No. 00072
DATE: 1999/01/27 14:22:03
NAME: ルゥウォン
SUBJECT: 切なく哀しき、強き思い
シシリーに伝言を頼んでから、きままに亭に伝言を残してからかなりの時間が経った。だが、月日に直して言えばそれほど経ったわけではない。
その間、セリスの母親は自分の殻に包まったり戻ったりを繰り返していた。
それほどまでに自分に負担かけさすようなら、なぜ置いて出て行ったりした。
聞きたかったが、正気でいる時間のほうがだんだんと短くなっていく。
焦る気持ちをなんとか押さえつける。
屋敷にまだ残る召使たちには、セリスの母親を閉じ込めているセリスの部屋には近付くなと言ってある。召使の中で、セリスと同じ髪、同じ瞳の色を持つ乙女が居たから。
そういえば。
誰かがこのオランに精神治療院と言うものがある、とか言ってたな。
連れて行こうか。
だが・・・それをしてセリスは傷つかないだろうか?
今でさえ知識がないもの達でも知っているような知識を、経験を持たないといって自分を苛めるのに。
尋常じゃない生活を強いられた少女・・・・・・はじめてみた時、それから2・3年後まで無表情だった少女。痛々しい彼女の幼き時代を知っている俺としては、これ以上自分を苛めないで欲しいと願っている。
5年ほどしか付き合いはないが、娘だと思わせてもらっている。
親としては幸せになってもらいたい。
だが、俺のこの躊躇いが、悲劇を生んだ。
セリスと同じ髪、同じ瞳の色を持つ召使、名をミレーヌというが、その彼女が、窓ひとつ隔てた俺の目の前で、セリスの母親に殺されるのを見てしまった。
俺は慌ててその部屋に急いだ。
すると今度は、セリスの母親が自分の胸に刀を刺して倒れそうになっているのを見た。
ふざけるな!
何のために俺がここまでつれてきたと思ってるんだ、馬鹿野郎!!
あなたを死なせる為じゃない、セリスを殺させる為でもない、セリスが喜ぶと思ったからだ!!
・・・・・・・・・貴族ってのは・・・他人の思いを聞き入れる耳を持たんのだな。
あっけなく死にやがった。
セリスになんて言えばいい。
事実を言うしかないのか。
お前の母親は、ミレーヌをお前だと誤り、そして殺害したと。
・・・・・・・言うしかないだろう、きっと。
傷ついても、俺は真実しか巧く言葉に出せない。
嘘をついても判ってしまうだろうから・・・。
済まない、セリス。止めることが出来なかった。
ミレーヌがもしお前だったら、俺は狂ったかもしれんな。
それで許されるとは思わないが。