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No. 00122
DATE: 1999/02/27 10:28:15
NAME: マーリン
SUBJECT: 水面下の事件3
<簡単な人物関係図>
エルフ・・・・・・きままに亭の『何でも屋さん』。しかし、相当のシーフ的腕前。さすがギルド系人間。『街中』専門。情報の達人。ヤサオトコ。でもクール。上から下まで全部灰色(笑)。結構情に厚く、エルザに『行方不明のレイシャルム探し』のお願いを押し通された。しかも、よりによってこんな展開になってきた(爆)。
マーリン・・・・・謎の女魔術師。特に変化、幻術系の魔術が大得意。やたらと小細工が上手い。今回、三角塔から魔法アイテムを奪った強盗の一味と思われる。大抵は幻術で外見を偽っている上、二枚舌、三枚舌で激しく別人を演じ抜く。
メルフィンギ・・・マーリンの使い魔。愛称『メル』。漆黒の鴉。
<マーリンの視点>
*相棒と冒険を続けていた。
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*オランに来て、相棒の見つけてきたデカい仕事にありつく。
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*魔法アイテムの強盗事件勃発(マーリンを雇った一味)
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*追手の撹乱と一時のダガー(一アイテムのみ)の保管を言い渡される
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*ついに追ってきたレイシャルムと対峙
↓
*不覚にもレイシャルムにダガー奪い返される
↓
*エルザを利用してさらにダガー奪い返す!/エルザに化ける!/情報操作!
↓
*後は、ダガーを仲間に渡し、追手からの時間稼ぎを練り上げるのみ。
エピソード『水面下の事件3』††††††††††††††††††††
朝日を浴び始めた店内で、エルフはうつらうつらしはじめていた。店員も、先ほど下がるといってあがった。完全に朝日が昇るまで、店番もかねて店内にたたずむ。
昨晩は・・・いや、ほんの先刻の事なのだが、本当に色々な事があった。当事者であったレイシャルムとエルザは、少し前に連れ立って、自分たちの宿へと戻っていった。・・・金の髪の、例えるなら春先のチューリップのようだった少女は、本当にたまたまそこに居合わせただけで結局事件とは何の関連もなく、レイの帰った少し後に、店内で別の一般人らしき客をひっかけ、・・・今頃は愛のしとね(?)なのだろう。
エルフはかすかに顔を上げた。
「・・・ん?」
確かに何かが飛び去った気配を感じたのだが。
(気のせいか・・・)
特に殺気を感じていたわけでもなかったし、現在、身の危険にさらされる理由も持っていなかった。
(少し神経質になっているのか?)
重い考えと、執拗に頭を振りまわす問題達を振りほどくように大きくのびをする。
(さて、今日も一日が始まる・・・・)
しかし、アクシデント続きの上に、徹夜明け。エルフの頭は完全にお休みモードに入っていた。のびと同時に机に突っ伏す。・・・迂闊にも、再びうとうとといい気分になるのを、甘受したい気分だった。
(とりあえず、この寝ぼけた頭をすっきりさせないと)
次々と起こった出来事を、もう一度整理するうち、いつしか浅い眠りへと落ちはじめるエルフ。
「ふふん・・・ドジねぇ(笑)」
いつのまにか、入り口にあらわれたのは先刻の女魔術師であった。周囲を気にもせず、堂々とかつのんきそうにエルフに歩み寄る。そして、おもむろに『ぷつっ!』とエルフの髪の毛を一本抜き去る。丁度刹那、戸のきしむ音でエルフは薄く目を開けた。頭部に軽い痛みを覚え、跳ね起きる。
「ば・い・ば・い!」
にこやかにそういって、再び戸口へ向かう女魔術師の手を素早く掴み、エルフは口走る。
