No. 00012
DATE: 1998/12/04 18:17:04
NAME: ラフティ
SUBJECT: ラフティの足取り(1)
街道を駆ける馬が一頭。
石畳の隙間の砂が舞いあがり、ゆるやかな風に乗って薄れていく。
「・・ごめんね、疾風」
その背に跨るは、文字どおり頭から足まで肌の露出のない、小柄な人影だった。
その声は未だ少女のものである。そして服装は一見して砂漠の民と分かる代物であった。
「・・急ぐの・・ごめんね・・」
馬を長時間、汗をかくほど走らせる事は無謀である。普通、急ぐ伝令などは
途中で代え馬をし、馬の消費をおさえる。
「・・あれは私の責任だから・・それに・・私は・・」
主に忠実な軍馬はただひたすらに走る。
主がその馬を止めたのは、夕日がかなり大きくなってからだった。
さすがに夜通し走る気はないらしい。
先ほど通過した村には戻らず、火をおこして野営の準備を始める。
彼女は自分の姿が都会はともかく、郊外の村では畏怖の対象に成りうることを
経験で知っていた。
簡単な食事を済ませ、愛馬にもたれて毛布にくるまる。
馬は敏感だ。何かあったらすぐに身じろぎする。馬の側で寝ることは
そういう意味がある。
「・・だって私は・・」
毛布の隙間から漏れた声はわずかに涙ぐんでいた・・。
続劇