ったハーピー相手にもう大混戦よ。
鳴声なのか何か言ってんのかわかんないハーピーの叫び声でこっちの声は聞こえない。
ハースニールは弓で確実にハーピーを傷つけていたが情け容赦なしに(しねえよな、普通)
襲ってくる奴等に邪魔されて照準を合わせるのに苦労していた。
メレディも火のついたたいまつで威嚇していたが、何度かそのたいまつをもぎ取られていた。
俺は剣を振り回していたんだが、片っ端から飛んで逃げられ、逆に奴等の鈎爪でダメージくらう始末。
それでも、どうにか半分は倒し半分は追い払うことができた。
終わった頃は3人ともクタクタ。しばらくお互いに口もきけなかった。

どうにか体力も回復できた頃、ハースニールがおかしいと言い出した。
このハーピーの旦那はワシ。しかもこの季節、食料にも不足しないはずなのに
なぜあんな群れで、もちろんワシもいるはずのない人里に降りてきたのだろう、と。
メレディも危険な目に会うのがわかってんのに人里に降りてくるはずが無い、と断言した。
金をもらってんだから、できる限り依頼主の心配事を取り除くのがプロ。
俺達はハーピーがやってきた方、山頂へ歩き出した。

ハーピーたちの巣は思ってたよりすぐ見つかった。
地膚が露出している斜面にでっかい鳥の巣があちこちにあった。
やはりハーピーたちは襲ってきたが、今度は難なく蹴散らせた。
完璧に追い払う為に、巣もいくつか取り壊した。
これで生き残ったハ−ピーたちも、しばらくあそこに行くことはないだろう。
まだ巣立ったばかりの子ハーピーを見た時はさすがに可哀相になったけどな・・・。

斜面の下には、俺達が倒したハーピーのほかにだいぶ前のハーピーの死骸があった。
それも、ひとつだけではない。俺達が倒したやつと同じくらいの数の死骸が転がってたんだ。
剣の傷がもとで死んだもの、弓矢で死んだもの、そしてひどい火傷を負ったもの(魔法か?)もあった。
その傷でここまで飛んできて、力尽きたらしい。
ハースニールのもの意外の矢が刺さっているハーピーから矢を抜き取ってみた。
どの矢羽もすべてオレンジに紺の斑点で染められていた。
メレディの呼ぶ声がしていってみると、メレディはさらに奇妙なハーピーの死骸を見つけていた。
そのハーピーには目立った傷はなかった。
ハースニールがそいつを調べて一言、「毒だ」。俺もメレディも息を呑んだ。

ハーピーたちは毒をまかれ、武器と魔法でもとの住処を追い出されたんだ。
自然ではなく、人の手で。

そこで分かったことはそれ以上無かった。
ハーピーのもとの住処はきっとあの山から近いんだろうが、わかるはずもなかった。

依頼主には感謝され、報酬も上乗せされて仕事としては上々の仕上がりだったが、
その帰り道、あのハーピーたちの死骸が頭を離れなかった。

1998/05/05 13:19:02 [オーライル神父]

続・神父の告白(アデラ編):
……そうですか。では御話しましょうか。
もしかしたら、貴方はアデラを助けてくれるかも知れません。

アデラと私が初めて出会ったのは、5年前。暖炉に火が入る季節でした。
…ええ、勿論、アデラはその頃の私を憶えて等いないでしょう。
その時、あの子はまだ乳飲子であったのですから。
お話しした様に、私は「闇の司祭」と人々に忌み嫌われています。
まして、従来からある神殿の教えに逆らっているのです。
命も狙われていましたし……何よりその頃の私は血の気が多かった。
教団の手から逃亡している私を受け入れてくれたのがあの子の村です。

さて…先日、村が冒険者に襲われた、とお話ししましたね。
ええ、そうです。ヤンさんとリヴァースさんの件です。
その時、アデラは村の外れで一人、遊んでいた様です。
なにせ、生まれてまだ6年程しかたっていませんからね。
エルフの長命は御存知ですね?
つまり…彼女には一緒に遊ぶ年頃の仲間がいませんでした。
あの子はその時の冒険者を「優しい笑顔だった」と言っています。
だから、村へ案内したのだ、と。
世間と隔離された中で生まれ、育ったあの子には、自分達種族が
忌み嫌われている等と思いすらしなかったのでしょう。
あの子の目の前で、両親、姉、そして知人達が殺されました。

