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No. 00024
DATE: 1998/06/30 18:21:51
NAME: セシーリカ
SUBJECT: 8000ガメルの秘密
事のおこりは3日前。
オランとエレミアの境目にある小さな町の宿屋(プライバシー保護のため店名は削除)で、あたしとミレディーヌ、そして友人のレイチェルの3人は、店の親父さんに料理教室を開いてもらっていた。
なぜなら、あたしとレイチェルは料理らしい料理は一つもできない。食事係はいつもミレディーヌで、あたしは野宿の途中に、その辺の食べられる草をてきとーに煮炊きして食べてる程度だったし、レイチェルにいたっては包丁にさわったことも生魚を見たこともなかった(魚は切り身で泳いでいるものと思っていたらしい)。
だけど、あたしとレイチェルはどうやら生まれつきの料理音痴らしく、教える親父さんも対処に困っている、っていう感じだった。特にレイチェルはひどいのなんのって。大さじ一杯の塩、といわれて、大さじがどんなものか分からずに、小鍋にたっぷりの塩を盛ったほどだから。
そんなもんだから、親父さんとミレディーヌはレイチェルにつきっきり。あたしはひとりで、自分の作ったポトフ(らしい物体)の味つけに忙しかった。
そして・・・事件は起こった。
「〇〇さん(プライバシー保護のため親父さんの名は削除)! 隣の店が火事です!」
いきなり飛び込んできた冒険者。親父さんは素早かった。
「なに!? すぐに行く!」
あたし達も、もちろんあわてて飛び出した。隣の店が、今にも隣焼しようってほど燃えていた。
「セシーリカ、ブリザードでも使ったらどうですの?」
レイチェルの言葉にあたしは怒鳴り返した。
「あたしにはまだそんな魔法は使えんわいっ!」
「・・・そんなことより、鍋の火は消してきたのか?」
親父さんの言葉に、あたし達は真っ青になった。あわてて3人で宿に逆戻り。・・・・不安は的中した。
「な、鍋が火ぃ吹いてるーっ!」
ミレディーヌが叫んだ。幸い天井にまで燃え移っていない。あたしはその辺のシーツ(なぜ台所にシーツがあるのかは気にしないように)を引っぱり出してきて、水瓶の中に押し込んだ。そうしてぐしょぐしょになったシーツを鍋にかぶせようとしたのだ。
そこで・・・諸悪の根源、レイチェルが叫んだ。
「あたくしにおまかせなさい!」
見ると、液体が満ち充ちているタルを両手で抱えたレイチェルが立っていた。
「火には水、これはすべての基本ですわ!」
どうやら、タルの中身をぶちまけようという気らしい。だが、あたしはそのタルの中身に気がついて絶叫した。
「うわーっ! バカバカ、やめろーっ!」
時、すでに遅し。レイチェルはタルの中身を、火を噴いている鍋めがけて盛大にぶちまけた。
「それは油じゃ――――――っ!!」
絶叫は、燃え上がった火の轟音で、見事にかき消された。
・・・気がついたら、あたしはマーファ神殿のベッドの中にいた。
某宿は全焼。隣の店からの延焼は免れたのに、鍋の火(&レイチェルの油ぶちまけアタック)のおかげで、宿(+あたし)は黒こげになった。
レイチェルとあたしとミレディーヌの三人は、もちろん弁償させられることになった。
被害総額、2万4千ガメル。・・・もちろん、割り勘、ということになった。
・・・でも、原因はよく考えたらレイチェルじゃないか。あたしは被害者だぞ。何であたしまで平等に割り勘しないといけないんだ?
・・・しかも持ち合わせがなかったので、仕方なく、あたしはミレディーヌに立て替えてもらうことにしたのである。(ヤツは貴族の娘だ。レイチェルもだけど)
・・・オランについたら、換金できるものはみんな換金しないとなぁ・・・。
せっかく仕事してシコシコ貯めた大切なお金だったのに・・・。しくしく・・・・。
教訓:料理中、火のそばを離れてはいけません。
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