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No. 00144
DATE: 1999/03/30 02:55:57
NAME: アレス
SUBJECT: 家督争い(5)−参戦の理由−
簡単なキャラ紹介
ア レ ス:昔、親に鍛えられたおかげで戦士としての腕はあるが、現在は農民として生活している。22歳の青年。
リディア:アレスの幼なじみ。最近、石皮病に似た病を患い、行動に制約がかかる。22歳の美しい(笑)女性。
−オラン郊外、ウズの村にて−
「リディア、僕と結婚してくれないか?」
長年の気持ちをやっとの思いで告白した私に、彼女は寂しそうな瞳をしながら首を横に振って答えた。
「アレス、私の体のことは知っているでしょう?この体ではあなたと一緒にはなれないわ。」
たったそれだけの会話を交わすにも、彼女は咳き込みながら苦しそうにしている。
「病気?そんなもの、すぐに良くなるさ。大丈夫、僕がついているから」
彼女を安心させようと答える私に、彼女は沈黙し、しばらくの間目を伏せていた。
「‥‥お願いだから、私にかまわないで。あなたの負担にはなりたくないの‥」
幼い頃から共に暮らし、一緒に遊んできた私に今更何を言うのだろう。彼女の喜びは私の喜びであり、彼女の苦しみは私の苦しみでもあるというのに。そんな彼女の、硬くなりつつある手を取りながら励まし続けた。
「今度来るお医者様は、オランでも名高い名医という話だ。だからきっと良くなるさ」
‥‥今まで何人もの医者に診てもらった。しかし全ての医者が「私の手にはおえない」と答えてきた。
次こそは、次こそはと思ってもう数ヶ月が立つ。しかし彼女の容態は日にまして悪くなるばかりで、時々意識が無くなることもあった。
「‥‥これは私の手にはおえんな」
いつもと同じ言葉。この医者もダメなのか、と落胆していたが今回は少々違っていた。
「この症状は普通では無い。大地の精霊力が強すぎる。‥‥恥ずかしい話だが、只の医者である私には始末におえん。」
「この病気を治すには‥‥そう、神の奇跡にでも頼らん事には不可能だろうな。」
その医者は、はっきりとした口調で結論を述べ、診察を終えた。
「力になれなくて済まないが、神殿への紹介状なら書いてやろう」
(神殿?そうか、司祭様であれば治すことができるのか‥‥)
「リディア、もうすぐさ、司祭様の力があれば病気なんか簡単に治せるよ」
疲労のためか、瞼を閉ざしている彼女からは返事が無い。
しかしこの時の私は、世間という物を、神殿という物の実体を知らなかった。
医者の診察が終わってから数日後、リディアの看病を周りにまかせた私は、単身オランの街へと旅立つことにした。
道中何事もなくオランの街についた私は、紹介状にある神殿を探し司祭に面会することができた。
「ラスター先生の紹介ですか‥‥‥事情は解りました。」
司祭様が紹介状を読む間、私の胸は期待感でいっぱいであった。
(これで、リディアの病を治すことが出来る‥‥‥やっと彼女と結婚出来る‥‥‥)
しかし司祭の返事は私の期待に背く物であった。
「そうですな、病気を癒すという事であれば‥‥‥6800ガメル‥‥‥いや、確実に癒したいのであれば12100ガメルを我が教団に寄進して頂く必要がありますが、よろしいですかな?」
(6800ガメル‥‥‥そんな金が何処にある?)
しかも、確実に治すのであれば10000ガメル以上の金がかかるという。私の財産では、とうてい払える額ではない。
「もう少し何とかなりませんか?」
あまりの金額に、失礼と思いながらもつい言葉がでてしまう。
「当神殿では、これが最低の寄進額になります」
(これで最低の額なのか‥‥‥)
私の落胆した顔を見たのか、司祭はさらに言葉を続けた。
「ラスター先生の紹介という事で、これでも正規の額より少なくしているのです。他の神殿に行けばもっと掛かりますよ・・・・」
もし頼むことがあれば、そのときはと丁重に礼を述べ、私は神殿を後にした。
彼女の容体は日増しに悪くなるばかり。お金の工面もつかず、このままでは彼女の命が危ない。
絶望に駆られた時、風の便りに一攫千金の話が耳に入った。
戦争。それも自国の領土内での内戦。・・・・危険は多い。しかし他に高額な金額を手にする手段はない。・・・・幸い腕に覚えはある。
必ず生きて戻る。・・・・彼女の病気を癒すために、そして彼女と結婚するために。
<つづく>・・・のか?
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