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No. 00029
DATE: 1999/07/15 03:34:42
NAME: ウェン&ケイド
SUBJECT: 雨の降った日
潮風が少し流れ始めた・・・もう、海に近いのだろうか。
オランから南西に半日,街道を外れ,
ハザード河の分流沿いにある村に向かっていた。
水際に茂る林の中をぬけるときだった。
急に茂みの中から一匹のゴブリンが飛び出してきた!。
あわてて武器を構える2人。
私は細剣を,相棒は銀製の長槍を構える。
相棒とは初めての仕事だ,構えるのも始めて見る。
・・・まあ、ゴブリンなら勝てそうだが。
続け様に不意を打たれると言う表現もおかしいが。
今度は後ろから矢が飛んできたのだから仕方がない。
予測してなかったのだ・・・不意打ちだろう(笑)。
とっさに矢を払い落とす私。
しかし、ケイドの左腕は避けられなかったらしい・・・。
彼は両手で構えていた長槍を地面に落とし,
呪文の詠唱を始める。
「光の精霊・・・我が友よ・・・」
矢をうったゴブリンは遠いので,彼に任せることにし,
私は目の前のゴブリンを殺すことにした。
(ゴブリンなら二匹や三匹,どうにでもなるな・・・)
しかし、何故,こんな所にゴブリンが・・・。
計五匹のゴブリンを片づけ,その武装の新しさを確認した。
「嫌な予感がする,急ごう,ケイド」
そう言って私は村への足を早めた。
この分なら1時間,いや、2時間は早くつきそうだ。
しかし村に着いたのは,もはや昼を過ぎ,
太陽は中天にさしかかっていた。
「遅かったか・・・」
「のようですね。」
火の手が上がっていた・・・,それもかなり大きく。
生き残った村人に話を聞くと。
どうやらゴブリンの集団に襲われたらしい・・・。
取りあえず,消火活動を手伝い,村人達をおちつかせる。
口々に情報が飛び交う中,一つの情報を手に入れる。
なんとゴブリンを率いていたのは黒い肌の妖精,
そう、ダークエルフだったらしい。
村長宅に欲しい物があったらしく,村長一家は惨殺。
大きな杖を持ち去ったらしい。
その杖は最近村の近くの川底で発見された物で、
それが村に持ち込まれて以来,毎日雨が降っていたという。
「異常気象の原因はそれか・・・」
村長はそれを引き取ってもらうつもりでいたらしいのだが・・・。
「どうする?、ケイド。おそらく雨雲を追えば・・・」
「…ええ、多分。本隊かどうかわからないですけど。
確実に主力に近い部隊と杖はあると思います。
・・・オレらだけでどうにかなるでしょうか・・・」
「なんとかしなきゃ,報酬は貰えないだろうなぁ・・・。
ま、やるだけやってみようと思うんだが?。」
「ま、それは困りものです(苦笑)
それに・・・(村長の家の中の死体を見る。)」
「敵も討ってやらなくちゃな?」(笑)
「ええ、幾ら何でもそうじゃないと
無差別に殺された人達が可哀想です。」
「まったくだ・・・さあ、行こうか。」
再び村を後に歩き出す2人。
今度は先ほどよりも早く,そう、次の犠牲者を出す前に。
それから小一時間ほどたっただろうか。
どうやら雨雲がちかづいてきたらしい,
外套を深くかぶり,さらに進む。
冷たい雨が頬を濡らし,足下にしたたり落ちる。
みえた!,ゴブリンが十数匹,黒い妖精の姿は見えない・・・。
念のため「魔力感知」を唱えておく。
反応があるのは先頭のゴブリンの手に持っている・・・,
杖!、あれか・・・。
「いくぞ!」
「いくって?、あのしゅうだんですか?」
私はニヤっと笑うと細剣に炎の魔法をかける。
剣を包み込む炎が雨に打たれてじゅうじゅうと音をたてる。
ケイドも覚悟を決めたのか応急処置を施した腕の痛みを
こらえながら銀の長槍を構えた・・・。
そこから先の戦闘に着いては語るまい。
血みどろの戦いだっただけだ。
ただ、杖は戦いの最中に折れてしまったことを記しておこう。
ケイドは,いくども倒れかかりながら何匹ものゴブリンを
殴り倒していた。
最初にはなった私の「火球」が負傷を負わせていたとはいえ,だ。
杖をオランへと持ち帰った頃には,日は暮れて暫くたっていた・・・。
魔術師ギルドで300ガメルで買い取って貰った後,
官憲から報奨金が出た,500ガメルだ。
まあ、村からは報酬を貰わなかったが・・・仕方ないだろう。
村の再建の費用もかかるだろうし,請求はしなかった。
3日後。
村から報酬が届いた,それは無事だった畑からのささやかな贈り物だった。
ジャガイモ一樽,ケイドと私は互いの顔を見比べながら,
この報酬の行方を考えていた・・・。
新王国歴511年7の月5の月15の日。
記録者:”失われし王国の民”ウェン
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