 |
No. 00068
DATE: 1999/01/24 19:36:40
NAME: エティ・フェルシュライン
SUBJECT: エティ、発進!
俺は物心ついたときから母のぬくもりを知らずに育った。親父の話によると、モンスターに殺されたんだそうだ。
「ちくしょぉっ!覚えてろぉ・・・」近所の『もと』ガキ大将、ロザックの最後っぺが、オランの夕暮れ時の下町にむなしく響きわたる。
「ふっ・・十年はえぇんだよ」
『新』ガキ大将エティは、ロザックの遠ざかる情けない後ろ姿を眺めながら、静かに呟いた。(くー!かっくいい!!)
「兄貴ぃ、やったっすよ、やってやりましたよぉっ!」
弟分のケイニェが、うれし涙と鼻水の入り交じったすごい形相で陰から走ってきた。おれはとっさにひらりとかわし、あわれケイニェはそのまま壁につっこんでいった。
「ふ、おろかな・・・」
「あ、あにきぃ・・・・・」
俺は無視して続ける。
「ま、これでロザックの野郎もおとなしくなんだろ」
「うう、これでやっと虐められなくて済みますぅ・・・」
俺はその言葉を聞くやいなや、ケイニェを容赦なく蹴り飛ばした。
「な、何するんですか兄貴!!」
「やかましい!!てめぇがんな根性なしだからいっつもいじめの的にされんだよ!!もし他の奴がロザックを叩きのめしても、てめぇへのいじめはかわんねえんだ」
「・・・・」
ケイニェは俺のいわんとすることが分かったのか、すっくと立ち上がると、
「分かりました、兄貴!」
と言って、ケィニェは目をキラキラさせ、家へ走っていった。
「ホントに分かったんか?あいつ」
呟いてから、俺も家路についた。
ふと、川のそばまで来て、目の端に赤い物が映ったような気がした。「気のせいか?」と思ったが、好奇心旺盛な年頃、そうは問屋がおろさない。確かに赤い物が背の高い葦の群生しているところに見える。近づいてみてみると・・・・親父だった。
「親父!!!どうしたんだ!?」
呼びかけても返事はない。この出血だ。助かるはずもない・・・頭の片隅でそんな考えがちらつく。
「そうだ、人を・・・」
立ち上がろうとした瞬間、誰かに脚を捕まれた。ぎくりとして振り向くと、親父が苦しそうにこっちを見ていた。
「親父・・!」
「い、いか・・エティ、・・よく、聞け・・・・、私はもう、たすからんだろう。」
そこまで一気に喋り、親父は血の固まりを吐いた。
「親父ぃ!!」
「エティ・・落ち着け、落ち着いて・・ゴフッ・・よく、聞くんだ・・」
俺がうなずくと親父はまた喋りはじめた。
「おま、えの・・かあ、さん・・・は、まだ・・死んじゃ、いない。母さんは、ある場所に・・ぐふっ・・・居る・・・その・・ば、場所・・は・・・・・・・」
突然、親父の体から炎が吹き上がった。その炎は金色だった。ただの炎じゃないことは俺にも分かった。誰がやったのか探しているうちにどんどん親父の体は消えていき、とうとう俺が帰ってきたときには、塵ひとつ、残っていなかった。
・・・その後のことは、よく覚えていない。ただ、俺の恩師に逢ったところからはハッキリ覚えている。師は俺を見るなり、1も2もなく、風呂へ連れていった。ゴツゴツした手で、体中きれいにされたよ。俺に”静心”を掛け、事情を聞いた師は、すぐに親父を復活させる準備を始めた。そん時、「ああ、こんな人になりたい」って思ったんだ。
師は最善を尽くしてくれたが、
「魂まで焼けてしまったらしい。お前の親父さんは、もう・・・」
言って、師は俺を抱きしめた。俺は気が抜けてしまった感じで、ずっと、上を見上げていた。その日は師の家に泊めてもらった。新婚で、まだ子供もなかったから、女将さんは俺をかわいがってくれた。
「先生!俺を弟子にしてください!!」
翌日の朝、俺は開口一番にこういった。しかし師はその答を予期していたかのごとく、
「ああ。しかし、私の修行は厳しいぞ?」
と言ってくれた。
ま、あれから十年。ロザックもケィニェも何をしていることやら。俺は今のパーティには今度の冒険で最後にしようと思う。なぜなら、もっとたくさんの奴と拳を交えたり、酒を酌み交わしたいからだ。今のパーティは大儲けして当分は冒険しそうにないからな。ま、その冒険でおれもこのエティブレードを手に入れたんだけどな。何?変な名前だと?後で俺んとこに来い。おっと、ついでに俺の嫁さんも探さないとな。
俺のエティブレードで、悪人どもに秩序を、そして正義をたたき込んでやるぜ!!
 |