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No. 00103
DATE: 1999/02/18 12:09:09
NAME: リデル
SUBJECT: 姉への手紙
「・・・ファズさんがオランに?」
僕は思わず、言葉をおうむ返しにしてしまった。
僕にそのことを告げた義妹は、嬉しそうに頷く。染めてしまった黒い髪が、なんだか痛々しく思えた。
いろんな事があったのだろう。何もかも捨てて雲隠れした義妹。だが、こうして目の前にきて、その事実を伝えてくれるまでに心が癒されたのかと、少しほっとした。
「手紙、書いてみたら? ファズに渡しとくから」
その言葉に、僕は、もちろん頷いた。
ファズさんとは一度ロマールで会ったことがある。ルフィスさんが亡くなって、それをロマールで修行中のカールさんに伝えるために、特別な計らいでロマールへと飛んだときのことだ。
その時は「お前の姉さんに会わせてやるぞっ!」て腕を引かれて、無理矢理姉さんが住んでいるらしい家に連れて行かれた。
だけどその時、そこには誰もいなくて、いつ帰ってくるかもわからなかったので、自分の住所と連絡先を書いた手紙を残して、オランに戻ってきたのだ。
「お前を捜してたぞ」
そう言われたときに、無性に嬉しくて、たまらなかったのを覚えている。ユーティ姉さんは、生まれる前から一緒だった兄弟だから。
僕が捨てられてから半年ほどして、ドレックノールの奴隷商人に売り飛ばされたと聞いたときは、もう死んでいるかもしれないと思っていたので、すごく嬉しかった。・・・僕の生存を信じ、探してくれているということも。
だから、会えなかったのはとても残念だった。
早速、机に向かった。・・・・久しぶりに机についた気がした。
なんと書こうか、すごく迷った。
いつもの鬱々とした気分が、少しだけ晴れる。
結局、僕は西方語で、こう書いた。
『姉さんへ。
今、ファズさんがこちらに着ていると言うことを聞き、この手紙を託そうとペンを取りました。
僕を捜してくれているそうで、本当に嬉しかった。
僕は、前にそちらに残した手紙のとおり、今オランにいます。
ちょっとしたことがあって、元気とは言い難いんですけど、なんとかやってます。
オランはラムリアースとは違い、気候も温暖で、こちらでお世話になっているヒム先生もとてもいい方です。
僕はこちらに来る前までは、ラムリアースのフェリオ村というところにいました。
捨てられてすぐに、フォール師という魔術師の方に拾っていただいて、育てていただきました。
師はもう亡くなってしまいましたが、師の娘に当たるひとと今生活しています。
姉さんは今、ロマールでどう暮らしているんでしょうか。冒険者ですか?
もしできることなら、お会いしたいです。
それでは、なんだか文章が支離滅裂になってしまいましたが、この辺でペンを置きます。
書きたいことはたくさんあるのですが、上手くまとまらなくて。
お暇なときでよいので、御返事を下さると幸いです。
リデル・フォービュート』
インクが乾くのを待って、丁寧に封をした。待ってましたとばかりに、義妹がそれを受け取り、駆け足で「きままに亭」へと去っていく。
僕は久しぶりに、ちょっと気持ちが軽くなって、本を開いてみた。
・・・ルルゥさん、最近見ないけどどうしたのだろう。
そんな心配が、ふと、頭の中に浮かんだ。
沈んだ石のように、すごく、気になった。
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