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No. 00150
DATE: 1999/04/18 00:00:12
NAME: コロム
SUBJECT: もう一つの噂
「よいしょっと・・・見かけによらず、重い子だなぁ。」
下の酒場で酔いつぶれたコロム・・・という少女を、片方のベッドに寝かせる。
「ふ〜う。」
もう片方のベッドに腰をかけ、ため息をつき少女を眺める。
『とんでもないのにひっかかったのか?俺は。』
ちょっと前まで酒場で飲んでいた俺に声をかけてきた。
話に付き合って・・・とかの声ではなく、一緒に寝ないかという商売の話である。
無論、きっぱりと断わった。
しかし彼女の誘いは何度か続き、俺は彼女を酔い潰す事にした。
作戦は見事に・・・・・・・・・・失敗。
酔いつぶれる直前に彼女がこういったからである。
「責任とってくださいね。」
しかも手をぎゅぅぅぅううっと、握って・・・・
何で俺なんだよぉ!ちかくに男ならたくさんいただろうが!
あ。その中で俺が一番いい男そうに見えたとか。(ご都合解釈)
俺、最近なんか悪い事したかなぁ。
「こうして見ると普通の女の子なんだが・・・一体何を考えているんだろうか。」
横のベッドでクークー寝息を立てているコロムを横目で見る。
・・・そりゃ、女なんだよなぁ。胸はまあまあだし、腰も・・・なかなか。
でも、子供はなぁ。
「って、俺には関係無いじゃあないか。」
そう自分に言い聞かせると立ち上がる。
「取りあえず用(トイレ)をすませてから寝るとするか。」
部屋の扉を音が立たないよう、締めて出る。
と・・・・なんだか音がする。
下か。酒場で騒いでいるのか?
なんだか嫌な予感もするし、因縁付けられて巻き込まれたくもないし、寝るとするか。
扉を閉めて一息ついた時、おかしな音に気がつく。よく聞くとうめき声のよう。
コロムがうなされているのにハッと気づき、慌てて両肩をつかみ声をかけながら大きく揺らす。
「おい、起きろ!おい!」
彼女は目を開けたかと思うと、次の瞬間には俺に抱き着いていた。
・・・・・(思考停止中)・・・・・・・
なんとか気を持ち直し彼女に声をかけようとした。
その時気づく。
彼女が微かに震えている事。そして声を殺しながら泣いている事に。
うつむき加減のため表情はよくわからないが、泣いている事にはかわりがない。
きっと、何か怖い夢でも見たんだろう。
優しく包み込むように抱きしめ、頭をなでる。
だんだんと震えが収まってくるのが分かる。すると、震えるような声で
「・・・ごめんなさい。しばらくこのまま・・・」
時間だけが過ぎる。
少しずつ彼女も落ち着いてきたのだろう。
いきなり、彼女のからだが離れる。
「大丈夫か?」
沈黙に耐えきれずに言葉をかけ、彼女はコクンとうなずきそして。
「ごめんなさい。」
「謝らなくてもいい。もう大丈夫。」
彼女のいる方のベッドから、空いているもう一つのベッドに移ろうと立ち上がった時、右手が引っ張られた。
「あ、あの。」
俺の右手をしっかりとにぎりしめたまま彼女が言う。
「お願い、そばにいて・・・」
しかたないか。
彼女のベッドの横に腰掛けると、笑顔で掴んでいる彼女の手の上に自分の手を乗せる。
すると彼女も安心したように笑うと、目を閉じた。
しばらくして彼女が寝たのを確認すると、そっと放した左手を使い横のベッドから毛布を引き寄せる。
起きないように注意しながら、俺はベッドの下に腰掛けた。
もちろん、右手は彼女がしっかりにぎっている。
引き寄せた毛布を左手で自分にかける。
空いたベッドを眺めながら、右手のぬくもりを感じながら俺は、眠気に身を任せた。
ふと、目が覚めた。
するとそこには、青い目をした少女がこちらをじっと見ていた・・・・って。
内心、驚きつつも
「おはよう。気分はどうだい?」
「ええ。おかげさまで。」
にこにことした表情で彼女が。
「で。これからどうするの?」
毛布をベッドの上に戻し、窓の外を見ようとしていた俺にそう声をかけた。
「昨日言ったとおり、今日はいそがしいからな。」
「また会える?」
少し間を置いて返事を返す。
「さあな。」
「ねぇ。」
荷物をごそごそやっている俺に彼女が後ろから声をかける。
「今度会えたら、運命と思っていい?」
ピタッと手を止める。が、すぐに動き出し
「そうを言ったのは、俺で何人目だ?」
「さあな♪」
しばらくの間の後、2人の笑い声が部屋にひびいた。
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