No. 00025
DATE: 1999/06/29 03:10:04
NAME: ファズ
SUBJECT: ・・・噂、そして真実・・・!?
(カラン)
その酒場に入るとやかましいほどの喧噪が耳を打ちつけてきた。賭け事をする男女。情を交わした女の数を競い合ってる男達。壁にもたれかかり、声を掛けてくる男を待っている娼婦。きままに亭よりいくらか柄の悪い店は賑わいがピークに達していた。まだ、夕方だというのに、店は妙に薄暗く、独特の雰囲気があった。オレはいつもの席に座ると店員に軽い食事を頼んだ。ならず者のような男が大勢はいるせいか、味はお世辞にも良いとは言えないものだが、その安さと量が凄かった。ファズはそれが気に入っていた。
「・・・俺、この前に聞いた話の真相を調べあげたぜ。これは盗賊ギルドに繋がリがある奴から仕入れた情報だから信憑性は100%だ・・・」
何故か分からないが、ここの店に来ると決まって2人組の男が決まって隣のテーブルで噂話をしている。彼等の職業は何なのかと、いつもながらに疑問に思った。
「こんどは何を聞いたんですかぁ?最近、兄貴の噂話って当たってた奴ないっすからねぇ・・・」
ゴン!
かなり痛かったのだろう。片方の男が殴られた頭を押さえて呻いていた。兄貴と呼ばれた男は痛がっている弟分を気にも止めずに話し続けた。
「・・・きままに亭の事だが・・・ありゃ、危ない店だって話を聞いちまったんだ・・・」
「はぁ!?」
「いや、実はな・・・あの店には「変態色情男色魔術師」なる者と「無差別痴漢少年」という奴が中心となって他にも、「男男」、「無表情の魅力的な超美少女」とか訳の分からん連中がたむろしてるらしい」
(な・・・!、こんな所にまで・・・)
「え〜と、最初の2つはどういう物か分かるんすけど、「男男」ってのはなんすか?それから「無表情の魅力的な超美少女」ってのは別に変っつう事ないと思うんすけど?むしろ、会ってみたいんすけど・・・?」
弟分はよく分かっていないという顔で答えた。
「まぁ、親の話と俺様の話は最後まで聞きなさいと言うだろ?黙って聞けって」
兄貴分は得意げな表情で説明に入る。この時点で「無差別痴漢少年」とやらはファズ・フォビュート事、オレであるというのは分かっていたが、他の噂がどんな広がり方をしているかが気になりそのまま話を聞く事にした。あとで、オレの噂だけ消せばいい事だ。
「まずはその「無表情の魅力的な超美少女」って奴からだ。こいつはその呼び名の通りが外見はまぎれもねぇ美少女だ。・・・実際にもうすでにファンクラブ会員数が4桁を越えたって話だ」
(・・・ケルツ・・・・・・お前にファンクラブが出来たぞ(爆笑))
心の中だけで爆笑を耐えるのはかなり辛い。まさに己の限界への挑戦ともいうべき試練だ(笑)
「へぇ!俺も会ってみたいもんすねぇ。その「無表情の魅力的な超美少女」ってお方に♪」
「・・・ところがだ。これには深い事情があったんだ。じつはその娘は男だって話だ」
「・・・嘘?」
「紛れもなく男だそうだ。ちゃんと物がついてたって情報だ」
(ケルツ・・・お前、風呂でも覗かれたか?(爆笑))
「ぷぷ〜〜!」
耐えきれず口から笑い声が溢れ出した。が、隣の2人には聞こえなかったらしく、噂話は続いていた。
「まー、男でもいいって会員だけでも2桁はいるらしいけどな」
兄貴分は苦笑を口に浮かべた。おそらくこいつもケルツに幻想を抱いていた口なんだろう。
「次は「男男」だな。こいつは簡単だ。普通、男に見える女性に蔑称として「男女」とか言うのは知ってるよな?こいつはどこからどう見ても男そのものだそうだ。真実の所は女だとも言うが、それを信じている者と信じていないものが半々ってとこだ。何しろ実際に俺も見てきたけど区別がつかなかったしよ・・・」
(アレク・・・お前、将来に結婚出来なねーかもな・・・それにしてもオレには一応、女に見えたんだけどな・・・)
「そいつはパス」
弟分は「男男」には興味がないようだった。
「で、ここからが凄いんだぜ。そうだな、次は「無差別痴漢少年」だな。こいつは凄ぇんだ!何しろ、出会った女は片っ端から変質行為されてるし、犠牲者の中には男もいたらしぜ」
(やっぱ、そーゆーネタかい・・・)
「気色悪い奴だな。そいつ・・・」
「たしかにな・・・だが、こいつの恐いところはそんな事をしていて一度も捕まってないって事だ。あと、恋人がいるらしい」
「な、なにぃ!?」
(な、なんで恋人がいる事まで噂になってんだ??)
「ゆ、ゆるせねぇ!!俺はこんなにも誠実に生きてるのによぉ!!どこぞの変態に恋人がいるなんて世の中間違ってるっす!!」
(おい、言い過ぎだと思うが・・・?)
「しかも結構、美人だそうだぜ。変態に騙されでもしたんだろうけどよ」
(・・・変態、変態って人の事を・・・)
「でもまぁ、その恋人には胸がないって話だぜ。実際は男かもなぁ(笑)」
(てめぇーら、あいつの事まで悪く言いやがったな・・・我慢にも限度があるわい!)
椅子から立ち上がり、文句を言おうとするオレに次の噂話が聞こえてきた
「でも、「変態色情魔術師」ってのはもっと酷いらしーぜ?なんと、酒場の真ん中でハーフエルフの男を抱いちまったって話だ」
(レド・・・いよいよお前は本物の変態あつかいだな・・・)
ファズが振り上げた拳は止まり、もう少し話を聞く事にした。
「な、なんすか?そいつは!?」
「いや、泣叫び、身体を震わせて嫌がるハーフエルフの男を抱いたんだ・・・もちろん、客が大勢いる前でな」
(嘘ってわけじゃねーけど、少し違うよーな気が・・・(笑))
「それだけじゃねー。さっき言った「無表情の魅力的な超美少女」が男と分かっていながらキスをしたりもしたんだってよ」
「恐いっすねぇ・・・俺、あの店に行くの止めようかな」
「あぁ、マジで貞操が危険だからな・・・」
そんな事を真面目に話し合っている2人を見て笑いが堪えられなくなりオレは笑いながら店を飛び出した。
一方、残された2人組は・・・
「あれ・・・ルフィスっすよね・・・」
「いや、あいつはルフィスの兄貴のファズって奴らしい。あいつ、もしかして変態色情魔術師に犯されたのか?」
2人はファズが消えた扉を深い同情の念で見つめた。のちに、レドがファズを襲ったと言う噂が広まった事は言うまでもない・・・
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