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No. 00161
DATE: 1999/05/03 07:07:46
NAME: ラザラス
SUBJECT: 家督争い(9)−トロール退治−
登場PC:エメラルド、セイル、ナギ、アイオリラロス
他NPC
トロール退治に回った傭兵隊は今ひとつ統率力にかけた。
リーン領から遣わされた騎士が報酬のことや、働き方の味方など手際よく説明したこともあり、思いの外うまくいきそうであった。
「にしても変よね。この辺りじゃトロールなんて見かけないって話なのに、どこからやってきたのかしら」
情報集め走り回っていたエメラルドが漏らす。
「こんなでかい山だぜ。見かけられないこともあるさ」
セイルが背負っている剣の具合を確認しながら答える。
「どうでもいいでしょ。トロールを倒して早く戻ってもうひと仕事あるんだから。もっと早く片づけられると思ったのに……」
白子(アルビノ)の肌を持つエルフで魔術師のナギが素っ気なく答える。
三人の女性は傭兵たちと共に、指定の位置につく。
トロールの体長は3メートル近くもあるため、坑道の広い部分にいられない。そのため、ドワーフが一人通れる程度の坑道ならいくつもあり、奥に行くことも可能であった。ドワーフたちは空気の通り道を作り、坑道内に煙が充満しやすいように穴を開けたり塞いだりした。
作戦としては煙で坑道を燻し上げ、坑道から出すこと。
坑道の出口で落とし穴を掘り、上に仕掛けておいた岩を落とす。クロス・ボウでの一斉射撃ののち、槍の投擲。選ばれた傭兵6名により近接戦闘でトドメを刺す。
この通りに行くかどうか、落石の罠がどこまで効果があるか、クロス・ボウが効くとは思えなかったが、どれもないよりマシということで付け加えられたものであった。
それに、一定時間ごとに傭兵はすぐに交替して、元気な者が立ち向かうこととなっていた。傭兵はその短い時間のみ全力で戦えば良いわけだ。ドワーフの戦士達も加えれば、エンドレス戦力と謡える程であった。
作戦が発動される前に行われた落とし穴作業は困難を極めた。作業はもっぱら昼間に行われたが、トロールが静観してくれるわけもなく幾度となく中断された。
しかし、これは暗視能力があることに気がつくと、唯一いた魔法使いのナギがダークネスの魔法で入り口を闇に閉ざしてしまってからは外の様子が判らないせいか順調に進められた。
落とし穴の深さは1メートル半ほど、3メートルの巨体には足止めにしかならないが、這い上がれないような落とし穴など掘る方が困難であった。これは落石の命中精度を上げるための補佐的なものであった。
この穴掘りに時間がかかっため、傭兵募集の話を聞きつけ人数はさらに増えた。といってもエンドレス部隊の後列に回され出番があるかどうかも判らない位置なのだが。
もちろん後列参加の者の方が報酬が低いというシステムだ。
傭兵以外にも投擲の槍やパイクが届けられる。
「へへ、ここの鉱山の利権も得られるといいんだが。そうはいかんか。ま、ここの領も問題抱えているようだからな。武器をまた仕入れてこないとな」
アイオリラロスは空になった馬車に乗り込み、荷下ろしのみで来た道を引き返していった。彼にはこれからラドモス卿と利権の話を他の商人たちと交えて取り交わさなければならなかった。
「おお、忙しいぜ」
かくして、お膳立ては整い傭兵隊の位置もついた。
あとは合図を待つばかりであった。
つづく
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