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No. 00021
DATE: 1998/06/28 00:05:22
NAME: カール
SUBJECT: 岐路(後編)
「お前それでいいのか?」
幼なじみにして、冒険仲間であった。ハーフエルフのクライスがそう言った。
「ん、ああこれでいいんだ。」
髪を切ったばかりの頭でオレは応えた。
ちなみにここはクライスの泊まっている宿の部屋である。
一昨日にオレは騎士をやめた。
きままに亭でオレは不名誉印を刻み、決心の表れとして伸ばしていた髪を切った。
周りにいたやつの中には驚いたやつもいた。
普通はこんな所ではしないだろう。
次の日にオレはすぐに賢人王に面会を求め、オレの決意を告げた。
賢人王は何も言わなかった。
ただ、「そうか・・・残念だな。」の一言だった。
オレの決意をわかってくれたどうかはわからない。でも、間違ってはいない。今のオレは
そう思っている。
「もったいないぞ、お前。」
クライスがまだ攻める。そりゃそうだ、こんなチャンス滅多にない。
「そう言って僕も止めたんだけどね。」
シシリーが未だにぼやく。しつこい奴だ。かれこれ1刻(約2時間)近く言っている。
「まあ、オレのことはいいじゃねーか。久しぶりこうやって集まって騒いでんだから。」
「まあ、そうだけどさ。」
また、シシリーが言う。
オレ達兄弟とクライスは生まれは全然違うが昔からの親友だ、よく屋敷を二人で抜け出し
てはクライスと一緒に旧市街で遊んだものだ。
子供時代の唯一の楽しい思い出だ。
でも、この楽しい時間を過ごしたのは3人だけではない。
「あのさぁシシリー」
オレはワインを飲みながら、軽い調子で言った。
「ん、なに?」
同じく軽い口調で聞き返すシシリー。
「フィアどうしてるか知ってるか?たまに親父から手紙が届くんだろ?あいつのこと書かれてなかったか?」
ふぃあ、本名アーフィア・ベーデルグ、私の幼なじみの女性で一緒に遊んだ親友でもあり、ベルダイン貴族の令嬢だ。今頃は何をしているのだろうか。
「そういやお前、惚れてたもんな。」
クライスが茶化す。そう、彼女はオレの初恋だった。彼女のはにかんだ笑顔が胸に浮かぶ。
でも、シシリーは懐かしいという顔ではなく、やばいという顔をしていた。
「おい、まさかなんかあったのか!」
思わず身を乗り出し、シシリーの肩を強く掴んでしまった。
「それが・・・」
シシリーが話を切り出そうとしたそのとき。
「ちょっと待て。誰か来る。」
クライスが警告を発する。こう見えても奴は一流のレンジャーだ。おそらくあまり、いい
お客ではないらしい。
オレは剣を抜き、盾を構えた。二人も一応臨戦態勢にはいる。
「誰だ!」
オレは扉の向こういるべき人物にそう尋ねた。
「アーフィアです。開けてもらえませんか。」
「フィア!?」
オレとクライスは驚いた。ちょうど噂していたこともあるし、こんな所にいるはずのない
人物が訪ねてきたのだから。
「す、すぐに開けるから。」
そう言うと、クライスは急いで扉を開けた。
そこには1人の女性が立っていた。アーフィアだ。
ゆったりとしたファリスの神官委を纏い。そこに立っていた。
でも、そこにはあの当時のはにかんだ笑顔はなかった。
「どーしてここに?」
俺は思わずそう訪ねた。懐かしさが一瞬こみ上げてはきたが、彼女のその表情がそれを許
さなかった。
「どーしてですって?」
彼女がオレを睨んでこういった。握りしめられた手が小刻みに震えている。
「?」
無様な話だが、このときオレは状況を理解できなかった。
オレの横でシシリーが”あーあ”というような顔をして立っていた。
「おい、シシリーこれはどういうことか・・・」
オレの言葉は続かなかった。
突然フィアが襲ってきたのだ。
腰に吊していたメイス握りしめ、渾身の力を込めてふるってきた。
戦士としての訓練のたまものか、私はとっさに盾でそれを受け止めた。とてもいい一撃だ
った。
「わ、な、なんだよいきなり!」
「問答無用!」
クライスの部屋はいきなり修羅場とかした。オレは現状を理解できず、フィアの攻撃から
逃げまくった。そしてついに逃げ場を無くし、仕方なく二階から飛び降り逃走した。
「汚ーぞ!!」
「卑怯者!」
シシリーとクライスの罵る声が聞こえたが。そのあとに着地音が聞こえた。同じ手を使っ
たみたいだ。
3人の男は無様にも1人の女性から各々逃走したのだ。
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