「何か御用ですか」
何の躊躇いもせず、魔術師は答える。
「・・・っと、髪の毛、貰ったわよ。」
その顔はからかったようににこやかである。・・・しかし、気を集中しないとなんだか実態のつかめないような笑み。人目で、その顔面には呪術がほどこしてあると、エルフには見て取れた。
「わたしに構わず、さっさと神殿行くのね(笑)」
魔術師は、腕を掴んだエルフの手元にじっとめをやるとしれっと言い放つ。
「あなたは、夕べの・・・ちょうどいい、お聞きしたいことがあるんですが。」
いつになく真剣な、緊張感ある面持ちでエルフがたずねる。
「とりあえず、よろしいですか?」
そう言いつつも、出口をふさぐため、戸と魔術師の間に、立つ位地を動くエルフ。
「そんな暇ないわよ。その腕、使い物にならなくなるわよ(笑)」
さして気にした風でもなく、さらりと魔術師は言い放つ。
「腐って落ちる前に、一番近くのチャ・ザにでも行きなさいな(にこにこ)邪魔しな
いわ。」
自分以外の何者のペースでもなく言葉を続ける魔術師。刹那、我が腕を省みたエルフは指先に軽い痺れを覚えた。・・・確か、な。
その瞬間、魔術師は、『ばっ!』と強引に腕を振りほどく。ほんの一瞬、エルフのひるんだ隙だった。さらにばさり・・・、と外よりの羽音。
「妙なマネはされない方がいい。」
体制を立て直し、エルフは懐に手を入れる。
「ばいばい!用心深くなったほうがいいわ(^^)」
少しも気にした様子でなく、女魔術師はそのまま戸に手をかける。
「ふふ・・・っ、そんなに強く握ると、血が止まってしびれるわよ・・・(笑)」
そう言いながらエルフと距離を置いた彼女は、『ばっ!』と一気に酒場の扉を開けた。鋭い痛みをエルフは両目に覚える・・・逆光!朝日がエルフの網膜を焼き付かせる。
(・・・この腕のしびれは!ペテン師め。)
そのまま逆光で去る女魔術師。食い止めるために更なる追い討ちをかけてきた使い魔に、エルフは素早くダガーを三本投げた。店の外で、鳥の叫び声。・・・手応えが、あった。
『ぎゃー・・・』
飛び去ろうとして、バランスを失った使い魔の鴉が、木に激突した音。投げたダガーのうち一本が、使い魔の左翼を深く貫いていた。
「逃がすか!!」
エルフは店を飛び出す。
「・・・トドメを。」
性急な考えが、脳裏をかすめていた。
『ぎゃー・・・!』
主の方向に飛び立とうとした瞬間、トドメのナイフを体に受けた鴉は、地に落ちた。・・・エルフは目を細める。一瞬にして自分の性急さを覚ったのだ。
「これであの女の手がかりになるか・・・。」
しかし、地に落ちた鴉の体を拾ったとき、既に硬直は始まっていた。できる限りの処置をするが、時は遅かった。『手がかり』という観念よりも『敵意』が勝ってしまった瞬間のミス。
エルフは鴉の目を閉じさせて店内へと消えた。
・・・しかし、この時エルフは、更なるもう一つのミスに気付き損ねていた。
朝日の上りはじめたオランの路上・・・。マーリンは・・・、先ほどの魔術師は足を止めた。
「・・・め、メルフィンギ・・・!!?」
爪先から、指先から、這い上がってくるような震え。左腕をもがれたような、鈍い痛みに似た感覚。
「・・・・・・・あの男・・・・・・・・・・・」
振り返っても、使いの鴉がついて来ぬ。・・・いや、そんな事は見なくても分かる。精神感応で通じている使い魔と主は・・・。
誰かが死んだ恐怖。自分が死ぬような恐怖。自分の心に二つの哀しみ。・・・マーリンは足を止めざるをえなかった。
「・・・メルを・・・・」
分かりたくない、信じたくないのに、あまりに確かな感覚にさいなまれる。頭が真っ白になるのを覚え、マーリンは自分を繋ぎとめるように呪った。
「・・・覚えておけ・・・。」
そそまま、朝もやに掻き消えるようにして・・・・・・・・・。解けない呪いを。誰かの胸に・・・・・・。
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