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No. 00001
DATE: 1998/11/15 00:19:02
NAME: ファークス
SUBJECT: 神秘竜の探索4 (後編)
神秘竜の探索4 〜後編〜
注:
このエピソードは、他PL様よりキャラクタをお借りして書かれてあります。
基本的な口調やキャラクタの特徴などは、容姿データ等を参考にしておりますが、
物語ならではの脚色や、キャラクタの個性を出す関係上、キャラクタのパーソナリティ
が若干違って感じられるかもしれません。 あくまで、このエピソードは他者が執筆して
いることに、どうかご留意下さいますようお願いいたします。
また、このエピソードは時間的・時期的概念を設けておりません。
これは各PL様のエピソードや、設定などとかち合うこと、矛盾することが
無いようにという意図です。
ここに書かれてあることが真実なのかどうかは、全て各PL様に委ねられております
ことを、ご承知置きください。
最後に、快くキャラクタをお貸しいただいたPL様には、心から感謝致します。
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「…万を越える、“不死の魔物”…か。 キツイな…。」
背筋を走り抜ける、悪寒や恐怖感を感じながらワヤンが言った。
今まで何度も死に瀕したことはある。 戦いの中に身を置く者なのだから、ある意味
それは当然とも言える。 だが、それでも何とか生き抜いてきた。 戦士と言う名に
恥じない戦い方で、勝ち生きてきたのだ。
だが、今回は自信が無かった。 今まで“不死の魔物”とも、何度か戦った事はある。
しかし、今回は数が違いすぎる。 相手は万を越えているのだ。 この闇の空間の中に、
いったいどれだけの亡者が、蠢いているのだろうか? 不安を感じる以前に、絶望を
感じるのは当然とも言えた。
「降参しても、無理かのう…。」
ジャックオルトの疑問は、彼自身が心の中で答える。 無理だろう、と。
相手は魔物であり、降伏などと言う人間の戦術が通用するとは思えない。
鍛え抜かれた腕で、もう一度バトル・アックスを握り直す。
細工師としても腕の立つジャックオルトは、同時に優れた戦士でもある。
たった一人で数匹の妖魔と戦ったこともあったが、それとは話が違う。 鍛え抜かれた
腕は、心の状態を表すかのように震えていた。
「どうすれば…。」
言いかけていた言葉が、自然に止まった。 緊張感と恐怖が心を満たしており、
それ以外は何も考えられない。 必死に心を沈め、カルナは言葉の続きを探した。
どうすれば生き残れるの? 私は今そう言おうとしたのかしら…? 恐怖が答える。
違う。 お前はいま、どうすれば、一番苦しまずに死ねるの? そう考えたんだ、と。
受け入れがたい考え。 受け入れられない。しかし…。 現実の答えがそれであることは、
何よりカルナ自身が認めていることだった。
「どの方向だ…。」
武器を構え、精霊を召喚する言葉を紡ぎながら、リヴァースは考えていた。
どこまでも続く闇の中に、いったいどれほどの“不死の魔物”が蠢いているのか…。
周りを全て取り囲まれている。 全てを相手になど、出来様はずもない。 ならば、
戦える力を全て注ぎ込んで、包囲網の一点を突破しなくてはならないだろう。
“不死の魔物”が放つ“不死の精霊力”を身体中で感じる。 吐き気と嫌悪感が全身を
舐め回している。 意識を集中させ、必死に魔物の少ない方角を読む。 だが…、
深い闇の中、感じられるのはどこまでも続く“不死の精霊力”だけだった。
「なにか…何でも良いから…。」
樫の木で創られた無骨な杖を握りしめて、リデルは必死に考える。 生き残れる方法を。
死中に活を見出すことは、頭の切れる魔術師や、賢者の仕事という様にリデルは
思っている。 賢者の塔で、魔術師が咄嗟の閃きで、幾度となく危機を回避している
伝承を、読んだ事があった。 この場において、魔術の心得を持った者はリデルただ一人
だけなのだ。 目前に迫る“不死の魔物”。 恐らく数は万を超えるだろう。
生き残る方法を考えているはずなのに、次々と、仲の良かった者たちの顔が浮かんでくる。
自分の大切な人たちが、自分の死を悲しんでいる様子…。その瞬間が、いままさに
訪れようとしている。
