No. 00046
DATE: 1999/01/13 09:00:55
NAME: ルゥウォン
SUBJECT: クリス救出からその後
クリスを寝かせた後、俺は忘れていたことを思い出した。
クリス・セリスの父親に、自分の妻だった人を探して欲しいと頼まれていたことを。
場所は判っている。ただ、自分は会いに行けない。行けば、また壊れてしまうだろうからと。
死ぬときに涙ながらに語った、セリスが12のときから俺を雇った男。
セリスに会わせてやって欲しい。クリスは・・・もう長くない。
そう願った。
クリスの青ざめた顔を見て、思い出した。
俺は行かなければならない。・・・クリスのためにも。
「セリス・・・・・」
焦点があってなかった俺の前に座っている婦人は、俺の言葉を聞いて反応を示した。
ここはクリス・セリスの母親の実家の一室である。
俺は駄目モトで単刀直入に告げてみた。その結果が、これだ。
「セリス・・・・・。クリス・・・」
自分の子供たちの名を呟き、涙を流す。
思い出しかかっているのだろうか。
「会いたい・・・」
涙ながらのその顔を、手で覆う。
「会わせてやる」
と言ったその時、婦人の顔が喜びにあふれた。
それはセリスが俺にはじめて見せた笑顔にそっくりだった。
「会わせてください、セリスに。クリスの代わりをさせられている・・・あの娘に」
俺は頷き、婦人を連れオランに戻ることにした。
フォルテと居る、幸せそうなセリスを遠くからでも眺めさせたい。
あの日のセリスは輝いていた。それをこの人にも知ってもらいたい。