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No. 00019
DATE: 1998/06/25 23:16:05
NAME: カール
SUBJECT: 岐路(中編)
私は騎士の正装をし、親書を携えて城へと向かった。
珍しく愛馬のシューティングスター(当年7歳)に乗り、ぼんやり考え事をしていた。
・・・おっさん。オレがおっさん?
昨日のエッシェの一言はかなり応えた。
『なやむふけるのだ。ふけるとおっさんなのだ。』
彼女の一言は図星だったので言い返しようがないし、小さな子相手に論破し返すのも大人
気ない。
パーティを組んだこともそうだし、ルフィスのことやセッキセイの一見もある。
最近は悩みが多すぎた。
ルフィスはオレよりもリヴァースもことを慕う始めたし、セッキセイは母親を見つけさせ
たら、親子二人でベルダインの実家へ奉公させようかと思っている。
彼女には平凡でもいいから幸せを手に入れて欲しい。
最近はそう思っている。
だが、それに矛盾してセッキセイには剣術や薬に関することを教えて、ルフィスには相変わらず兄貴風を吹かしている。
何をやってるんだが・・・。
そんなことを考えていたらあっという間に城門の所まで着いてしまった。
衛兵に向かい宮廷作法の通りの挨拶をし、用件伝え国王への謁見を求めた。
もしかしたら2,3日かかるかもしれんな。
と考えていたのが、あっさりと通された。
城では西方の小さな都市国家から”いつか”やってくる”はず”の騎士として、かなり有
名だったらしい。
中には私が”来る”か”来ない”かを賭のネタにしている奴らもいたらしい。
私を迎えてくれた衛兵達は”来る”の方にかけていたらしく、盛大な歓迎をされた。
嬉しいような哀しいような複雑な心境だった。
昼ぐらいまで待たされ、ようやく国王との謁見した。
「ベルダインの騎士、カール・クレンツにございます。」
私は玉座の前に進み出て、片膝をつき名乗りを上げた。
「遠方より、はるばるご苦労ベルダインの使者よ」
オラン国王カイアルタードZ世は賢人王の名に相応しい人物だと思った。
さすがは大賢者マナ・ライの高弟の1人だ。灰色の瞳の奥には知性の閃きを感じた。
「用向きは親書とのこだが・・・」
「は!こちらに・・・」
私は懐から親書を出して、玉座に向かって差し出した。
侍従の1人が受け取り、それを賢人王に渡した。
賢人王は封書を切り、書面に目を走らせた。
どうせ外向的なことだろうと決めつけ特に何も思わなかった。
「ベルダイン国王リカルド・ハディス王よりの親書、確かには意見した。」
そう言うと親書を侍従の1人に手渡した。
「して、クレンツ卿。そなたは親書の内容について存じておるか?」
「い、いえ、存じてはおりません。」
私は正直に応えた。それに興味もなかったので想像すらしてなかった。
「それがなにか?」
「この親書の中にそなたへの伝言がある。」
私は驚いた。使者である、自分自身に触れられてるなど思いもしなかった。
「それでどのようなことが・・・」
帰還命令か?私は少し嫌気がさしていた。
「そなたの騎士の資格をリカルド王の代わりに余に解いて欲しいとのことだ。」
私は愕然とした。そのあと賢人王が話していたことをあまり覚えていない。
周りの騒然としていたのだろうが、それも耳には入らなかった。
衝撃的だった・・・こんな風に騎士の位を剥奪されるとは思わなかった。
うっとしいとは思ってはいたが、ショックだった。
謁見が終わろうとする間際、賢人王が言った言葉はさっきの衝撃をはるかに越える物であ
った。
「クレンツ卿よ。」
「は!何でしょうか。」
もうオレは”卿”ではないのに、ふとそんなことも考えたが今はどうでも良かった。
だが、その口から出た言葉は私を現実どころか興奮状態にまで持っていった。
「そなた、余に使えてみんか?」
そのあとに開かれた晩餐会のことを私はまったく覚えていない。
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