誰もが動けないなか、闇の国での宴が始まる。
「ファリスよ! 闇を照らす光をここへっ!!」
アルダシールの掲げた掌が、まばゆい輝きを放った。 閃光に包まれた“不死の魔物”
たちが、次々とその場に崩れていく。 崩れるまで至らなかった魔物も、うずくまり、
地に伏して苦しんでいる。 “不死の魔物”がひるんだ隙を逃すことなくワヤン、カルナ、
ジャックオルト、そしてリヴァースが、鬨の声をあげて魔物の群の中に飛び込んでいった。
リデルがマナの力を借りて光を灯すと、そこには光に照らされた戦士達が、獅子奮迅に
戦っている。 幸いなことに、“不死の魔物”のなかでも、ここにいるのは力の強い者では
ないらしい。 リデルもこれまでに聞いたことのある、ゾンビやスケルトンと言った
比較的脅威の少ないものが多い。 勿論、数では圧倒的に差を付けられているが…。
リデルがマナの力を導こうと杖を構えたとき、背後からミントの悲鳴が上がる。
「ミントっ!」
振り返った先には、青白い光を放つ砂が、地より吹き上がっていた。 舞い上がった砂が、
今度はミントに吸い寄せられるかのように、襲いかかる。
「あれは…アッシュ! マナよっ! 光の矢となれっ!!」
振るわれた杖の先から、光の矢が放たれる。 闇の中、輝く尾を引いて突き進んだ矢は、
ミントに襲いかかる砂の中心を貫いた。 ボッという鈍い音と共に、砂は虚空に四散して
いく。 杖を構えて様子を見ていたリデルに、今度はアルダシールが警告の声を上げる。
「後ろっ!」
振り返ったリデルに、容赦のない一撃が振るわれた。
「ッグ!」
リデルの着ていたローブが引きちぎられる。 胸には二筋の爪痕がくっきりと浮かび、
そこから鮮血が吹き出す。 胸を引き裂いたキズを片腕で押さえながら、リデルは魔物の
二撃目を杖で弾いた。 勢い余って倒れた魔物に杖を振り上げたとき、急速にリデルは
身体が痺れるのを感じた。
胸の辺りが焼けるように痛い。 振り上げた手から、杖が地面に落ち、乾いた音をたてた。
「リデルっ!」
カルナが音に振り返ったとき、そこには地面に倒れていくリデルの姿があった。
「あれは…いけないっ! グールッ!」
目の前のスケルトンを薙ぎ払い、カルナはリデルに駆け寄った。 グールの爪には、
麻痺毒があるのだ。 この状況で動けないことは、“不死の魔物”の集中攻撃を受け、
真っ先に死を意味することとなる。 駆け寄ったカルナはリデルを抱え起こし、
半ば乱暴に揺すった。 意識は有るのか、苦痛に満ちたうめき声が漏れる。 揺り起こす
カルナの服も、リデルの出血によってどんどん赤く染まっていく。
「よくもっ!」
リデルの意識を確かめると、カルナはなおも迫るグールを、一撃で切り倒した。
胴の所から真っ二つに切り裂かれ、グールはその場で2、3歩を歩いた後、崩れ落ちた。
しかしその向こうからは、さらに数十体のグールが迫ってきている。 たった一撃でも
爪に引き裂かれれば、全身が麻痺して剣を振るうことなど出来ない。 リデルの負傷を
気にしながらも、カルナは意を決して剣を構えなおした。 グールの群の中で最初に
斬り結ぶ者を素早く見定め、飛び出しかけたとき、足下で倒れていたはずのグールの
上半身が、最後の力とばかりにカルナの右足を掴んだ。 ブーツの皮を突き破り、
鋭い爪が足首に突き刺さる。 焼けるような痛みに耐えながら、カルナはもう一度、
自分を掴んでいるグールの頭を突き刺し、横に払った。 頭がぱっくりと割れ、
グールは今度こそ動きを止める。 急いでグールの群を向き直そうとしたとき、
姿勢を崩してカルナはその場に倒れ込んだ。 麻痺毒…。 頭をその言葉がかすめる。
きつく握られていたはずの剣も、甲高い金属音をあげて地面に落ちた。 朦朧とする
意識の中、数十体のグールが襲いかかって来るのを、薄れゆく意識の中で見た。
「これは…!」
もう何体を斬ったのか覚えていない。 当たるを幸いにジャックオルトは戦斧を
振り回し続けた。鼻を突く腐乱臭にも慣れ始めてきたのか、既に五感は働いていなかった。
ただ目の前で動く魔物を斬っていく。 作業的に。 魔物の一撃は全て受け流し、
無駄な動きを全て省いて斬り結んでいく。 決して苦戦はしていないものの、
いつまで自分の体力が持つのか…。 ジャックオルトが不安と焦りを考えたとき、
カルナの崩れ落ちる姿が視界の端に映る。 見てはいけない、身体が警告の鐘を打ち鳴らす。