私も全てを聞いたのはつい先日ですよ。
最初、私に対しても恐怖を抱いていましたから。
それに……今でもあの子はあまり喋りませんでしょう?
………そう、貴方のおっしゃる通りです。
自分の性で家族や仲間が殺された、と信じて疑いません。
食事すら、まともに取ろうとしませんでした。
確かに荒療治だったかも知れませんが、ここへ連れてきて
本当によかったと思います。
ああ、シェイドですか?
どうやらあの子はシェイドと仲が良い様ですね。
あんな事になるとは私にも推測出来ませんでしたよ。

……あの子もやがて大人になり、様々な事を知るでしょう。
でも、誰かを憎む事だけはして欲しくありません。
「冒険者」を憎む事だけは避けねばならなかったのです。
それは結局、あの子と仲間達に対する差別と同じですから。

私も、常に命を狙われる身です。
いつか、あの子も巻き込んでしまうでしょう。
だからこそあの子を託せる様な人を、倖せにしてやってくれる人を
捜し、見つけねばなりません。
……辛いですよ。別れが辛く無い、だなんて私にはとても言えません。
ですが、あの子の倖せの為には……私では駄目なのです。

1998/05/02 20:50:41 [オーライル神父]

きままに亭と言う酒場を出た後、アデラの瞳はじっと私を映していました。
『あの若者達は酷い冒険者じゃあ無い』と言う、私の言葉は信じてくれて
いるのでしょう。酒場を去る時のアデラを見ればそれは判りました。
しかし、幼い心では理解出来ない事も沢山あるのでしょう。

彼女のかつて倖せに暮らしていた隠れ里は、私にとっても想い出深い処でした。
普通、ダークエルフ達は「虐げられている」と言う事実を傘にして「自分達は
理不尽な待遇を受けている」と、己の正当さを見せようとする物です。
しかし、彼等は違いました。その様な卑屈で歪んだ心を持ってはいませんでした。
差別を受けた事の無い、本当に純粋な心を持ったままの、そんな人々でした。
指導者である「銀目」ウルファウス師の努力の賜物である事は明らかでした。
私は、アデラが1歳になる頃、初めてこの村を訪れました。
その頃の私はとても荒んでいたものです。
同教の者に命を狙われ、触れる者全てを傷つける剣草の様な有様でした。
ですがそんな私でも彼等は優しく、自然に受け入れてくれたのです。

私は…この生き残った少女には心根優しく育って欲しく思います。
アデラ。自分らしく、想い出に振り回されずに、倖せになりなさい。
真に他者を愛し得た者程、幸福な者はいないのだから。

1998/05/01 21:07:08 [ヤン]

相棒のリヴァースが、突然いなくなった。
別の仲間と飲んでて、帰ってきたら、いなくなってたんだ。別の酒場にいってんのかな、と思ったけど、肌身はなさずに持ち歩いている竪琴と、いつも髪を縛っている紐、それに抜き身の剣が部屋に転がってた。さらに、ベッドの上に、オオカミと月を象った見たことのない紋章の入った紙がおいてあったんだからもう、ただ事じゃない、

宿を飛び出して気ままに亭にいって、情報収集。すると、いきなりビンゴで、そこに来てた神父さんがその紋章のことを知ってた。なんか最近冒険者に滅ぼされたダークエルフの部族のものなんだって。リヴァースは仕事で、ダークエルフの討伐をしたとかいってたから、もろ関係あるじゃんか。
神父さんに部族の場所を書いた地図をもらって、馬を調達して、さっそく早馬で飛ばす。馬に無理をさせちまったけど、1日で地図の示す鬱蒼とした森にたどり着けた。

