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No. 00002
DATE: 1998/05/30 15:43:45
NAME: ルフィス
SUBJECT: 若き日の肖像
エレミアに雨が降っていた。
しだいに多くなっていく雨粒が少年の髪を・・・顔を・・・服を重く濡らしていく・・・・
凍えるような冷たい雨を少年は冷たいと感じることはなかった。
なにも感じることができなかった・・・・・・
少年は血に塗れて立ち尽くしていた・・・・・・・・。
「なんでだよ・・・・」
少年の前に転がっている物体・・・・・かつては少年にとって唯一信用していた友,、「ケイン」の遺体を見ながら
呟いた。
「なんで・・・・なんでケインがオレを殺そうなんてしたんだ・・・・」
しかし「ケイン」は何も答えない。
「答えろよ・・・・・ケイーーーーーン!」
少年の叫び声はスラム街に降り注ぐ雨の音にかき消された。
少年の名をルフィス・フォビュートといった。
まだ幼かった頃・・・・・・今よりもさらに幼かったころ彼はとある戦争で親を失い、たった一人でエレミアの町に
たどり着いた。身寄りもなく・・・・・・・十にも満たないような彼はエレミアの町を何日もさまよいスラムの奥地で倒れ、死を迎えようとしていた。
「あぁ、ここで僕は死ぬんだ・・・。」
妙に冷静にルフィスは考えていた。
「なんで僕は生まれたんだろ?。」
家族にすら邪魔物扱いされていたルフィスはぼんやりと思った。
「なんだ・・・。僕は誰にも必要とされてなかったんだ・・・・。だから生きようが死のうがどうでもよかったんだ。」
そう考えると急に安心感がやってきて目を閉じた。
「何してんだ?」
突然かけられた声に目を開き、声のする方を見ると銀髪の少年がこちらを見ていた。
身なりからしてこのスラムに住んでいるのであろう事は解った。年はルフィスより1つ2つ上だろうか。
「生きていてもしょうがないから死のうかなって思って。」
「ふ〜ん・・・・別にいいけど、もし生きたいって思うんならついてきな。」
銀髪の少年はそう言うとさっさと歩いていった。ルフィスは起き上がるとよろめきながら彼の後を追った。
特に理由はなかった・・・・ただなんとなくついていってみようと思ったからだった。
銀髪の少年が突然立ち止まりルフィスの方を見てこう言った。
「オレはケインってんだ。よろしくな」
そう言うとまたさっさと歩きだした。
4年後・・・・・・
「いいかげんに倒れやがれ」
ルフィスは相手の腹に拳を叩き付けた。よろめいたところで側頭部を蹴りつけ相手を叩きのめすと後ろを振り
返り、怯えている少女に微笑んだ。
「大丈夫か?」
ルフィスの短い問いに少女はコクンと頷き、礼をいって帰っていった。それを見送った後、倒れている貴族の
息子を見て一言いはなった。
「ひとさらいみたいなことしやがって・・・オレ達をなめんなよ」
この頃にはルフィスは相棒のケインと一緒にある不良集団を率いていた。不良集団といっても弱い者いじめ
などせず、力を持った者としかケンカをしない集団であり、ルフィスはそのことを誇りに思っていた。
アジトに帰ってきたルフィスがケインに報告をして、いつものように剣の稽古をしていると仲間の1人が
慌ててやって来て1枚の紙をケインに渡した。
「何がかいてあるんだ?」
ルフィスが尋ねるとケインはその紙をルフィスに無言で渡した。
紙にはルフィスを引き渡さなければお前達スラムに住む者を全員狩り出し、皆殺しにするという内容が書いて
あった。差出人の名は「ベストゥリー・デュ・ラングレー」とあった。さっきルフィスが叩きのめした貴族だった。
「少し話をつけてくる。」
そういうとケインはアジトを出ていった。
・・・・・・・ケインはその日、帰ってこなかった・・・・・・・・・・・
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