見れば必ず隙が出来る。 だが、身体の理解と心の理解は一致しなかった。
「カルナよっ!」
熟練の戦士に訪れた隙は、“不死の魔物”に一撃を許した。
“不死の魔物”が、次々と無防備となった身体に群がっていく。 魔物の群は、
生者を今や完全に包み込んだ。
「リデルっ! カルナっ! …ジャックっ!」
バスタードソードを両腕で振り回し続けながら、ワヤンは力の限り叫んだ。
自分の少し横では、アルダシールとリヴァースが必死に戦っている。 だが、
背後から聞こえた杖や剣の落ちる音、それに先ほどまでジャックオルトが上げていた
雄叫びが聞こえない。 目の前の魔物と戦いながら必死に呼びかける。 頼む、
返事をしてくれっ! 悲壮な考えがどうしても浮かぶ。 自分にもその時が訪れるだろう。
いつ? 自分が隙を見せたとき。 力を使い果たしたとき。 いっそのこと、
抵抗を止めた方が楽になれるのでは…。 そんな考えすらワヤンは抱いた。
「だが…!」
また一体のワイトを屠りながら、その口から言葉が漏れる。 戦いを止めるわけには
いかない。
草原の部族の誇りにかけて、戦士の名にかけて。 …そのとき、次々と迫り来る
“不死の魔物”の群から、奇妙な明かりが見えた。 赤く、怪しい目…。 野菜の
“カボチャ”に似たその姿…。
「闇よ。 かの者を閉ざせ」
呪文の詠唱が聞こえたと同時に、ワヤンは渾身の力を込めてバスタードソードを投げつけた。
視力が奪われゆくその瞬間…ジャック・オー・ランタンが自分の投げた剣で二つに
割れるのを、ワヤンは見た。 剣を失い、視力を失った戦士は、いまや“不死の魔物”
と戦う術を失っていた。
「いや…いや………っ! ファークスさん…っ、リード様……っ!!」
床に座り込み、ただ目を伏せてミントが泣いている。 自分をいつも護ってくれる人は、
この闇の中にはいない。 怒号と剣戟が、徐々に聞こえなくなっていく。
戦っている人たちの声が、次々と消えていく。 戦いの術を持たないミントにとって、
迫り来る死の恐怖はいっそう激しくなっていった。 もはや助かるとは思っていない。
ただ、死ぬのなら痛みを感じず、怖い思いをすることなく、そして…好きな人に囲まれて、
笑顔でさよならを言いながら死にたかった…。
「…お姫様を護るのが、騎士の務めって…ね♪」
いつか聞いたファークスの声が巡る。 そのとき、ミントは背後に気配を感じた。
鎧が擦れる音。 剣を鞘から抜き放つ音。 甲冑を着込んで歩く音…。 騎士…?
騎士様なの…? ミントはゆっくりと振り返った。 そこには、お姫様を護るべき、
騎士がいるはずだった。 …だが…その騎士は、座り込んで泣きじゃくるミントを見据え、
剣を上段に構えていた。 錆び付いた鎧、顔に当たる部分にはただ空洞が有るだけで、
目の部分だけが赤く怪しい光を放っている。
「騎士…さ…ま?」
抑揚のなくなった声が、静かに口から漏れる。 呼ばれた騎士は、躊躇うことなく、
剣を一気に振り下ろした。
「…ギンッッ!!」
激しい金属音が響く。 一瞬の静寂。
「戦えとはいわない…だが、身を守る努力はしろ…」
振り降ろされた騎士の一撃を、三日月刀で受け止めながら、リヴァースは言った。
「“不死の騎士”…か。 ミント、わたしから離れるなよ…。」
リヴァースは言うなり、“不死の騎士”に斬りかかる。 重い甲冑を着込んでいるのに、
その騎士は俊敏な動きで剣で受け流す。 だが、切り返したリヴァースの第二撃目を、
騎士はまともに受けた。 態勢を崩し、やや後ろに下がって間をおく。 僅かな
距離をおき、睨み合う両者。 リヴァースの漆黒の瞳と、“不死の騎士”の赤い瞳が
静かに交錯する。 …その時。
「……! しまっ…」
リヴァースが叫んだ。 “不死の騎士”。 目を合わせた者の精神を奪う、赤い瞳…。
リヴァースの片膝が地に着く。 白く白濁した意識だけが頭の中に広がり、目の前の騎士に
集中できない。 “不死の騎士”は一瞬のうちに近づき、上段からリヴァースに剣を
振り下ろした。 残った力を集中させ、リヴァースも三日月刀をすくい上げる。
リヴァースの目前で剣が火花を散らし、圧倒的な騎士の力にかろうじて耐え抜く。
しかし、剣を持つ手は細かく震え、騎士の力はなおも込められた。 剣を持つ手に限界が
来たとき、空を切る音と共に、リヴァースの剣をさらに下からすくい上げるように、
アルダシールの剣が振るわれた。
