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No. 00145
DATE: 1999/04/02 03:38:35
NAME: コロム
SUBJECT: 噂話
とある酒場での話である。
「おい、知っているか。フォーマ卿を殺した奴が・・・」
「捕まったってか。知ってるよ。」
ぶっきらぼうにそう男は答えると、コップの中身をいっきに飲み干す。
「大逃走をしたあげく捕まる・・・う〜ん。悪人はこうあるべきだな。」
顔を真っ赤にした男が、自分の言葉に酔いしれる。
代わりをついでもらったもう一人が
「だが、やつは暗黒神の信者だと自分から言っているらしいぜ。」
「じゃあ、フォーマ卿を殺した理由ってのは・・・」
「この街を混乱させ、それに乗じてなんかしようって魂胆だったんじゃねえか。」
さらっと言いのける男に、顔の赤みが引けた男があぜんとする。
「でもまあ・・・捕まったんだよな。」
そう言いながら、ツマミに手を伸ばす。
「そうだな。この間来た時、捕まえた奴がでかい声で自慢していたぞ。『オレがあいつを捕まえたんだ!!』ってな。」
「あー。オレが聞いたところじゃ、捕まえたのは女だったって事だぜ。」
2人顔をあわせる。
しばらくしたあと、顔の赤みが引けた男がポツリと言う。
「・・・・飲むか。」
このあと2人の話は、愚痴へとかわる。
とある裏道での話である。
「おい・・・聞いたか。」
「なんだよ、うるせーな。」
声をかけてきた背の低い男を怒鳴りつけると、片手で他の連中を追い払う。
「・・・で、なんだよ。」
「ああ。さっき酒場で得てきた情報なんだか」
急に音量を押さえて
「この街の中に化け物がいるらしい。」
「なんだと!!」
「しぃっ!声がでかい。」
一瞬うろたえたあと、辺りを見回し、自分達以外に誰もいない事を確認する。
「・・・間違いないのか。」
声を押さえて聞き返す。
「いや、まだうわさだけだ。だが、女の姿をした化け物らしい。」
「女か・・・・」
口元に片手をあてて考える。どうやらこの男の癖らしい。
「あんた、かなり女に手が早いって話じゃないか。せいぜ」
いきなり片手で首を締められ言葉が詰まる。
「よけいな事を言ってるんじゃねぇ。」
低く押さえてはいるが、怒気が含まれているのがわかる。
いきなり開放されてゲホゲホとむせる男。
「お前はその話が本当かどうか探れ。おれは今からギルドに報告をしに行く。いいか、何かわかったらすぐオレの所に来い。」
そう言うと、その男は立ち上がり昼間でも暗いその道へと姿を消す。
取り残された背の低い男は、しばらく首元を押さえていたが立ち上がると、にぎやかな店の並ぶ明るい道へと進む。
「アイツの手柄にされてたまるか・・・」
その言葉がその場に残る。
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