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No. 00018
DATE: 1998/12/08 20:25:52
NAME: ラフティ
SUBJECT: ラフティの足取り(5)
それを最初に見つけたのは馬車を駆っていたカルナだった。
(・・火?)
昼間の明るさの中でそれを見つけることは難しい。だが、よくよく目をこら
してみても、間違いなかった。誰かが遥か前方の林の外れで焚き火をしてい
る。煙は上へ行くににつれて木の葉でで薄れてしまっていなかったら、もう
少し早く発見できただろう。
仲間にその事を告げ、彼女は馬車を止めた。
ほぼ4日間、休みなしに旅を続けていたため、馬の息は非常に荒い。もうそ
ろそろ馬を替えなくては旅そのものが続けられなくなる。
昨夜そう言ったら、キリュウが「それでは、歩けばよかろう」と事も無げに
その話題を切ってしまった。確かにその通りなのだが、そうそう簡単に思い
切れるキリュウが羨ましかった。
「どうします?」
荷台にいる仲間達に尋ねる。愛馬で先行していたカールも戻ってくる。
「焚き火がどうかしたのかよ」
パーンがぶっきらぼうに言った。
「罠かもしれん、ということだ。それくらいも思い付かんのか?」
ルルゥが小馬鹿にしたように鼻で笑う。
戦士は苦虫を噛み潰したような表情をしたが、それ以上何も言わなかった。
「ただの旅人かもしれませんが・・」
自信なげなアーバストの発言は、今度はセシーリカに止められる。
「だったらこの時間帯は普通、歩いてるよ」
なるほど、今は食事の時間帯からもずれている。
「とりあえず・・見てきますね。もしかしたらラフティさんかもしれない」
カミルの提案に、カルナが同調する。と、カールまで行くと言い出したが、
「カールさんの鎧じゃ、すぐにばれてしまいます」
とのカルナ一言で却下された。
少なくとも、ラフティが3日前にこの近辺に来たことは、とある少年の証言
で判明している。そして今日の早い時間に、うち捨てられたダークエルフの
死体が発見されている。雷撃と炎、そしてナイフで止めを刺されていた。
おそらく、いや間違いなくラフティの仕業だ。
ただ、彼らを焦らせたのは一人のダークエルフの曲刀に付いていた血だった。
私も、俺もと言う仲間を制し、結局、野外の行動に長けたカミルとカルナが
斥候に出ることになった。
・・ラフティは迅風が身じろぎしたのを感じて目が覚めた。辺りは明るい。
夕方と言うにはまだ少し早い時間であった。
これは彼女が寝過ごしたわけではない。先の深夜の襲撃以来、日中休み、
夜行動するようにサイクルを変えたのだ。その方が、夜陰に紛れて接近する
敵を発見しやすい。ラフティは暖をとるための焚き火と荷物をそのままに、
その場をそっと離れた・・。
「この馬・・ラフティさんのだ・・」
カルナが呟く。
「馬を・・置いてったのでしょうか?」
カミルの言葉に、カルナは首を傾げた。
その時だ。
『・・カルナさん?』
耳元で懐かしい声が聞こえたのは。
それが《風の声》だと気付くのに、少し時間がかかった。
ガサリと下生えを踏み分けて出てきたのは、まぎれもない、砂漠の民の少女
だった。
続劇
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