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No. 00097
DATE: 1999/02/12 16:24:59
NAME: カルナ
SUBJECT: 結果♪
新王国歴511年2の月6の日
マーファ神殿の前に一人の女性が、やや青ざめた面もちでたたずんでた。
はっきり言って通行の邪魔である。だが、本人は気づいていない。
(さあ・・・行くわよ!!・・・でも、さすがに緊張するわね・・・。でも、行ってきちんと調べてもらわないことには、何も分からないんだし・・・)
などと、はっきり言ってどうでも良い(そうか?)事を考えていた。その隣で、アイリがカルナが動き始めるのを待っている。しかし、その気配まるでなし。
「義姉さん、どうしたの?行くよっ」
かれこれ30分ほどの間の後、アイリはそう言うとすたすたと神殿に入っていった。
「・・・・え!?ち、ちょっと待ってよ、アイリちゃん!」
カルナはよ〜やく我に返ると、あわててアイリを追いかけた。
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事の起こりは、4日前。
気ままに亭で、カルナが突然の吐き気に襲われ、ちょっとした騒ぎになったのが始まりである。カルナにはカールという恋人がいるので、「もしや妊娠では?」と言うことになり、居合わせたプリムにお祝いを言われたり、見に覚えがあるのかカールがうろたえたり、そんなカールを結婚前に手を出したことに激怒したセシーリカがどつき倒したり(注:一部脚色しています。)と大変だった。
それ以来、照れくさくてカールには会ってないし、何を怒っているのかセシーリカも口をきいてくれない。とりあえず真偽のほどを確かめようと言うことで、クレイの妹のアイリをお供に引き連れて、マーファ神殿を訪れたのである。
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1時間後。
調べてもらったカルナは、緊張を隠せないと言った表情で、神官の言葉を待っていた。
「カルナ・ヒトラウスさんですね。」
「はっ、はい!」
呼ばれてややうわずった声でカルナは返事をする。神官はにっこりと微笑んだ。
(まっ、まさか本当に妊娠!?)
一瞬、頭が真っ白になる。早くも子供の名前なんぞに思考が飛んでいった。
だが。
次の神官の言葉に、カルナは一瞬時を止められた。
「食当たりですね。それに少し胃が荒れているみたいです。とりあえず薬を出しておきますから、2〜3日は、胃に重い物は控えて下さいね。」
こきーん。
固まったカルナの後ろで、アイリがにっこりと言った。
「やっぱりね。」
アイリ・・・やっぱりとは、どういう意味だ?
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数日前の出来事である。
「ただいま。」
「姉さん、遅いわ!今日は姉さんが食事を作る当番でしょ!!」
家に戻ってきたカルナを迎えたのは、お腹を空かせたミレディーヌの叫び声だった。
そんなにお腹が空いているのなら、自分で作れよ。
「・・・今から作るわ、少し待っててちょうだい。」
そう返事をして準備を始めようとしたところ。
「カルナ姉さん!お腹空いた。なんかちょうだい!」
表から元気なセシーリカの声が響いてきた。
「今から作るから、待っててね。」
「やったー!!」
苦笑を浮かべて、カルナは料理を作り始めた。
「はい、どうぞ。」
料理が出来上がり、2人の前に並べていく。
「いただきます。」
「わぁい、いただきまーす。」
2人、声をそろえて食べはじめた。
料理に対する反応は、2人それぞれだったが、ここでは面倒なので省略する。
「ごちそうさま、あーお腹いっぱい。じゃーね!」
セシーリカは、とっとと施療院に戻っていった。
「ごちそうさま、後よろしくね」
ミレディーヌもそう言って、自分の部屋へ戻っていった。
・・・・・・・誰か片づけ手伝えよ。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
無言で片づけを始めようとしたカルナの目に、手をつけてない料理の皿が目に入った。
「あら?あの子たち食べなかったのね。仕方がないわねぇ。あまりお腹空いてないけど、食べちゃいましょう。」
料理を食べながら、ふとカルナは疑問に思った。
(そう言えば私、こんな料理作ってないわよね・・・。ま、良いか。少し変わった味がするけど、美味しいし。)
片づけを済ましたカルナは、自分の部屋へ戻っていった。
「ただいま帰りました〜。」
ミレディーヌの夫のクレイが学院から戻ってきて、食卓の上の変化に気づいた。
「あれ?前に作った料理がなくなってますね。痛んでいたみたいだったから、処分しようと思っていたんですけど。きっとお義姉さん(カルナ)が処分してくれたんでしょう。」
一人で納得して、クレイは自分の部屋へ入っていった。
そんな物を、食卓の上においとくな!!
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・・・帰り道。
夕日をバックに、カルナはとぼとぼと歩いていた。その三歩前を、アイリが歩いていく。
食当たりだなんて、あまりにも恥ずかしすぎる。カールにはともかく、ミレディーヌやクレイになんて言おうか。そんなことが頭の中をぐるぐる回っていた。
と。
「あっいたわ!!ねえさ〜んっ!」
前の通りで、ミレディーヌとクレイが手を振っていた。2人は駆け寄ってくると、わくわくした表情でカルナに問う。
「姉さん、どうだった?男の子?女の子?」
そんなことわかるかい。
「お義姉さん、それで、何ヶ月ですって言ってましたか?」
「え〜、あの、えっとぉ・・・・・」
救いを求めるように、泳がせた視線の先がアイリと会う。だが、アイリはにっこりと笑うと
「それじゃ、学院に行ってきます・・・」
そう言ってとっとと去って行った。
「あっ、ち、ちょっと待ってよ、アイリちゃ〜ん!!」
夕暮れのオランに、カルナの声がこだまする。
オランは今日も平和であった。
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