 |
No. 00002
DATE: 1998/11/15 12:42:08
NAME: ルルゥ&リデル
SUBJECT: 「ちうりっぷ」騒動
「よぉ、ルルゥのボーヤじゃねぇか」
「あ、ワヤンさん。こんにちわ」
「そうだ、お前、花育てるのが好きだって言ってたよな?」
「はい」
「じゃあ・・・・ええっと、ドコにしまったかな・・・あ、これだ。やるぜ、ほれ」
「何ですか、この包み・・・?」
「酒場でな、エルフにもらったのさ。花の種だとよ」
「わあ、ありがとうございます。大事に育てますね!」
<10月31日>
今日、道でワヤンさんにばったり会って、花の種をもらいました。帰ってから袋をあけると、とても大きな種で、親指と人差し指で作った輪くらいの大きさです。とりあえず鉢に植えてみました。どんな花が咲くのか、楽しみです。
<11月1日>
水をやっていますが、まだ変化はありません。種の事を本でしらべてみましたが、どこにも載っていませんでした・・・何の花なんだろう?
<11月2日>
今朝起きたら、小さな芽が出ていました。「きままに亭」なら、色々な事にくわしい人がいるのでは?と思い、夜に鉢を持って行ってみると、シャウエルさんが「クリーピングツリー」だと教えてくれました。大きくなると夜中に歩き回って、人を食べてしまうそうです。
このまま育てていいのかどうか思案していたら、飼い主しだいでいい子になるから、とシャウエルさんが言ってくださいました。可愛がってあげようと思います。
<11月3日>
葉っぱが生えて、背丈が10センチくらいまで伸びました・・・。
鉢の中いっぱいに根っこが詰まってしまったので、花壇に植え替えをしました。
<11月4日>
朝、びっくりしてジョウロを落としてしまいました。背丈は僕の肩くらい、根元と茎の中ほどから葉が伸びて、もうオレンジがかったピンクのつぼみがついています。
ついでに、僕が昨日植えたのは花壇なのに・・・何故花壇の横の地面に植わっているのか・・・ええと・・・。
ヒム先生はエルフなので、何か知っているかと思ってお見せしたら、「まあ大丈夫でしょう」とだけ言って家に入って行ってしまいました・・・本当に、大丈夫かなぁ・・・。
<11月5日>
今日は大変でした・・・・・・
深夜。ヒム精神施療院裏。
ルルゥとリデルは、茂みの中で、じっと気配を殺していた。二人の視線の先にあるのは・・・巨大なチューリップ・・・に、似た植物。
昼間「気ままに亭」を訪れたルルゥの話を聞いて、リデルは植物の見張りを提案した。もっともそれが近隣住民への配慮なのか、単なる好奇心かは本人のみぞ知る、である。
ルルゥは緊張していた。マスターの話によれば、クリーピングツリーは危険な物。しかし・・・・・・。
そよそよ。
夜風を受けて、の〜んびり葉を揺らす巨大なチューリップ・・・・・・。
本当に危険なんでしょうか・・・?
いちおう腰のレイピアを握り締め、じいっと動かないように努力をする。
「はっくしょん」
風邪のぬけきらないリデルが、くしゃみをした。「大丈夫ですか?」とルルゥが声をかけようとしたその時。
「そこで何をしている!?」
男の声と共に、明かりが二人を照らした。オランの警備兵だ。
「子供・・・女の子?こんな夜中になにしてる?」
二人とも、それなりの歳の男なんだが・・・。
「まさか家出人か?ちょっと来なさい」
「え、違います、僕たちは・・・」
「いいから来なさい!」
屈強の警備兵に、非力な二人はずるずると引きずられて行く。体鍛えろよ、まったく・・・。
「話を聞いてくださぁい!!」
「詰め所で聞く!」
「僕たちは、家出人ではありません」
「ざわざわ」
「じゃあ何をしていたんだ?」
「見張りです」
「ざわ?」
「ええ、この子の見張り・・・って!!」
三人は硬直した。
いつのまにか、庭に植わっていた巨大ちうりっぷが、話の輪にくわわって「ざわざわ」と葉を揺らしている。そーっと視線を下にやれば、白い根っこがうねうねと・・・。
「わははははははは!!」
突如笑い出す警備兵。
「あ、はははは」
ルルゥも引きつった笑顔を見せる。
「・・・・・・」
冷静なのはリデルだけ・・・いや、もしかしたら頭の中が真っ白になっているだけかもしれない。
「ぎゃぁぁあああああああああ!!!」
数秒後、絶叫が響き、「ウルセェぞ!」「今何時だと思ってんのよ!」という声と、鍋やヤカンなどが三人+一輪(?)の上に降ってきた。
カーン!!
鍋が植物を直撃した。
「ざわざわっ!!」
植物、突然ダッシュ!・・・おお、速いっ!!
走ったあとを、キラキラと涙の粒が落ち・・・ってこら、お前どこに目があるんだ!?
ツッコミはさておき、住民のいわれなき(いや、充分にあると思うが・・・)暴力に泣きながら走り去る巨大チューリップを追いかけ、ルルゥとリデルは一晩中オランを走り回ることとなる・・・。
ん、警備兵はどうしたって?とっくに気絶してるわ、んなもん。
翌日。
賢者の学院の図書資料室で、リデルは例の植物の記録を見つけた。
「ワンダリング・チューリップモドキ・・・学名、アクレタジャント・フロミナス・・・??」
古代王国時代、植物を偏愛する魔術師が創り出した、知恵を持つ花・・・よくなつく。
「・・・なつく・・・」
リデルはじーっと本を見つめた。
「まあ、無害そうですし・・・いいかな」
何がいいのやら。
<11月6日>
今朝見たら、連れ戻したハズの「ちうりっぷ」がまたいませんでした。外出に味をしめたようです・・・迷子札がいりますね・・・はぁ。
補足:そのころのワヤン。
「あれ、ポケットから何か落ちたぞ・・・ん?こりゃあ、メの奴にもらった花の種じゃねぇか・・・あん?じゃあ俺がルルゥのボーヤにやった、ありゃあ一体なんだ??」
 |