 |
No. 00181
DATE: 1999/05/18 03:17:49
NAME: ミルディン
SUBJECT: 家出娘をめぐる攻防!
店から一人の男が出てくる。男の名前はミルディン。しがない探偵だ。一つ仕事を受けているのだがその情報を探っていた所だ。(EP怪しげな依頼と親殺し参照)
「ちっ。さすがにガードが固いな・・・揺さぶりをかけるかチュチュ、行ってきてくれ。適当に走り回ったら出てきていいぞ」こいつを見れば使い魔と思ってぼろを出すかも、と思ったらしい。
しばらくした後・・・使い魔らしきものをみて驚いたのだろう。カレンが店の外に出てきた。カレンは、しばらく店の周りを探した後店の中に戻っていった。
「なにも、地上だけに居るとは限らないんだよ。これが」ミルディンは少し勝ち誇ったかのように言った。彼は空に浮いていた。
−魔術師−かつて栄えた王国の力を使う者達のことだ。そして、ミルディンはこの力のうちの一つ<浮遊>の呪文を使って店の屋根に隠れたのだ。
しばらくした後、ミルディンは急に悪感を感じてあたりを見回した「この感じは・・・アンデットか?奴が来たのか?」
自問してみるが答えは出ない。とりあえず地面に降り立つ。見ると、宿の窓から少し透き通った者がいる。「今の感じはアイツか。ビックリさせるな・・・」ドアを見ると、すぐ近くに探していた人物が出口の近くに立っている。家出娘なら説得するのにも時間がかかるだろう、そう読んだミルディンは一気に行動に出ることにした。まず、どこかに連れ去ってからじっくり説得する。しっかり話せば分かってくれるだろう、これがミルディンの考えだった。まず、幽霊に気をとられている店内に侵入した。カタン!・・・しまった!物音を立ててしまった。「カイ!こっちに来い!」ラスが叫んだ。しかし、この距離では遅すぎた。「え・・・あうっ・・・!」呆気に取られているカイに当て身をくらわす。ぐったりしたカイをかかえ、ミルディンは捨てぜりふを残して店内から飛び出た。早く逃げたいと思う心はあったが、いくら女の子とはいえ、進む速度が落ちるのはやむをえない。「ミルディン!待ちやがれっ!」後ろからラスの声が聞こえてくる。そのとき、ぞくりとする悪感がミルディンの全身を走り抜けた。「あいつが・・・きたか・・・」もうこうなれば、ちょっと足を止めるなどと余裕のある事は言っていられない。しかたなく、ミルディンは<ライトニング>を唱えはじめた。ラスの魔法は精神を集中していたおかげで免れたらしい。
と、いってもそれはミルディンの方も同じだった。放った<ライトニング>は抵抗され、怪我を負いながらもまだ追ってきている。
−そして、「それ」が来た−
エンヴィリア=マスカレード。気ままに亭ではそう名乗っている。本名かどうかは解らないが・・・ミルディンは、この者の正体を掴んでいるようだ。
さきほどの幽霊とは格が違う、ほとんどアンデットの王といっても過言でない「モノ」・・・ヴァンパイア。それが、逃げようとするミルディンの前に立ちふさがった。
「言ったはずだな・・・その娘に手を出したら殺すと・・・」
後ろからは、怒りに燃えた精霊使い。前からはヴァンパイア。まさに<前方の虎、後門の狼>だ。こうなったら、手は一つしかない。迷わずミルディンはそれを実行した。
エンヴィリアを挑発しながら路地に飛び込む。あらかじめ考えておいた手だ。思ったとおりエンヴィリアは路地裏に入ってきた。しかも、飛びながらだ。
後ろのラスは、かなり面食らった様子だがそのままついてくる。かまわず全力でダッシュし続ける。
(もう少し・・・もう少しだ)そう、思っていると左手に激痛が走る。顔を顰めながら見ると、左腕から盛大に血が流れ出している。<ウーンズ>だろう。暗黒神の司祭が使う魔法の一種で、相手を切り裂く効果がある。
かなりのダメージだ。もう一発来たら耐えられないだろう。
(見えた!)やっと、目的地に着いたのだ。脇にある縄を切る。ここに来る前に仕掛けておいた罠だ。縄を切ると、通りの脇の箱からネズミや鳩が飛び出してくる。あわてて、霧となってかわすエンヴィリア。しかし、ミルディンが待っていたのはその瞬間だった。
霧と化したエンヴィリアに呆気に取られたラスに<眠りの雲>を浴びせる。
集中力が途切れていたラスは、完全に眠りに落ちた。
「貴様・・・!」
エンヴィリアの憎悪のこもった声が聞こえる。ラスにした事からではないだろう。いま、ミルディンのいる場所・・・それに気づいたのだ。
ここは、衛視隊の詰め所。こんな所で、ヴァンパイアだと分かるような事をしたら、オラン全体とことを構えることになる。いくらなんでも、そんな事にはしたくないだろう。
口先三寸による交渉が始まった。そして、エンヴィリアの撃退に成功しそうになったとき・・・エレミアに残しておいた自分の使い魔が飛んできた。
伝書鳩としても使ってある。そして、手紙を取ると中をざっと見る。
思った通りのことが書かれてあった。こういう裏があるのなら、もうこんな仕事をやる義理はない。
大方のあらましをエンヴィリアに説明した後、2人を気ままに亭に連れていってもらうように頼んだ。それを承知したエンヴィリアは2人を運びながら去っていった。
完全に姿が見えなくなってから身体の緊張をぬく。冷や汗が後から後からでてくる。突き抜けるような左手の痛みの中、ミルディンは自分が生きているということをようやく実感していた・・・
 |