馬で入っていくのは無理っぽかったんで、森の入り口に馬をつないで、捜索。しばらくいくと、開けた焼け跡に出た。焼け残った木や小屋が真っ黒になって、まだ煙がくすぶってそうだった。ここが冒険者に滅ぼされた、っていう集落か。しばらくうろうろしてると、どっかからいきなり矢が続けざまに飛んできた。剣と鎧ではじいたから怪我はしなかったけど、今度は、トカゲの形をした炎が襲ってきたんだ。応戦しようとしたが、気がつくと、気配が4つ、5つ・・・。ダークエルフだとして・・・こぉりゃ、やばいよなー。いきなりこれかよ。もーちょっとおちついて、仲間募ってくるべきだった。ま、後悔してもしょーがないや。あっさり剣を捨てて、白旗。すると、こっち降参してんのにあいつら、シェードぶつけてきやがった。あっさり気を失う。ちくしょー。

気がついたら、洞窟の中に作られた檻の中に寝かされていた。頭がんがんする。とーぜん鎧は脱がされ、剣も取り上げられていた。んでも、見張りとか見当たらなかったんで、行動開始だ。
檻は頑丈なもんだったけど、アンロック一発であいた。大陸に来てから全然魔法の修行のほうはしてないけど、よく故郷のじーちゃん、しこんどいてくれたもんだぜ。
結構でかい洞窟だ。他にも檻がいくつかある。それぞれに、人が閉じ込められているらしい。生きてんのかな? 全部開けてくとこっちの精神点がもたねーし、と考えながら一番奥の檻を覗くと・・・いた!リヴァースだ。両手を頭の上にまとめて縛られている。気を失っているのか、うつむいていて顔は見えない。さっそく檻を開けて、拘束を解いた。
するといきなり、リヴァースが襲ってきたんだ!油断してたおれの首をつかんで締め上げてくる。んでも、力でおれにかなおーってのか!とばかりに、手を引き剥がすけど、やべ。目がイッちゃってるよ。
傷つけたくなかったけど、しゃーねえ。元に戻れ、とばかりに頭をぶん殴る。また洗脳されたのかと思ってはらはらしたけど、意外とあっさり正気に戻ってくれた。

物音を聞きつけて、ダークエルフがやってきた。こっちは素手だけど、1対2だ。おれが牽制して、リヴァースが石つぶての魔法。なんとか勝てた。
こいつをふんじばって話を聞くと、聞きもしねーことまでべらべらとしゃべってくれた。
自分たちの集落を、問答無用で冒険者に襲撃されたこと、自分らはその生き残りで、冒険者に復讐を企てていること。そのために、ギルドに忍び込んでダークエルフ討伐に関与した冒険者を調べ、かたっぱしからさらったこと、さらにその冒険者たちを狂気に陥れて自分たちの思うままに動く僕に仕立て上げようとしたこと、などなど。
他の奴等を助けようとしたけど、半分が既に死んでいて、1/4は気が狂ってて、まともに動けるのは、3,4人ってとこだった。ダークエルフの気持ちはわからんでもなかったけど、この仕打ちはやっぱえげつないなあ。
取り上げられていた武器と防具はすぐに見つかった。
で、結局、残りのダークエルフたちと戦闘になった。2回ほど死に掛けたけど、助けた奴等との協力でなんとか勝つことができた。戦乙女の槍ってやつ?あれ、まじに痛かったぜ〜。リヴァースが回復してくれなきゃ、今ごろ死んでたな、うん。

死んだ冒険者と、ダークエルフの死体を埋葬する。助けた盗賊が、ダークエルフの墓まで必要はないとかいってたけど、肉体労働の嫌いなリヴァースがもくもくと奴等の分の土掘ってたな。
ふと、神父さんの連れていたアデラちゃんを思い出した。おれもアデラちゃんの敵になっちまったんかな。でも、おれらもひでー目にあったわけだし。いや、もともとは先に別の冒険者のほうがだましてダークエルフを襲ってったんだっけ。どっちが悪いかなんて、わかんねーや。

独りで来たこととか怒られちまったけど、ま、いーじゃないの。お互い無事だったんだし。
リヴァースはなんかずっと考え込んでるみたいだったけど、とりあえずオランにもどろっか。 きっとみんな心配してるぜ〜。