「し…しっかりしなさいっ!」
アルダシールの叱咤の声が響く。 その声にリヴァースはもう一度全神経を集中させると、
咆哮を上げて自らの意識を取り戻す。 騎士の剣を二人掛かりで受け止めながら、
もう一度リヴァースは不思議な感覚を抱いた。 自分の横で必死に剣を掲げる女性に。
アルダシール…何かをこの女性に感じる…。 初めて会う人物に、こんな不思議な
高揚感を抱いたことはなかった。 間違いない、この女性は、わたしと何かある。
何か、何かで共通するところがあるのだ…。
「だが…いまはっ!」
考えを吹き飛ばすように、リヴァースは叫んだ。 渾身の力を奮い起こし、もう一度
立ち上がる。 いまは目の前の騎士に集中をしなくては、そこで命を落とす事になる。
既にリデルが倒れ、カルナも、ジャックオルトも、ワヤンでさえ、“不死の魔物”の
群の中に消えている。 恐らく、とても生きているとは思えない。 それでも戦うのを
止めるわけにはいかないのだ。 その時、“不死の騎士”は不意に、鍔競り合いにあった
自らの剣を引いた。 今度はリヴァースのほうが姿勢を崩される。 素早い身のこなしで、
後ろに飛びのく。 一瞬前までリヴァースがいたところに、騎士の一撃が通り過ぎていく。
後ろに飛んだリヴァースは、着地と同時に突進を試みようとした。 だが、着地する前に、
背中が何かに触れた。 軽い衝撃を覚えながら、視線を後ろにやる。 …漆黒の目には、
もう一体の“不死の騎士”が自分を斬る光景が映った。
「リヴァースッ!!」
アルダシールの絶叫があがる。
「ファリスよっ! この者の心を身体をっ、あるべき姿に…」
祈りの声は、襲いかかる2体の“不死の騎士”によって、中断された。 既に相当の体力
をなくしていたアルダシールは、身を護ることが精一杯だった。 背後には、
いまだ泣きじゃくるミントがいる。 数回斬り結んだ後に、アルダシールは倒れ、
迫り来る死の恐怖に、ついにはミントも気を失った。 …墜ちて行く意識の中、
アルダシールは一つの疑問を感じた。
「(ワタシは…いま、この者を“リヴァース”と呼んだのか…。)」
万を越える“不死の魔物”の群に、冒険者達はいま、敗北した…。
*************************
「お前はっ! 何の罪もない世界中の人々より、たった一人の娘を救うっていうのか!」
「それでもオレはミーシャを助ける。 あの娘は、オレを庇って死んでいったんだ。」
「竜に魅せられし者よ…。 汝の狂気を、我が剣にて打ち払わん…。」
…押し殺されたような低い声。 怒気と悲しみを秘めた、苦しみの顔。
リードは意を決し、自らの剣を鞘から引き抜いた。 数歩離れたところで、その様子を
ファークスは黙って見ている。意見が分かれることは、いつかこうなることは、
お互い解っていた。 リードは迫り来る流星雨から大陸を救うために、そしてファークスは
自らを庇って、今も生死を彷徨っている一人の娘を救うために、神秘竜の欠片を集めて
いるのだ。 神の力を秘めた、復活すればどんな願いでも叶えるという竜を…。
かつて手を取り合い冒険した仲間。 互いに庇い合い、けなしあった。 ゆえに互いに
成長したのだ。 あの時は、まさか二人がこんな形の再会を果たすとは思っていなかった。
譲れない一線が、二人に剣を抜かしていた。
「もう一度だけ問いたい…。 本当に、俺たち戦うのか?」
剣を構えながら、リードが訊いた。 まだ心のどこかで、今の二人の状況を疑っている。
今にもファークスが吹き出しながら、冗談だよって言ってくれる…。 そう思っていた。
「やめておこっか? そのかわりお前が引いてくれよなっ!」
軽い感じで、本当に笑いながらファークスは答えた。 魔剣を引き抜き、片手で構えながら
落ち着き払っているように見える。 平然として、緊張している様子も見受けられない。
だが、恐らくは自分でも、目から溢れる涙に気づいていないのだろう。
「ハハっ。 一度、お前とは戦いたいと思ってたんだ。」
負けじと、リードも陽気な声を上げた。 剣を正眼に構え、親友を睨み付ける。
ファークスは、腰に下げていた革袋を外し、自分とリードの中間に放り投げた。
革袋の口からは、小さなオーブが見えている。 神秘竜の欠片の一つ、「ラピス・アイ」
だった。
「…リード。 オレに勝てたらコイツをくれてやる。 …但し、お前が負けたら、竜の
情報を教えて貰おう…。」
