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No. 00189
DATE: 1999/05/30 02:47:10
NAME: ラーニー・アダルシア
SUBJECT: 信仰・光の神々
「自然に生きる,・・・ね。」
夜、就寝時刻をすぎた後で、ひとり祭壇で祈る私。
暗闇の中で白い司祭衣と黒髪が窓から差し込む月の輝きに照らされて、
ぼんやりとした光を受けとめていた。
跪いた姿勢のまま,この前酒場で言われた言葉を思い出した私は。
最近の若い信者達のことを考えていた・・・。
近頃、神殿に礼拝に来る信者の中で,
おかしな誤解をしているひとが増えているのに気付いた。
・・・確かに,マーファ神殿ではよく「自然」と言う言葉を口にする。
けれど、それは,ひと本来の性質。と言う意味ではない。
大地母神の名が示すとおり,「自然」とは人間を含む,
天と地の間に存在する万物の理を示すのだ。
そして、創造と、慈愛の心は人の繁栄を願い。
それゆえに存在を脅かすもの以外との争いを禁じ、
夫婦となり,子を産み育てることを守護しているのだ。
それを、自分たちの思いに正直に生きるのが人としての自然の姿。
そう、思っている人がいる。
確かにそれが正しいこともある。
けれど,みながみなそれをやっていたのでは人はいつか滅びてしまう。
この世界は人だけが生きているのではない。
自分や自分たちだけの為に生きていけば。
きっと,あの空に街を浮かべた古代の魔術師のように。
滅びてしまうだろう。
ひとは,大地を離れてはいけないのだ。
「奇跡」。
そう、奇跡を求めて来るものも多い。
神々から授かる魔法の力。
どの神殿でもそうらしい。
信仰と奇跡とは違うものだというのに・・・。
マーファは,他人を許し,自然と共に生きること。
ファリスは、秩序をもって人を制すること。
ラーダは,困難を切り抜ける知恵を持つこと。
マイリーは,自分の心に打ち克つこと。
チャ・ザは,常に他者との交流を目指すこと。
いずれも共通しているのは,
これらをもって,無駄な争いを避け。
健やかで光り輝く人の未来を目指していること。
「信仰」とは,それぞれが自分のできる範囲の中で。
この理想に向かって生きることを言う。
そこに決して上下はなく。
司祭であろうとも,奇跡が使えようとも変わらない。
本来、神への思いは。
「信仰」と共にあるべきなのだが・・・。
「奇跡」を使えるものは,
確かに神への思いが強いのかも知れない。
けれど,それは使えないものの思いが弱いと言うことでは,
ないのだ。
「奇跡」を起こせるものは神に選ばれた理由があるのだ。
例えるなら,その力でいつか救わねばならない人がいるとかの。
それが,力を授けてくれた神の定めし運命というものだとおもう。
きっと明るい未来の為の力なのだから。
そう、思ったとき。
急患が入ったらしく,急にあたりが騒がしくなる。
「ラーニー司祭、お願いします」
若い女神官が走り込んで来た。
やれやれ、夜更かしなんかするんじゃなかったわ・・・。
と一瞬考えつつ,慈愛の女神に仕える司祭の考えじゃないわね。
と訂正する。
他人のことはいえないわね、と。
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