1998/05/01 17:54:52 [ハースニール] hzd02472@niftyserve.or.jp

獲物:
「あっちだハースニール!」「ああ」ハースニールはラングレーと鹿を追っていた。立派な角を持つ見事な鹿だ。先程は、今一歩の所で森に逃げられたが、捕まるのも時間の問題だ。
「しめた!」あちらには舗装された道がある。過去、計画途中で断念されたものだが、時々人が自然を見に、ここを使うことがある。そんなところに逃げ込むということはよほど切羽詰まっているのだろう。
舗装路が目に入った。鹿も視界の隅に入る。「ん?」ラングレーが何かに気づいたようだが、ハースニールは気づかない。
「とらえた!」その瞬間ハースニールは落下する感覚に見回れた。「しまった」もう遅い。
その時ガクンと何かが自分の体を支えてくれたことに気づく。「危なかったな」ラングレーがぎりぎりの所で手をつかんでくれていた。「おまえさんがあんな簡単なトラップに引っかかるなんてな」「面目ない」少しうつむく、さすがに恥ずかしいものだ。ちなみに鹿はとっくに逃げていた。
「失敗した。まさかこんなところに罠があるとは・・・」「そうだなあ」ラングレーがうなずく。
「あんなところに誰が罠をはったんだ?下手をすれば一般人が引っかかるかもしれないぞ」「コボルトじゃないか?」
ふとその時、しかしに影が映った。人型。しかしコボルとや人にしては大きすぎる。
「どうした?」「いや、あそこに・・・」しかしもうそこには何も無かった。
その後は当然大猟。しかしあの影はいったい・・・

1998/04/28 10:03:49 [グリーン]

*依頼
(P:グリーン、ライム共に昼間にしか現れないキャラなので注意!)
赤毛で、蒼い瞳の少女を、守って欲しい。
少女の名前はライム・ライヴァーン。ライヴァーン家の、養女だ。
本人は養女という事を知らないので、これは内緒にして欲しい。
期間は、本人が家に帰ると言うまで。つまり、無期限だ。
報酬は1週間につき1500G。これで少ないというなら、店の店主と相談するといい。

1998/04/29 18:16:39 [アーディ]

きっかけ(読みづらくてすいません):
アーディ、本名アーディナル・カシュオークはパダの醸造職人の次男坊です。父は冒険者でしたがそのときに足を悪くし、この仕事に就いています。3人の息子を養えるほど裕福な家ではないので、アーディは13の時に
父の知り合いの職人の徒弟に、弟はチャ・ザの神殿にやられました。

徒弟の間、アーディと弟はある冒険者のパーティに出会います。
大まじめに「いつかはリジャールみたいな王になる」と語る彼らでした。
アーディたちは彼らから様々なサーガや冒険の話、剣や酒なども教わります。
アーディらにとっては初めて自分を対等に扱ってくれた大人でした。堅実な、しかし退屈な日々を送るアーディらにとって、遺跡から帰ってくる冒険者たちの武勇伝を聞くのは一番の楽しみになりました。
しかし、アーディの徒弟の期間も終わる頃、レックスに向かった冒険者たちは全滅しました。彼に剣を教えてくれた戦士、サーガを聞かせてくれた吟遊詩人、最期になった遺跡にある財宝について興奮気味に話してくれた魔法使いは死に、アーディも弟も密かにあこがれていたエルフの精霊使いは罠に巻き込まれ、行方不明になりました。子供っぽい夢を大まじめに語っていた盗賊は、そのことを彼らに伝えると、見るも無惨な姿で故郷に戻っていきました。
いつしか、冒険者たちの夢はアーディの夢になっていました。父の大反対、大喧嘩の末、まだ修行中だった弟と一緒にパダを飛び出してからそろそろ一月がたとうとしています。
今のところ、弟(チャ・ザ神殿で再修行中)とはバラバラに生活しています。
いつか冒険者たちが最期に挑んだ遺跡の謎を解き、彼らの夢を引き継ぐことがアーディの目標です。