「…文献は全て書斎にある。 …私を倒して勝手に持って行くが良いさ。」
そして、両者は同時に呟いた。
「まさか、お前に剣を向けるとはな…。」
戦いが、始まった。 そして、そんな二人を遠くから見ている者がいた…。
*************************
最初に目を覚ましたのは、ジャックオルトだった。 冷たい感触のする真っ暗な地面の
上に、彼は倒れていた。 むくっと上半身だけを起こすと、ゆっくりと目の前や周囲を
見渡した。 相変わらず周囲は闇に閉ざされている。 ふと脇腹に激痛が走った。
手で触ると、ぬめりとした感触があり、触った手に血がついた。 意識が次第に戻るに
連れて、身体中から痛みを感じ始めた。足や腕、胴、そして額からも血が流れている。
さらに詳しく確かめようと、ジャックオルトは立ち上がった。 ベリベリと、床と身体の
間で固まっていた血糊が、剥がれていく音をたてた。起きあがって周囲を詳しく見定める。
周囲には、仲間がみんな倒れている。 アルダシールも、ワヤンやカルナ、リデルや
リヴァース、そしてミントも…。 そばに落ちているバトルアックスを拾い上げ、
その重さを手で確かめる。 柄の部分も血がべっとりとくっついていた。
「なぜ、生きているのじゃ…。」
それが正直な疑問だった。 疑問を明かすのと仲間を起こすのと、どっちを先にするべきか。
考え始めた自分にさらに疑問が浮かぶ。 それに、あの“不死の魔物”の群は、
どこに行ったのだ? 次々と浮かぶ疑問を放っておいて、ジャックオルトは近い者から順に
起こしていった。 みな、身体中に大きな怪我を負っているが、幸い全員から返事が
帰ってきた。 アルダシールやリヴァース、そしてリデルの怪我が一番酷かった。
ワヤンなどは視力を魔法の力で奪われている。 アルダシールはすぐに、神に祈りを捧げて、
それらの傷を癒していった。 全員が気を取り戻し、そして動けるようになるまで、
数時間ほど要した。
「“不死の魔物は”どこにいったのだ…。」
「それに、まだ私たち生きているなんて…。」
「…目覚めたか、定められし時を生きる愚者どもよ…。」
しわがれた声だった。 闇の中に、ぼうっとした小さな炎が浮かび、 だんだんそれは
こちらへ近づいてくる。 波打つローブを着込み、片手に大鎌を、もう片方の手には
揺らめく炎を持っている。 髑髏の風貌の顔、そして眼穿には赤い輝き…。 闇の王、
アンク。 その姿を捕らえた冒険者達は、もう一度警戒の態勢をとる。 未だにふらつく
身体を保たせ、散開し、集中する。
「なぜ…俺達を殺さない?」
堪りかねたように、ワヤンは訊いた。
「…我に楯突いた愚者よ。 汝らは永遠に殺さぬ。 死は永遠の始まり。
永遠の楽園なり。 汝らには生と死の狭間の苦しみを…、死にたくても死ねぬ恐怖を、
終わることのない苦痛を、与えようぞ…。」
「生かさず殺さず…。 永遠に生死を彷徨えと…。」
自分のこれからの未来を宣言されたリデルは、それが逃れようもないことだと感じた。
死して生き返り、そしてまた死んでいく。 …それが繰り返されるのだ。 その苦痛は
想像すら出来ない。
「だが…。 我は慈悲深き王…。 もとの世界に返してやらぬ訳ではない…。」
「どういうことだ…?」
「一人の生贄を、我に捧げよ…。 されば他の者は、我が慈悲にて救ってやろう…。」
「な…んだとっ!」
一人の生贄をもって、他の者が救われる。 闇の王が言う条件は、意味が分かる。
しかし…。全員が息をのんだ。 それまで闇の王に集中していた意識が霞んでいき、
別の考えに気を取られる。 だれが、生贄に…? 闇の王が言うことが真実とは思いにくい。
恐らくは虚言だろう。 …だが、今は見えないだけで、周囲にはいまだ“不死の魔物”が
蠢いているのだ。 その魔物が放つ、不死の精霊力も、ワヤンとリヴァースは遠くに
感じている。 例え信じられなくても、今は一路の望みに可能性を託すしかない。
闇の王の言葉が真実ならば、全員が死なずにすむのだ。 だが…、その生贄に誰が…。
誰もが言葉を失った。 助かりたい。 絶対に助からないと思えたこの場から助かるのだ。
何としてでも助かりたい…。 助かるために、生贄になどなりたくはない。 だが、
誰かがならなくては、やはり全員が生死を永遠に彷徨うことになる…。 全員が顔を伏せて、
考えている。…なにを? 犠牲になろうと言い出す決意を、覚悟を決めている?
