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No. 00139
DATE: 1999/03/19 00:25:03
NAME: シシリー・クレンツ
SUBJECT: 苦悩
今日、休学中にもかかわらず学院へ呼び出された。
とりあえず、リヴァースさんに頼まれてアナーヒターに関することを調べるために終日に学院に行っているのだから別に呼び出し自体に面倒臭さはなかった。
私の師であるエイク導師からの呼び出しかと思ったがそうではなく。普段は一般魔術師は立入禁止の地帯へと呼び出される。
そこに行くと一人の老魔術師がいた。
「シシリー・クレンツ君だね。君の噂は聞いているよ。とても、優秀な男だと言うこともね。」
老獪そうな男だそれが第一印象だった。
「そんなことはありません。まだまだ未熟です。」
とってつけたようなお世辞に私は一応の謙遜をしておく。
「君に一つ見て欲しい物がある。」
そういうと老人は私一枚の男の似顔絵を見せた。そこに書かれていた男は・・・
「・・・レド師」
それはきままに亭によく来る魔術師のレド師だった。
何か問題を起こし、学院から追われていることも知っている。
そして弟のケイドは彼から魔術を習おうとしてることもだ・・・
「ご存じかね?」
「ええ、少しは。酒場で話をする程度の仲です。」
動揺を表に出さないように細心の注意を払う。
「そうか」
老人はそういうと大きく溜息をついた・・・深い深い溜息だった。
「休学中に申し訳ない・・・君に一つ頼みがある。この男レドウィック・アウグストのことを監視して欲しいのだよ。」
その後その老人にレド師が歩んできた道。何故今学院から追われているか全てを知らされた。
「で、私にレド師をどうしろと?」
まさか、抹殺命令な訳がない私は一介の魔術師だ。返り討ちされるのが落ちである。
「本当に監視していてくれればいい。しかもあからさまにわかるようにね。君の役割はレドウィックが表立って行動しないための布石に過ぎない。我々は彼の暗殺を諦めたわけではない。だが、今時期少々なのだよ。彼が表立った行動をしない限り強硬は手段には出たくない。あえて言えばある程度は黙認するつもりでさえいる。」
そこで老人は一息ついた。そして最後に私に引き受けざるおえない一言を吐いた。
「このままでは君の弟が悲しむ結果にならないかね?」
私には断ることが出来なかった。
「シシリーさんどうしたんですか?何か呼び出されたみたいでしたけど。」
一人の少女が私に話しかけてきた・・ユクナックだった。顔には心配ですと言わんばかりの表情をしている。
「いや、ちょっとね。本当に大したことないから気にしないで。」
そうやって無理矢理笑う。なるべく自然になるように努力はしたがおそらく無理があっただろう。
「ならいんですけど・・・」
やはり釈然とはしていないようだ。しかし授業はじまる鐘が鳴り彼女は去っていった。
最後に彼女は何か言いたげだったし・・・とても哀しそうな表情だった。
だが、それに答えることが今の私には出来ない・・・
学院を出てきままに亭向かう最中私は悩んでいた。
この使命は受けるべきか・・・
レド師のことをケイドに伝えるべきか・・・
彼女のことをどうするべきか・・・
「・・・私はどうすればいいのだろうか。」
少し春の匂いがしはじめた真夜中の街を魔術師は一人歩いていた。
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