1998/04/26 21:09:53 [リヴァース] irisio@cc.mbn.or.jp

雨の日に...:
「リヴァースじゃないか」公園でライアーを奏でていたら、声をかけられた。昔、西方を旅していたとき、仲間として仕事をしたことのある、盗賊・リードであった。遠方で予想もせぬ知人に偶然顔を合わすのは嬉しいことである。昼食を食べながら近況報告とあいなった。

今、彼が受けている依頼は、オランの近郊の小国の、気の触れた王子に関してのものであった。王子は、王位継承権をめぐる陰謀のために、何者かの手により正気を奪われたとのことであり、何とかして元に戻してもらいたい、というのがその内容であった。
神官や魔術師の手を借りて方法を探したが、原因すら分からず途方にくれているらしい。そこで、精神の精霊の状態を調べたかどうか尋ねると、まだだと言う。もしやと思い、わたしがその王子の様子を見た。案の定、彼の精神の精霊のバランスが著しく崩されていた。それは、他の精霊使いによる人為的な作用によるものであった。つまり、ある精霊使いが王子の精神にレプラコーンを住まわせ、儀式により時間を持続させ狂気に貶めているというものであった。悪夢の精霊の儀式の応用だと考えればよい。(悪夢の精霊のほうがよほど取り扱いにくいものではあるが)一定期間その儀式が続くと、レプラコーンは王子の頭の中に完全に居着き、王子は永遠に正気には戻らなくなる。彼を正気に戻すには、その精霊使いの居場所を突き止め、儀式を止めさせればよいのだ。
経験を積んだ精霊使いのいないリードのパーティの仲間は、わたしに協力を求めてきた。乗りかかった船であったし、報酬の分け前も結構な額であったので、別の依頼の兼任中ではあったが、二つ返事で引き受けた。
王子の周辺を洗い、王位継承権を争う王弟の参謀を暴いた。すると、彼があるダークエルフに王子を狂人にするよう依頼したということを吐いた。王子が完全に気がふれてしまうまで時間は無かった。ダークエルフは、オラン郊外の街道から外れた奥深い森の中にいることを、参謀の口から聞き出し、さっそくそこへ向かうことにした。

その森のダークエルフの住処は難儀しながらもなんとか見つけることができた。その日はあいにく、小雨がぱらついていた。相手は相当力のある精霊使いである。事を慎重に運ぼうと、盗賊のリードと、小さき精霊の力を借りて姿を消したわたしがまず偵察に出ることになった。
相手はすぐに我々に気がつき、攻撃してきた。リードはうまく逃げたが、わたしはダークエルフの戦乙女の槍の直撃を受けてしまい、そのまま昏倒した。
気がつくと、見慣れぬ小屋の寝台の上に寝かされていた。そばにはダークエルフの少女が立っていた。警戒をあらわにするわたしに、彼女はやさしく微笑み、傷の手当てをしてくれた。
彼女は目が見えないらしかった。目を開けてはいるが、灰色の瞳は何も映さない。事故や魔法によるものではなく、どうやら先天的なものらしかった。彼女は無邪気に、わたしについての質問をしてきた。あなたは誰?どこから来たの? わたしはずっとここにいるの。お兄様といっしょに。お兄様以外の人と話をしたのははじめて・・・。彼女は自分の兄と、この小屋の中と、周囲の森以外のことを何も知らなかった。
彼女の汚れを知らぬ微笑みは、最近知り合ったファリスの司祭・シルビアを彷彿とさせた。純白の正義の使徒と、邪悪なはずの肌の黒いエルフ。この二人を重ねるなど、当のシルビアが聞いたらさぞ気を悪くするだろう。しかし、理屈無しに、この時のわたしには二人が重なって感じられた。
彼女は外の世界の話を聞かせてくれと願った。わたしは痛む体をおし、いくつかの叙述詩を唄った。彼女は本当に楽しそうだった。わたしの声が好きだと言った。
しばらくすると、さっきのダークエルフが部屋に入ってきて、彼女と口論になった。ダークエルフがわたしを殺そうとするのを、彼女が止めている。
話の内容から、彼女は彼の妹であること、ダークエルフは彼女の目を治療できる高司祭に頼むために、これまでにさまざまな仕事をこなして金をためていたこと、今度の王子の事件の報酬でちょうど、必要な額が貯まるということ、などが聞き取れた。
どうしようかと考えあぐねていると、リードたちが小屋を急襲してきた。わたしが捕らえられたと思っていたらしい。ダークエルフは彼らを迎え撃つ。わたしは無我夢中で飛び出した。仲間たちを静止しようとした。待て、このダークエルフは邪悪なんかじゃない!話せばわかる!と。
しかし、ダークエルフ=討伐すべき邪悪、という等式は、彼ら冒険者の頭の中に揺るぎない事実として彫り込まれており、彼らはわたしの言葉に耳を貸さなかった。それどころか、彼らはわたしがダークエルフに魅了されたものとして、魔法でわたしの自由を奪った。わたしは何もできなかった。兄のダークエルフと、物音を聞きつけて出てきた少女が、ただダークエルフというだけで、仲間の手により殺されるのを、みているしかなかった。
わたしが呪縛から解き放たれたとき、すでに二人の命の精霊はわたしの呼びかけに答えようとしなかった。わたしはただ、なす術も無く、冷たい春の雨に濡れながら、立っていることしかできなかった。