違う。 誰かが名乗り出るのを、待っている。 誰かが名乗り出たら、それを言葉で止める。
そうすれば、人を生贄にしたという思いから、少しでも気持ちが和らぐ。
自分はあの時止めたんだって、後で自分を慰められる。 まだやりたいことは幾らでもある。
死にたくない、死ぬわけに行かない。 だから、他人を犠牲にしなくてはならない。
誰かが生贄になってくれれば、残りの者は助かる。 他の人も、いま自分に同じ考えを
持っているだろう。 …いざとなれば、力で生贄を決める? …それだと、この無垢な娘
…ミントが生贄になるのか。 …出来るのか? そんなことを? こんな娘を、
生贄に差し出せと言うのか? オレは。 わたしは…。 全員が沈黙を守っている。
やがて、ワヤンは言った。
「オレが、生贄になろう。」
「ワヤンっ! しかし…」
顔を上げ、神妙な面もちで言ったワヤンに、リデルは驚いた声をあげた。
「…しかし、何だ? 助かりたいのだろう? 止めてしまって良いのかよ…?」
「助かりたいです…で、でも、ワヤンだって…。 生贄なら、僕が…」
苦しそうに
言うリデルを制しながら、戦斧を構えたままドワーフが言った。
「…お前さんは、まだ若い。 生贄が一人で良いというのなら、ワシがなろうて。」
「ジャック…。 で、でも…」
こんどは、カルナが困惑の表情を浮かべる。 言いたいことが言えないこと、
自分の為に仲間を犠牲にしてしまうこと。 それらが無言の圧力にカルナは思えた。
…お前は、名乗りでないのか…?、と。 誰も思っていないのに、どこかでそう思われて
いる気がする。
「私だって……。」
精一杯の震える声を絞り出す。 ようやく聞こえるかどうかの、か細い声。
「…お前を生贄になどできるか。 …なるなら、わたしがなろう。」
精霊の理を知るリヴァースは、仲間の心中が手に取るように解る。 怯えている。
だれも生贄などなりたくない。 だが、あえて名乗り、それを止めて貰うことで自分が
生贄になるのを防ごうとしている。 だからリヴァースは言った。 だれも反論できない
ような、自信に満ちた声で。仲間からは、ただ沈黙が帰ってきた。 付き合いの長い彼らは、
それで十分だった。 しかし、そうでない者も、この場にいた。
「…いえ、アタシがなるわ。」
言うなり、アルダシールは闇の王に向き直った。 少し前方に、まるで仲間同士の決裂を
楽しむような目で見ている、アンクの姿がそこにあった。 キッと正面から闇の王を
見据え、睨み付けながらアルダシールは闇の王に向かって歩き始めた。 その気迫に
圧倒され、誰もアルダシールを止めようとしない。 声さえ出ない。 気が付いたとき、
リヴァースは呻くように言った。
「…ま、まてっ! わたしがなると言っている!」
鼓動が大きくなる。 自らの身体に宿る精霊達が、狂ったように叫んでいる。
…なんだ? この胸騒ぎは…。 なんだ? この悲壮感は…。 さっき仲間が生贄となる、
と言ったときには、全然感じなかったこの感情。 大切な者を失うかの様な知らせ。
止めろ、止めてくれっ! 頼む、戻ってきてくれっ! アルダシールが、闇の王に
ゆっくりと歩いていく。 不意にリヴァースは飛び出した。 何も目には入っていない。
ただ、アルダシールを…この人を失う訳にはいかないッ! 自分にとって大切な人だから…。
…だが、全力でアルダシールに駆け寄ろうとするのを、ワヤンがその腕を掴んで止めた。
「っ…わたしに触るなッ! は…離せっ!」
「……落ち着けっ!」
ワヤンが怒鳴る。 掴んだ腕を思い切り引いて、リヴァースを引き戻す。
ここまで乱れるリヴァースを、ワヤンは見たことがなかった。 いつも見られる理性や
知的な態度は微塵も見受けられない。 ただ叫き散らしている。 いくな、戻ってくれ…と。
「落ち着けと言っている!!」
ワヤンが怒鳴る。 怒鳴りながらも、自らも落ち着いていないことをワヤンは感じている。
全員の目がアルダシールに注がれる中、敬虔な至高神の信者は闇の王まで歩き詰めた。
あと、2、3歩の距離を残して。 ぴたりと歩みを止めると、アルダシールは正面から
アンクを睨み付けた。 その、髑髏の顔の奥にある、赤く禍々しい目を。
「…ワタシが、生贄になるわ…。」
「賢しい。 邪教の徒が我に跪くか。 我が慈悲に掛かることに、喜びを見出すが良い…。」
「闇の者に、邪教呼ばわりを許すとは…。」
「これより暗黒のもとに生きるが定め…。 邪教の主に、最後の救いを求めるが良い…。」
アンクの持つ大鎌が、大きく振りかぶられた。 人の身長よりもある長い柄。
その先端に、湾曲した鋭利な鎌が付いている。 これで首を刎ねるのだろう。
闇の王アンクが大鎌を振り上げた瞬間を逃さず、アルダシールは声を限りに叫んだ。
「ファリスよ! 亡者の王に神罰の光をっ!」
かざされたアルダシールの掌から、まばゆい閃光が迸る。 祈りの力により、
“不死の魔物”を追い払う聖なる光、<ターン・アンデッド>の力だった。
