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No. 00035
DATE: 1998/07/07 19:34:39
NAME: セシーリカ
SUBJECT: う・わ・さIN盗賊ギルド
これは、セシーリカが失踪する前夜の出来事である。
くれぐれも表記しておくが、この事件と失踪はなんの関係もないので、あしからず。
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「来たな、放火魔」
あたしはまた放火魔、と呼ばれて、少し辟易しながらも、ギルドの同僚に挨拶を送った。
あの「放火魔」の噂が流れてから、あたしはマーファ神殿での懺悔室のお祈りにどれだけ時間を費やしたことか・・・。ま、いいけどね。
でも、この噂が広まる前までは、もっとかっこいいコードネームもらってたのに・・・。
まあ、いいか。あたしは大きく息を吸い込んで覚悟を決めると、意を決してひとりに話し掛けた。
「ねえ、知ってる?ここの幹部のウィルさんのこと」
「ウィルさん? ああ、あの顔の怖い」
「今日ちょっとうわさで聞いたんだけど、女装癖があるってほんとなの?」
「女装癖? 嘘だろ?」
「でも、ウィルさんを良く知っているふうな人から聞いたんだけど、化粧をしたり、たまにリボンをつけたりしていたんだって・・・」
あたし自身、噂がどんな風に、どんな感じで広まるのか見てみたかったけれど、それ以上に、それが本当なのかどうか確かめてみたかったのかも知れない。
だって、あの怖そうな顔に化粧したり、リボンつけたり・・・。考えただけで、ちょっと、ね。
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数時間も立たずに、ギルド内は噂でいっぱいになった。
曰く、
「ウィルさんはどうやら女装癖があるらしい」
「化粧をしたり、リボンをつけたりしていたらしい」
「本人結構楽しんでたとか」
「それだけではあきたらず、とうとうドレスを着たらしい」
「気がゆるむと、口調まで女言葉になるらしい」
云々・・・・。
「あの・・」
呼ばれて、ウィルは部下のひとりを振り返った。彼は笑いを必死にこらえながら、意を決したようにこう口を開いた。
「実は女性だって噂、本当ですか?」
・・・瞬間、ウィルは石になった。
「・・・どこで聞いた、そんな噂」
にらみつけながら言うが、部下は不思議そうに首を傾げる。
「いえ、もうギルド内で噂の嵐でしたよ。実は女性で、ギルドに来ていないときは、ドレスを着たり、化粧をしたり、頭にリボンを着けたりしてすごしている・・・って」
「どこから流れた噂だ、それは!」
ウィルが本気になって調べれば、噂の出所くらいは、すぐに割れるだろう。
案の定、噂を流した人物は、すぐに露呈した。
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「いったい、どういうつもりだ?」
ウィルににらみつけられて、セシーリカはしゅんとうなだれた。
「だって、ウィルさんには女装癖があるって噂、聞きましたから、ほんとかどうか、同僚に聞いてみただけです」
「・・・女装癖?」
ウィルは小首を傾げ、そして口を開いた。
「・・・誰に、それを聞いた?」
セシーリカは、どきっぱりと答えた。
「リヴァースさんです」
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人の口に戸は立てられず。
噂には尾ひれが付くもの。
噂とは、まさしく伝言ゲーム。
みなさん、十分注意しましょう。
(終わり)
<参考文献(?)>
7/6、リヴァースとセシーリカの会話より。
(すいません、良く覚えてないので表記は省きます)
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