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No. 00126
DATE: 1999/03/04 10:11:05
NAME: シェルファ
SUBJECT: 決意。そして・・・
このオランの地で、思わぬ人物と再会した。
その人物の名は、カミル。カミルーン・エンプレスという。
彼とは、幼い頃からの友達だった。私の住んでいたエルフの村と行き来があった人間の村に住む住民だったから。
私は人間の村に住む、シャルレークという女性が好きだった。
彼女は明るく、輝かんばかりの笑顔をいつも見せてくれていた。
私はエルフで、人間に恋する事はご法度と部族に言われた事もあったが、そんなことで私の思いが断ち切れるわけではなかった。むしろ、強くなってしまっていた。
その彼女が、いつも誰を想っているか。・・・気付かない訳なかった。
彼女がいつも気にかけていた男。カミルーン。私は彼に、ずっと嫉妬していた。
突然の嵐で村が全滅してしまった後、そんな彼に会うなんて思わなかった。
彼は私に親しいものにしか見せない笑みを見せる。彼はきっと、気がついていないだろう。私が、シャルレークを今でも愛している事に。
そうでなければ、結婚しているなんてこと、言えないはずだ。シャルレークのその後を知っている彼なら。
彼は、私に、村を全滅させた嵐は、自分の母親がやったことだと語った。
彼の母親が、私の村をも滅ぼしたのだと、その時になってはじめて知った。
・・・・・嘘だ・・・
そう、言おうとして、気がつく。
カミルは、嘘をつくような人間ではないのだということに。
シャルレークを除く全ての村の住民に虐げられていた彼は、だがしかし、体が弱い母親を心配し、シャルレークを巻き添えにしている事に哀しみを抱いているような、心優しい人間なのだ。嘘など、どうして彼が告げられるだろう。
私は、悩んだ。
部族をすべる予定だった者として、彼に復讐するべきか。
その悩みから逃れる為に、私はオランを出た。
そして、流浪の旅に出た。
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その中で、偶然、シャルレークに出会った。
踵まであった髪を短く切り、名前も変えていたが、私には彼女だと判った。そして、話しかける。
彼女は私と再会して、とても驚いていたようだ。
そして、カミルに内緒にしてくれと願った後で、語った。
「・・・ものすごい惨劇だったわ。あまりに凄まじくて、2.3日記憶が無くなったくらい。
そんなあたしを、カミルは見ていられなかったのね。あたしを、今の両親に預けて、独りで行ってしまったから」
彼女の、カミルに対する想いを知っている私は、驚愕した。
カミルは、私の想いには気がついていなかったようだが、彼女の想いには気がついていたと言った。それが事実であるなら、記憶を失った彼女を、どうして置いて彼女の前から消えてしまったのだ!?
私は彼女が哀しく見え、そして、ゆっくりと、決意した。
どんな事情であれ、シャルレークを哀しませる奴は許せない。
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私は髪を切った。それをシャルレークに渡し、彼女が止めるのも聞かず私は再びオランに出向いた。
待っていろ、カミルーン。
彼女を哀しませておいて、自分だけ幸せになろうだなんて、シャルレークが許しても私は許さない。
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オランに着いて3日後。
その時は来た。
戸惑うカミル、おろおろする彼の妻、ライム。
私は静かな心で、決闘を申し込んだ。
カミルは驚いた。それがよく判る。村に居た頃と違い、ころころと表情が変わる。前は無表情だった。村人の前では。だが、母親の側に居る時は無理してでも微笑んでいた。痛々しく思ったときもある。手を差し伸べようとしたが、私に迷惑がかかる、と静かな面持ちで告げた。
・・・昔の事を懐かしむ気持ちを押さえ、カミルを連れて近くの広場に出る。
カミルは剣を構えない。一応は持ってきているが。
私は遠慮はしない。剣を構え、間合いを取る。
カミルは、辞めようとも言わない。
村を全滅させられた、仕方が無い・・・そんな風に思っているのを、感じていた。
「剣を抜け、カミル。私は遠慮しないぞ」
あくまで静かに、告げる。
カミルは、私の意気込みを感じて、仕方なく剣を構える。
・・・殺し合いが始まる。
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決着は、一瞬だった。
息を乱していないカミル。血まみれの私。
片膝をつきながら、願う。
「これは殺し合いだ。どちらかが死ぬまで、続けられる戦いだ。死にたくなかったら、私を殺せ」
敵わなかった。判っていた。私と彼では、力の違いがありすぎると。
それでも、許せなかった。許す事が、出来なかった。
カミルは俯く。苦悩している様が、見て取れる。
・・・私はお前に嫉妬しか抱けなかったというのに、お前は私のこと、よく思っていたのか?
つくづく、馬鹿な奴だ。
私は自分の剣を、自分に向ける。
カミルは驚き、私に駆け寄る。
が、カミルが手を伸ばした時、私は自分の心臓に、剣を突き刺していた。
震える手先。暗くなっていく景色。
その中で、しっかりとカミルに抱きかかえられている自分を感じる。
・・・・・・大きくなったな、カミル。
私は、カミルの涙を顔で受け止めながら、目を閉じた。
泣くな。大きな男が。みっともないぞ。
そんな事を思いながら、意識が薄れていった。
・・・今度シャルレークに会えたら、自分の気持ちを打ち明けよう。カミルに会ったら、今度こそ、・・・・・今度こそ・・・
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