No. 00062
DATE: 1999/01/22 14:05:09
NAME: ハースニール
SUBJECT: 離れゆく秋
今は何処を歩いているのだろうか?
ただ、目の前には地平線のかなたまで続く草原が広がっている。
ただの草原ではない。そこに緑は広がっていなかった。
ただただ、小麦色の大地が風に棚引き広がっているだけ。
「だいぶ寒くなってきたな」
空を見上げる。
不思議なものだ。大地はこうも変わっているのに、空の蒼は全く変わらない。
そう、変わっていないのだ。
この大地はもうすぐ枯れ、薄ら白みを増すだろう。
それでも空は変わらない。そう、変わらないのだ。
その時、不意に北風が肌を付く。
おや?
それを感じた時ふと思う。
いや、変わっているのか?目には見えないけれど、それでも空は変わっているのか?
夏の日風は暑さを、冬の日風は寒さを増す。それは空が変わっている証ではなかろうか?
精霊使いではない自分にはそんな変化を目で見る事はできない。
いや、それは違う。
見る事ができる。それが大地の変化だ。
「……面白いものだ」
今までそんな事を感じた事はなかったのに。
「何故だろうな…」
おそらく何もない。延々と続くこの大地の上に立っているからだろう。
だからこそ、そんな小さな自然の声が聞こえ、大地の姿を見つめられるのだろう。
だが、そんな事はどうでもいいような気がする。
ただ、その姿はすばらしく美しい。
そう、妙な事は考えなくてもいい。ただ、それだけでいいじゃないか。
「ん?」
なにかが見えた。
あれは…
「ケンタウロスか」
そうか…ようやく到着したのだな。
秋が過ぎ去る前に、冬がやってくる前に到着できてよかった。
秋は美しく、それでいて優しい。だが、冬は美しく、厳しい。
一人で歩むにはちと心もとないほどに。
「マスターの紹介と、言えばいいのだったな」
そして、歩みが速まった。