確かに、あのダークエルフの兄は金のために多くの人を騙し、殺めた。殺されても仕方が無いことをしたと皆は言うだろう。しかしわたしは、彼に生きていてほしかった。今際きわの、彼の恨みに満ちた表情と、少女の「なぜ?」と問いかけるような目が忘れられなかった。
冒険は成功であった。気の触れた王子を元に戻し、邪悪なダークエルフを討ち取ったのだから。しかし、報酬など、受け取る気には到底なれなかった。

日が暮れて宿に戻ったが、相棒のヤンの姿はなかった。助っ人を頼まれて参加した別のパーティの仲間と意気投合し、娼館にくりだしたらしい。
やりきれなくて、とても眠る気にはなれない。自然、足はきままに亭に向いた。ただならぬ様子のわたしに、マスターは何も聞かず、ワインを注いでくれた。その日はそのまま知らぬうちに酔いつぶれたらしい。気がつくと、二階のベッドの中であった。
次の日、常連客の一人、エルフのプリムが心配して訳を聞いてくれた。問いかけるときに、わたしのように実力のある人が、とかいっていたが、救いたい者一人助けられなくて、なにが力なのであろう。偏見という、人々の心に強く根差す概念の前に、わたしは無力であったのだ。それでも、話しを聞いてもらって少しは気が楽になった...。
何か気を逸らそうと、酒場で眠りこけてしまったルビナのための子守り歌を奏でた。それが知らずうちに自分の中で鎮魂歌となった。わたしは不幸なダークエルフの兄弟の魂の浄化を祈っていた。
願わくば、すべての偏見を受けるものたちが、いつか迫害から解放され、喜びと幸せのうちに暮らせますように。それがかなわぬ願いであることは、だれよりもわたしが知っていた。しかし、そう唱えずにはられなかった。

1998/03/18 03:38:38 [マスター]

