No. 00113
DATE: 1999/02/23 09:07:26
NAME: ルゥウォン
SUBJECT: 甦る思い出
「サラ・・・」
俺は墓標に語りかける。
自分の所為で死なせてしまった女性の墓。
なにも判らない俺に優しく接してくれた、暖かな女性。
名を、サラと言う。
潮風が強いこの土地で、彼女は眠っている。永遠に。
俺は海を見る。
冷たい、しょっぱい風が鋭く舞っている。
「・・・・・・フェイリェン・・・」
一言だけ。
そして、またサラの墓標を見る。
「済まない、サラ。俺は行かなくてはならん」
ここに来て、海を見ていたら思い出してしまった。ここに来るまでの自分を。その過去を。
恐れていた。
・・・こんなこと言うとセリスに笑われるかもしれないが、俺は恐れていた。記憶を取り戻すことを。
20年もの間、ずっと逃げ続けていた。
・・・・・・セリス。俺はこんなに弱い人間だ。
・・・・・・サラ。それでも俺を抱きしめてくれるか?
瞳を閉じる。
心残りを思い出して、苦笑する。
早く・・・悪の化身になってしまった弟を封印しなくてはいけないのに、俺はセリスの幸せを見たいと思う。
そんなことをしている時間はないはずだろう。
自分に叱咤する。
・・・俺は、とことん馬鹿な奴だ・・・