光の渦は闇の王を確かに取り込んだ。髑髏の顔がゆがみ、身もだえを起こしている。
目を覆う輝きのあと、アンクの姿は消えていた。祈りは最大に効力を発し、闇の王を
追い払ったのだ。 アルダシールは信じられないような目で自分の掌を見つめ、
すぐに仲間を振り返った。 そして、喜びの顔が、恐怖にゆがむ。
「汝、愚かなり。」
アルダシールが振り返ったとき、そこには闇の王がいた。
「快楽へ。」
「や…やめろーーーーーっっっ!!!」
リヴァースが叫んだ。 まるでそれが合図だったかのように、アルダシールの足下から
漆黒の炎が吹き出した。 螺旋を描き、一瞬のうちにアルダシールは炎に包まれる。
全員の視界からアルダシールの姿が消え、炎の中からは、声にもならない絶叫が響く。
「ね…ねえさーーーーんっ!!!」
リヴァースの叫びに、全員が振り返った。
「ねえさんっ…! ねえさんっ!! …ふざけるなっ! …いまここで会っといて、
もう終わりだとっ!? …なんでっ…なんで…! いつもいつも…大切な人に限って
失われるんだっ…!」
アルダシールから感じた、奇妙な感覚、共通感…。 響きわたる姉の声が、答えを教えて
くれた。
「ね…ねえさんだと…リヴァースの…」
叫き、炎に駆け寄ろうとするリヴァースを必死に止めながら、ワヤンが言う。
「リデルっ!」
カルナが泣き叫びながらリデルを見る。
「…万能なるマナよっ! 邪なる炎を消し去れっ!!」
「ウォォォーーーーッッ!!」
リデルが呪文を紡ぎ、ジャックオルトが戦斧を掲げて、闇の王アンクに突進した。
だが、アルダシールを取り囲む炎は衰えず、振るわれた大鎌に戦斧は弾き飛ばされる。
「ね… ねえさんっ…! ねえさん…!!ォォォォォーーーーッッ!!」
目の前の漆黒の炎が、さらに大きく膨らんでいく。
リヴァースの声は、姉に届いてはいなかった…。
業火が、渦巻いている。 吹き上がる炎で、身体も浮き上がっている。 美しいプラチナ
ゴールドの髪が、至高神ファリスの神官衣が、形の良い身体が、燃えていく。
何も聞こえない、もはや痛みも感じない。 意識がゆっくりと、遠のいていく。
薄れ行く意識の中に、ふと、自分と同じファリスの女司祭の顔が浮かんだ。
その見覚えある顔に、アルダシールは話しかけた。
(「ジェニー…。 ありがとう…。 ううん、謝る事なんてないじゃない…。
本当に楽しかったわ…。 あなたの赤ちゃんの名前、わたしも考えたんだけどな…。
もうっ、そんなに泣かないでよっ。 …アナタは…ぜったいに幸せになってね…。」)
親友だったジェニーが、どこかへと沈んでいく。 別れを惜しみながら、泣きながら…。
また、顔が浮かんでくる。 威厳に満ちた顔。 自信に満ちた声。 自分をたった一人で
産み育ててくれた人…。 厳しくて、優しい、誰よりも尊敬している母の顔…。
(「かあさん…ごめんね…こんな娘で…。 せめて、安心させてあげたかったのに…。
でも…わたし、かあさんの子で本当に良かったよ…。 それと、いつか謝ろうと
思っていたの…。 いまが最後だから…言うね。 あの時は、本当にごめんなさい…。」)
ふと、大好きな母の顔の後ろに、別の顔が見え隠れし始めた。 伺うように、
自分を見ている。母親の顔に隠れて、良く見えない。 でも、アルダシールにはそれが
誰だか解った。 言いたかった言葉が、いつか出会ったときに、言おうと用意していた
言葉が、口から漏れ出た。
(「最期ぐらい娘にちゃんと姿見せなさいよね…。 あんたのせいで、どんなに
かあさんとアタシ、苦労したと思ってるのよ…。 どうして…わたしの前から…
かあさんの前からいなくなったのよ…!」)
そして…。 目の前で、一人の男が立ち上がった。 男? 身体の輪郭がよく解らない…。
中性的な顔だち…。 その目で睨まれたら怖い…でも、その目で見つめられたら、
安心できる…。 あなたは…わたしと同じ血が流れているのね…。 やっぱりアナタは…
存在していた…。
(「あんな男の血を引く奴なんて…、ずっと会いたくないと思ってたけど…会って
みたかった…。 …あんたいままでどうしていたのよ…! わたしとかあさんが、
どれだけ辛い思いをしたと思ってるのよ…! もうっ…。 でも…。 あんたも、
たぶん同じ想いをしたんでしょうから…。 ごめんね、こんなお姉ちゃんで…。
最後にあえて嬉しいんだ…今…。 さようなら…!」)
全ての意識が、光の中に消えていく。 吹き上がる炎が収まったとき…。
そこには、何も残っていなかった。
「っ…ねえ…さん…っっ…。 あぁ……!」
地に顔を向け、リヴァースはただ繰り返していた。
「…ご…ごめんなさい…わたし…わたしがっ! 呼んじゃったから… だから…
だからっ!」
泣いているミントを、カルナが強く抱きしめた。 そのカルナも、溢れる涙が止まらない。
「…王に仇なす愚者よ。 汝らの悲しみは最高の余興なり…。」
しわがれた闇の王の言葉に、全員が立ち上がった。