はじめての敵:
 十六歳の夏のことであった。まだ幼さの残る青年はこつこつと貯めた貯金で冒険の道具を揃えていた。身に持つもの全てが真新しい。青年の名はマックス−−マックス・マクシミリアン。まだ見ぬ冒険に胸躍らす若者であった。
 マックスはリュックを背負い直すと、まだ空が白みはじめる前に家を出た。親には既に言ってある。彼の父は、息子が冒険者になることを最初は反対したが、やりたいことはやらせてやりたいという母の説得で許してもらえた。第一に、彼の兄が既に冒険者として旅立っているのである。弟だけ許さない訳にはいかない。
「見送られるのは性にあわないからな」
 マックスは、家のテーブルに書き置きをしてきた。親に見送られて出かけるのは恥ずかしいと思っていたのだ。
 街の端まで来ると、門兵が眠そうに立っている。本来ならば二人で見張りをしているはずだったが、一人は寝ている。どうやら交代で寝ているようだ。職務怠慢ではあるが、冒険を前にしてはそんなことはどうでもよかった。
 出国の手続きは簡単である。名前と行き先、戻ってくる日にちなどを明記すればそれでいい。旅人の場合は戻る日にちは書かなくてもいいが、彼にとってはその行為は初めてであった。自分が少し大きくなったように思えて含み笑いを浮かべる。
「気をつけてな、ボウズ」
 門をくぐるとき、二四、五であろうか、門兵の男はそう声をかけてくれた。マックスの身なりからして旅立ちのときであることを察したのだろう。
「はいっ」
 声をかけられたのが嬉しかった、返事はすぐに返された。
 一歩一歩、住み慣れた街から遠ざかる。しかし、見知らぬ土地に入るのはまだまだ先のことであった。
               ◇◇◇
 マックスの旅立ちは一人であった。彼の友人たちの中には共に冒険者になろうと思う者はいなかったのである。野宿をしたり、自炊したり、ときには命をかけてモンスターと戦ったりしなければならない。そんな危険なものに誰もなろうとは思わない。
 子供のうちは誰もが英雄にあこがれる。しかし、成長するにつれ冒険稼業がいかに苛酷なものかを知るようになるとそのほとんどの者達が夢を諦める。もしこれがリジャールの武勲が広められた後ならばマックスは一人で旅立つことはなかったかもしれない。だが、リジャールがオーファンを建国したのは彼が旅立ってから九年後のことである。
 この年、旧国ファン、ファンドリアの緊張が高まりつつあった。国境付近では小競り合いが多発しているとも言われていた。
 マックスは、遺跡などを探険する冒険者に憧れていたわけで、戦争には興味がなかった。それに、人同士の殺し合いはしたいとは思わなかった。
 彼が目指したのは常夏の国、ガルガライスであった。
 まだ、その道のりは遠い。
               ◇◇◇
 タイデルの街を出てから三日目のことであった。親戚の家に寄ったため、マックスは街道を大きく外れ田舎道を歩いていた。丘陵地帯ではあるが、木々が生い茂り山といっても差し障りがないような場所である。目に入る見知らぬ土地は新鮮で、活力が湧いてくる。それと同時に暑い日差しが体力を奪っていた。少々歩くことにも飽きた頃である。
 細い街道の脇の草むらが、ざわざわと動いた。
 マックスは何事かと思い、足を止めた。
 すると、草むらを割って飛び出してきたのは三匹のコボルドであった。
 コボルドの存在は子供でも知っている。捕らえられて見せ物とされているのを見たこともある。だが、こうして出会うのははじめてであった。しかも手には錆びついた剣を持っている。斬れなくても痛そうだとマックスは思った。
『荷物を置いていけ』
 コボルドが何か叫んだ。三匹居るのにマックスを囲もうともしない。叫んだコボルドの後ろに二匹とも控えている。
 マックスは何を言っているのか理解できなかった。が、知識として状況を理解する。
 リュックの留め具を両の手で同時に押す。すると留め具が外れ、それは重力に引かれてするりと落ちた。身軽になったマックスは素早く剣を抜き、盾の掴みを握る。ラウンドシールドは腕に固定しているため、指の自由はきくのだ。
 心臓が破裂するんじゃないかと思うほどに鳴り出す。強い奴とケンカをしたときでさえ感じたことがない鼓動。
 人間でない相手、手加減をしない相手と向き合っていたからだと彼が気がついたのはその日の晩のことであった。
 コボルドに対しての知識がマックスに教える。弱味を見せてはダメだと、奴らは臆病なのだと知らせる。
