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No. 00035
DATE: 1998/12/17 16:52:01
NAME: シゲラ (キースの娘)
SUBJECT: こんな結末
やだっ!!とおさんっ! こんなところに、出てきて!
ずっとお家にいなくちゃだめ、っていったじゃないっ!!
ちょっと、何よ、この鎧? どこのごみ箱からひらってきたの!? くっさーい!! 虫涌いてるじゃないの!
もうっ、家から、武器までもちだしてきて。こんな重たいの、よく運べたわね・・・。
ああっ、もう、偽足も外れちゃって・・・
だいじょうぶ?とおさん。 あたしの肩に捕まって・・・
・・・だれよ、あなた。
・・・その格好は、冒険者!? かまわないでよっ!!冒険者なんかにする話なんて無いわ!!やだ、離してたらっ!!
・・・話を聞かせろ、ですって? 関わってほっとけない?
・・・わかったわよ。そのかわり、聞いたらさっさと帰ってよ!!
とおさんは・・・この人は、冒険者だったのよ。
そんなに豪胆な人じゃないし、運もあるほうじゃない、って、母さんと結婚したのをきっかけに、とっくの昔に止めちゃったみたいだけどね。
それで、とおさんは、武器を作る鍛冶屋さんのお手伝いをしてくらしてて、そのうち、あたしと妹が産まれて、そんなに裕福じゃなかったけど、一家4人幸せに暮らしていけるぐらいには、うまくやってたわ。
そのうち、妹が、賢者の学院に入りたい、とか言い出したの。ラーダの神殿にある学校で、スジがいい、ってほめられて、その気になったみたいね。
でも、神殿の寺子屋と違って、正式な学院に入るには、途方もなくお金がかかるのよ。 あんなところ、どこかの貴族のボンボンとか、それとも国から補助が受けられるぐらいの超天才とかしか、はいれないじゃない。
でも、とおさん、何を思ったか妹の願いをかなえてやりたい、とか言い出したの。
とおさんが昔遺跡からひらってきた財宝を入学金に当てたりして、何とか妹、学院にはいれたけど、とおさんの安月給だと、すぐに学費が尽きて、妹はお金が払えなくて放校処分の通達を受けたわ。
そんなとき、とおさんの昔のお友達の人がやって来たの。変な地図を持ってたわ。なんでも、北のほうにある・・・おちた遺跡とかいってたっけ。そこの、まだ発掘されてない新しい区画が見つかったから、いこう、って誘いに来たの。
とおさん、おかねになるんだったら、って、張り切って出かけていったわ・・・・。そう。馬鹿よ!! 一体何歳になったと思ってるの? 中年太りのお腹で、昔の鎧なんか入りっこなくって。家族のみんな、反対したのに。妹も、もう学院はいかない、っていってたのに・・・それなのに、武器だけ持って、お仕事も辞めちゃって、その人とでていっちゃったの・・・。成功したら、一生、おまえ達を食わせていってやる。すきなだけ、着飾らせてやる、って・・・。
2週間ぐらいして、とおさんは帰ってきたわ。
そう・・・片足、なくなって。魔物に喉を食いちぎられたらしくて、声もろくにだせなくなって・・・。よほど恐い思いしたのね・・・。ほとんど気が狂っちゃって・・・。あたしや、かあさんや、妹の顔も、わかんなくなっちゃってたのよ・・・・!!!
神殿に連れていって何とかしてもらおうとしても、治療にはものすごく高いお金かかるから、もちろんそんなの、どこからも出なくて・・・
妹も、結局、放校処分になって・・・。
あたし、婚約者いたのよ?・・・どうしても、あたしの父親に会いたいって。どんな人でも、どんな姿でも、あたしを育ててくれた人なら、会ってみたい、っていってくれたの。でもね、とおさんのこの姿見たら・・・逃げちゃったの・・・。
かあさんも、看病やつれで、病気になって、寝込んじゃった・・・。そんなに体強いほうじゃないのに。
妹は、自分のせいでとおさんがこうなっちゃったって・・・神殿で治してもらうんだって、お金稼ぎに、街角に立ったわ・・・。もちろん、あたしはおこったわよ! そんなことしたってとおさん喜ばない、って・・・。それでも、あの手この手でお金稼ごうとして、そのうち、悪い人に捕まって、麻薬にやられちゃって・・・今、精神病院で隔離されてるわ・・・
冒険がにくい!! とおさんが、あんなところにいかなかったら、あたし達、こんな思いする事無かったのよ!!
冒険者なんて、大っ嫌い!! ほんの一握りの人だけがつかめる栄光を夢見て、その陰でいったいどれだけの人が泣いてるかなんて、想像もしないんでしょ? でないと、そんなことやってられるはずが無いじゃない!!
はなしてよ!! とおさんを返して!!
あたし達の幸せを、かえしてよーーーっっ!!!
ごめんなさい、とりみだしちゃったわね。
あたなもがんばってね・・・とおさんみたいにならないように。
あなたの夢とやらを、つかめる事を、祈っているわ・・・・・。
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