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No. 00050
DATE: 1998/07/25 00:48:31
NAME: シオン
SUBJECT: 過去(前編)
・・・・またあの夢だ・・・・・
汗だくになって目を覚ます・・・
最近あの日のことが鮮明に蘇える・・・・
せっかく忘れていたのになぜ・・・
「・・・・・」
人というものは不便だ。
どんなに忘れようとしても
どんなに新たなことを詰め込んでも
記憶はなくならない・・・・
自分を愛してくれた女性(ひと)・・・
あの声・・・・
温かさ・・・
あの血の感覚さえも・・・
俺とその女性『シーナ』は天気のいい日に買い物に出ていた。
シーナはロマールでも有数の大商人の娘で親父が商人をやっていてその関係で知り合った・・・
ここで一つ言っておきたい、親父は表向きは商人だったが裏ではいわゆる"殺し屋"をやっていた・・・
ロマールでは商人を表向きとする方が何かと動きやすかったからである
いつものように俺とシーナは町で買い物をしていた・・・
妙だ・・・人がいつもより少ないな・・・・
いつもと町の雰囲気が違うことにきずいた俺はシーナに
早く帰った方がいいと薦めた
しかし、シーナは気のせいだと言って帰ろうとしない
俺も説得力に欠けていたためそれ以上は言わなかった
“それが大きな間違いだとも気づかずに”
夕方近くになり俺はシーナを家に送ろうとしていた。
その時、周りから歌が聞こえてきた・・・
「なんだ?」
しばらくすると強烈な眠気が襲ってきた
「しまった!呪歌・・・」
シーナはすぐに倒れ込んだ
「くそっ・・・・」
俺は気を失いそうになりながらも目を必死に開けていた
もうほとんど体は動かない ・・・
すると物陰から一人の人間が出てきた・・・
男か女かそれすらも確認できなかった
‘そいつ'は横で倒れているシーナを持ち上げ剣で
シーナを貫いた!
「!!!!!」
一瞬にして血が降り注ぎあたりは完全な真紅に染まった
もちろん俺もその血が降り注いだ・・・
「(シーナ!!)」
叫ぼうとしてももう声も出せない
完全に体が反応しなくなっているのだ
“そいつ”は勢いよくシーナから剣を引き抜いた・・・
剣を引き抜いたあとの傷口からは臓物がたれている
俺は初めて屈辱と絶望を同時に味わった
そいつは更にシーナの髪の毛を掴み首を切り落とした・・・
ドサッと言う音とともにシーナの“体の方”が落ちる
俺はショックのためだんだんと意識が薄れていった・・・
薄れゆく意識の中でシーナのシルエット、そして人を斬る時に出る独特の“音”がいつまでも頭に焼き付いていた・・・
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