No. 00154
DATE: 1999/04/24 01:03:50
NAME: アトゥム・O・レクイエム
SUBJECT: 例えば金属のうちあうような
例えば金属のうちあうような
リュート片手に家を出て、道端で曲を演奏して銭を得つつ自らの技術を学ぶ。そうやって生活して行こうと思っていた。
数週間が過ぎたある日、気がついた事があった。
楽器が奏でる音が、声に完全に負けている。
普通の吟遊詩人達は、歌の『詩』が主役だ。それで構わない。
しかし俺の歌は、決して『詩』だけが主役ではない。
それに気づいた時から、俺は『俺の楽器』を探し始めた。
普通の木からいろいろな材質を用いて、リュートのような楽器を作り始めた。
樫の木やトネリコから、竹、果ては動物の骨まで。
そうして模索しながら、その資金稼ぎに護衛の仕事等をやった。
そんな時だった。俺は望んでいた音に出会った。
それは戦場で
俺の耳に飛び込んできた。
剣と剣のぶつかり合う音。重く響く金属音。これが俺の求める音だった。
俺は金属の加工に詳しいドワーフを尋ね、自らの目的を話した。
それから、ドワーフと俺は楽器の作成に取りかかった。
そして、長い月日をかけ、それは完成した。
低く響く金属音。
俺が求めていた音
例えば金属のうちあうような・・・そんな音