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No. 00007
DATE: 1998/06/06 23:01:04
NAME: シェリル
SUBJECT: 風の行方(後編)
とは言い切ったものの、このままだとまともな生活を送れるわけがない。
「セフィー、この町から出ない?」
「・・・そうだな。仕事も無いことだし」
セフィーの同意も得る事が出来たので、引越しの用意をはじめた。
「・・・あれ? シェリル、ここに置いてあった弓知らないか?」
「さぁ、知らないけど無いの?」
「たしかここに置いてあったと思ったんだが・・・」
「弓なんてたくさんあるんだから良いじゃない」
「あのなぁ、あれは俺のお気に入りだ。その上もうあれほど良いものは手に入らないんだからな」
「(この弓マニア)・・・はいはい、そうだね。とりあえず片づけてたら出てくるって。ほら、サボってないで働く働く」
「・・・あぁ・・・」
だが結局その弓は出てこなかった。
・・・それから数日後の深夜・・・
ドンドンドンドンッ!
家の扉が激しい音を立てた。
「・・・? 何よぅ。・・・うにゃにゃい」
「わかったわかった。俺が見てくるから」
まだ扉は激しい音を立て続けている。セフィーが部屋から出ようとしたその時。部屋の扉が乱暴に開いた。
「セフィー・ディバイス。お前を殺人の罪で逮捕する」
『は?』
「いったいどういう事ですか?」
あたしは、ガルバーニに事情を聞くためにギルドに押しかけた。
「私には何のことかわからないな・・・・・・そういえば部下に聞いたのだがセフィーは今捕まっているらしいな」
「だから貴方が濡れ衣着せたんでしょう」
「私が濡れ衣を着せたかどうかはともかく私の力を持ってすれば彼を解放することは出来なくもない」
ガルバーニがいうにはあたしが愛人になる。もしくは保釈金を用意すれば、セフィーを釈放やるということだった。
「2万ガメルですか・・・それを持ってくればセフィーを返していただけるんですね」
「持ってこれればな」
「持ってきますよ。絶対にね。それではその時までお元気で」
「あぁ、シェリル。今思い出したんだがセフィーの捕まっている刑務所・・・よく過労死するものがいるそうだ。出来るだけ早く戻ってきてやったほうが良いだろうな」
「もちろん貯まり次第戻ってきますよ。それでは失礼します」
「君とセフィーの無事を祈ってるよ・・・くっくっく・・・」
ガルバーニの笑いを背中に受け、あたしはギルドを後にした。
あたしはセフィーの捕まっている所の監視人に袖の下を払い、何とかセフィーにあわせてもらった。
「セフィー。あたしお金を貯めるために冒険に出るね。10年も待ってられないから」
「危険だぞ・・・って言っても行くんだろ? なら、俺の弓の中で使えるものがあったら持っていけ」
「うん。わかった。・・・セフィー、あたしが帰ってくるまで無事でいてね」
「シェリルもな。危険な事と裏の仕事はするなよ・・・それから浮・・・まぁ、言わなくてもわかってるか」
「わかってるって」
『そろそろ時間だぞ』
「はぁい。それじゃ行ってくるね」
極上の笑みをうかべて手を振ったらセフィーが苦笑して手を振り返してきた。
「頑張ってこいよ」
その日は奇麗に晴れ渡っていた。心地よい風が頬を撫でる。
「さてと、くよくよしてても仕方が無い。頑張りますか」
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