 コボルドはグルルと唸り、牙を見せる。
「犬そのままだな……、いや犬以下か」
 臆病でない犬を思い浮かべ、そんなことを思う。
 コボルドの体臭が生温かい風に混じって臭ってきた。
「く、臭い。とんでもねぇなこいつら」
 見せ物にされていたコボルドを見たときの臭いを思い出した。あのときも臭かったと。
『こいつやる気ですぜ』
『こっちは三だ、勝てる』
 何か喋っているようだが、犬のうなり声にしか聞こえない。すぐに、飛びかかってこられなかっただけ、冷静さを取り戻すことができた。幾分鼓動も静まったように思える。
「コボルドなんかにやられるなよ」
 友たちの声を思い出す。脅せば逃げていくような連中は格好の笑いの対象であった。マックスが冒険者になると言い出すと、皆が決まって言う台詞がこれであった。
「コボルドなんかにやられるかよ」
 口に出して言う。言い終えたと同時にコボルドたちは切りかかってきた。
 強気の言葉を口にしてはみたが、自ら切り出すことはできなかった。
 しかし、コボルドたちも突っ込んできた割には、手前で無秩序に剣を振り回すだけであった。
 盾を突き出して、間合いを取る。コボルドは盾に向かって切りつけるだけだった。後ろを取られないように気を配りながら、剣でも牽制する。小柄なコボルドではマックスとは間合いが違い、傷を負わされることは考えにくかった。
 何度かの撃ち合いの後、不用意に近づいた右端のコボルドを袈裟懸けに斬りつけた。
「キャワワン」
 犬の悲鳴に似た断末魔を叫びを上げ、倒れる。 これで残りは逃げ出すとマックスは思った。
 だが、そうはならなかった。仲間がやられたことによってあろうことか闘争心を燃やしたようなのだ。
 ガルルと喉を低く唸らせ、剣を振り回してくる。もう一匹の方は逃げ腰であるが、一匹だけでは逃げ出せないようであった。
 マックスは内心焦っていた。先ほどの冷静さは、予想を崩された時点で飛んでいた。
 マックス自身も盾を使いながら闇雲に剣を振るっていた。
「なぜ当たらない」
 そんな疑問ばかり頭をよぎる。冷静になっていないことすら気がつかない状態であった。
 次第に息が上がっていく。剣を振るう腕が重い。それはコボルドも同じであった。どうやらコボルドも正気を失っているようである。
 互いに剣を振り合うことができなくなって、間合いを取る。息を整え、力を蓄える。
 その時になってマックスは自分が焦っていたことに気がついた。兄の言葉を思い出す。
「息が上がったときは、ゆっくり呼吸するんだ。苦しくてもゆっくり息を吸うのが回復に繋がるんだぞ」
 大好きな兄の言葉。息が上がる度に思い出す。
 マックスの回復はコボルドよりも数段早かった。
 後ろに下がってしまっていたコボルドが兄貴分的なコボルドに何か言おうとしていた。
「たぁっ」
 一気に走り込んで垂直に剣を振り下ろす。何千と振り込んだ剣が思い通りの軌跡を描く。
「キャフンッ」
 断末魔だけでなく、骨の断つ音まで聞こえた。
 何か言おうとしていたコボルドはただ呆然と立っていた。逃げるだけの思考も回らないようであった。マックスはそのままの勢いでそのコボルドも切り払った。
 鮮血が街道を赤く染める。
 マックスはしばらく剣と盾を構えたまま立っていた。
 戦いは終わり、再び上がりかけた呼吸を整える。緊張しきった手足の筋肉をほぐしながら、自分の鎧やズボン、盾を見た。
「汚ねぇ〜」
 はじめての戦闘が終わった第一声がこれである。生き残る充実感や、勝利したことはもちろん嬉しかったのだが、新品の鎧や盾、服までも返り血で汚れてしまった方が当面の彼としては悲しかったのである。

1998/03/11 12:29:12 [シルビア]

・・・・・・・・・・。

どうやら、全文届かなかったように
見受けられますが、一体何事でしょう??

送信時にトラブルが起こったとしか
考え様もありませんが・・。

いずれ、日を改めて再送信する事にいたします。

1998/03/11 12:22:40 [シルビア]

 木々の新芽も芽吹き始める、今日この頃。
マックス・マクシミリアン様、お元気でいらっしゃいますか?

 もう長い事、ご無沙汰しておりますが、
皆様に御変りはございませんでしょうか。

 近日、オランに帰国する所存でおりますので、
その折には何卒よしなに・・。

 この春一番に採れた野苺のジャムを1オンス
所望いたします。4の月の5日には、受け取りに
伺う事が出