「余興…だと…? これがか…? こんなに悲しいのにッ! 辛いのにッ!!」
「…では、慈悲を授けよう…。 汝らにも、終わることのない闇を…。 我が下僕よ…!」
さっきまで遠くに控えていた“不死の魔物”が、またも群をなして襲いかかる。
しかし、もはや魔物の数など彼らにはどうでも良かった。 悲しみに満ちた怒りをぶつける
相手が多いことに、狂喜の感情すらわき上がる。 声の限りに彼らは叫び、力の限り剣を
振るった。 …勝てないことを承知で…。
「ウォォォォォーーーッッ!!!!」
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(ここは…どこ…? アタシは…炎の中で…。)
ゆっくりと目を開ける。 真っ白い天井が目に飛び込んできた。 首を回し周囲を見渡す。
そこは、どこかの神殿の部屋のように見えた。 窓にはステンドグラスがはめ込まれ、
部屋からは力強い至高神の威厳を感じる。 見慣れたアノスの神殿ではない。
神官達の姿も見えなければ、祭壇らしきものも見あたらない。 だが、周囲に満ちている
張りつめた空気が、そこが至高神ファリスの神殿であることを教えてくれている。
立ち上がり、全身を眺める。 炎の中で燃え尽きたはずの神官衣や、美しい髪、
それに自分の身体も、何も無かったかのようにそこには存在していた。
「なぜ…? アタシ…死んだのでは…」
その時、周囲に絶対なまでの、威厳に満ちた声が響いた。
[ 目覚めたか… 敬虔なる光の信徒よ…。 ]
「…だれっ…!?」
声の主は、アルダシールの質問には答えなかった。 声が響いて聞こえるため、相手が
どこにいるのかアルダシールには解らない。 姿を見せることなく、声は続けられた。
[ …ここは我が光の神殿…。 我が意のもと、汝を呼び寄せた…。 ]
「…アナタは誰なのっ!? 姿を見せてよッ!」
[ 我が姿を見ること、叶わず…。 ]
さらに聞き続けようとするアルダシールの声を遮り、その声は言った。
[ 答えよ。 汝が正義とは何か…。 正義は如何なる者のためか…。 ]
低く、威圧的な声。 アルダシールは答えようと口を開きかけたとき、その脳裏を、
一つの光景が横切った。 アノスにおける、ファリス神殿の腐敗…。 暗黒神ファラリスの
信者討伐の軍に参加したときのことが、鮮明にいま思い出されてゆく。 暗黒神を
信仰していると言うだけで、その者を蹂躙し、ファリスの聖騎士を名乗る…。
何も知らぬ子供までが、正義の名の下に命を奪われていったあの日…。 あの時、
アルダシールは堪らず飛び出した。 子供を助けるために。 体を張って、子供を
護ろうとした。 …だが、取り押さえられた。 討伐遠征の後、アルダシールを非難する
者が神殿内に現れた。 お前の信仰は間違っている…と。 その時から、アルダシールは
自らの信仰を問い直していた。 そして、自分なりに見つけたその答えを、姿の見えぬ
相手に戸惑いを覚えながら、アルダシールは叫ぶように答えた。
「…正義? …正義はアタシ、アタシが正義よっっ!! …ふふ、愚かしい回答でしょ?
でもね、絶対的な力の至高神と違って、人間の振りかざせる正義なんて、タカが知れて
るのよ。 人によって、状況によって、正義は変わるわ。 それに振り回され、
矛盾を見つけ、いがみ合う。 それが人間なの。 そう、人間は弱いのよ!
だからこそ、確固たる己を持たなきゃ、やってはいけない…。 自分が正しいと
信じたことを、心に抱いてそれに沿って行動しないと、自分を保っていられないの。
そう、正義は、自分が自分たる証。 自分を救うもの。 …人を救うものじゃないわ!」
[ 罪を犯した者が、光を求めしとき、汝は如何にする… ]
自らの信仰を試されている…。 アルダシールは思いながらも、自分の考えを、答えた。
「その人を助けた場合、ファリスの光によって救われうるとアタシが判断した場合助けるわ。
…その人が過去に何をしたのかは重要じゃない。 大切なのは、救われた後、これから何をするかよ!」
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そのころ…
ワヤンが、カルナが、ジャックオルトが、いかけようとしたとき、その神官は、一通の手紙を取り出した。 この者が目覚めたとき、
渡してくれ…。 そう頼まれた、と神官は言う。
「ねえ…さん…。」
手紙を読み終え、リヴァースは一言、そう呟いた。
数日後…。 全ては何もなかったように、それぞれ過ごしていた。 きままに亭も
いつもの様に、栄えている。 ただそこに、ファークスの姿がないだけで…。
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(→ 神秘竜の探索5へ)
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