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No. 00033
DATE: 1999/07/21 02:31:14
NAME: ミニアス
SUBJECT: 勘違いの終末
オランの門で朝早く待ち合わせして、パダに向う。
私(ミニアス)とランドは、ライカって人とは初対面。だけどハーフのエルフだって話は聞いてなかったよ。
・・・・綺麗だけど。
3日目の昼頃パダにつき、パーティーに足りない癒し手や神官を探してみる。
1人頭が500ガメル。そのため、どこの店でも同じような答えが帰ってきた。
「紹介する方としても、それじゃ話にならん。」
「・・・・そんな奴がこんな所に居ると思うか?いても断わると思うぞ。」
まぁ、予想はしてたけど。
私はその後、依頼者と連絡を取るために皆とは別行動した。
ちなみにパダにある神殿は、どもこ街道で出た盗賊だかでゴタゴタしていた。そのため、話さえも聞いてくれなかった。
その日はパダで泊まり情報を出し合ったが、癒し手も神官も見つからなかった。
おそらく大半の冒険者は街道で出た盗賊を退治に行ったようだ。
探すのをあきらめて明日の朝、依頼を受けた村に行く事にした。
4日目の昼前には村についた。
だが村人の視線が異常な程冷ややかな事に、ライカも違和感を感じたようだ。
村長から話を聞いて、訳が分かった。
この村にちょっかいを出していたゴブリンは、行方不明の冒険者が退治に行ってからは出てこなく、見かけもしなくなったからだ。
村人には、ゴブリンは出てこなくなったからいいのでは・・・・という気持ちが態度に出ていたようだ。
だがここの村長は心配性らしく
「ガメツイはずの冒険者が、依頼を果たしたのにお金を取りに来ないのはおかしい。もしかするとゴブリンの数が減って出てこなくなっただけではないのか。」
それで、パダまで使いを走らせて冒険者を募ったようだ。
・・・ガメツイと言われて苦笑いしているのは私だけではない。
みんな似たような表情をしている。
そんな事、お構い無しに村長は話を進める。
場所はここから少し離れた崖の近く。そこにある洞窟に住み着いているのだと言う。洞窟はつい最近まで貯蔵庫として使われていたため、出入口は一つである事も言った。
すぐ行って欲しいような事を言っていたが、今から行って帰る頃には日が暮れるやも知れないというシタールの慎重論に賛成して、その日は村長の家で休む事にした。
「泊まるなら金を取るぞ。」
そう言った村長に頭来て、ライカと一緒に言葉で責め立てる。
なんとかタダで泊まる事は出来たが、シタールとランドが馬小屋で寝るはめになった。
いまにみてろ、けち村長。
5日目の朝。
近くまでと言う事で、村人が案内してくれた。
村から1時間程離れた所に崖はあった。ここから東にいけば、洞窟があるからと言って村人は帰っていった。
まぁ、ついて来て監視するなんて言われた日には、張り倒して置いていくつもりだったけど。
しばらく歩くと、その洞窟はあった。
「・・・・」
言葉が出なかったのは、ゴブリンが洞窟の入り口にいたからではない。
山があるのだ。
洞窟から少し離れた所に白い山があるのだ。
不信に思い、遠回りして近付いてみる。
「・・・骨?」
何の骨だかわからないので、少し探ってみると・・・一部が欠けてはいるものの明らかに他とは違う骨が出てきた。
自分でも悲鳴を上げなかったのが不思議だった。
「頭の骨・・・だよな、それ。」
「ええ・・・しかも人の・・・」
シタールとランドにもそれが何なのか分かった。
血の気が引くのが自分でもはっきりと感じ取れた。そして、慌てたように骨の山を漁り出す自分。
「お、おい。」
びっくりしたシタールが止めに入ろうとして来る。
「6人なんだよ、6人。」
「え?」
ライカが不思議そうに聞き返す。
「ここで行方不明になった冒険者は6人いたんだ。だから・・・だから・・・」
顔を見合わせるライカとシタール。
ランドは無言のまま、私と同じように探し出す。
しばらくして。
なんとか5人分の頭蓋骨を探し出す事が出来た。
それ以外は、他の骨と見分けがつかず諦めると、少し離れた所に穴を掘り埋める。
短く祈ると、立ち上がりため息をつく。
「ひとり分足りなかったな。」
シタールがぼそっという。ランドもそれにうなずく。
「生きているとしたら村に行っているはずなのに、来てはいない。」
「あの中にいる・・・?」
ライカの推測を聞いて、私は思わずつぶやく。
「でも、ゴブリンの見張りがいませんでしたね。」
ランドのつぶやき。
「それは俺も気になっている所だ。」
「つい最近雨が降ったみたいで、足跡もなかったわ。」
骨の山を調べていた時、ライカが洞窟入り口周辺をよく見ていたのを思い出す。
誰とも無くあの洞窟に向かって歩き出す。
「さっきの骨の山を調べていたので、中に居る相手にこちらを知らせてしまったかも・・・ごめん。軽率だったよ。」
「その時はその時さ。」
私の言葉を一言でかたずけるシタール。
シタールのこういうとこが、すごいと思うのは私だけだろうか。
「ところでどうする?」
ランドがライカに声をかける。
「どうするって言われても・・・」
流し目をしてシタールにすがる。
「まぁ、それはだな・・・」
その視線が空を一度見てから私に向う。
「それは・・・」
私の目の先には、ランドがいる。
「へっ?」
視線に気づいたランドが驚くが、すでに遅い。
「そうね。こういう時は一番最初に気づいた人に決めてもらいましょう。」
ライカが落ち着いた声でそう言うと、私もうなずきながら。
「そうだね。リーダーに・・・」
「オレ?」
自分を指差すシタール。
「いや、僕が・・・」
言ってハッとなるランド。
うかつな発言と勘違いに、心の中で「しまったー!!!」と、めいっぱい叫ぶシタール。
昨日の村長が『洞窟の入り口は一つ』と言っていたのを思い出したランド。
沈黙。
「どうするって言っても、裏口はないから正面から行くしかないんだよね。」
私が沈黙を破って言うと、今度はランドがこう言った。
「それじゃあ、僕が姿を消して中に入って様子を見てこようか?」
しばらく考えたあと、私はランドに聞いた。
「足音立てないで歩けるの?」
ランドがいうには、風の精霊の力で2、3分間は音を立てる事無く歩けるそうだ。
「それでも待ち伏せられたら、意味ねぇだろ。」
「それに奴等は鼻の方が効くしね。」
シタールとライカの言葉で、全員で乗り込む事に決まった。
洞窟までもうちょっと。
ミニアスとランドは前を歩いている。
2人から少し距離をおくと、ライカは笑いながらシタールに話し掛けた。
「ミニアスをくどかないの?」
聞かれた瞬間、シタールの動きが止まる。
だがそれは一瞬で、また何事も無かったように動きはじめる。しばらくしてからシタールは声を低くして言った。
「・・・アイツは対人恐怖症なんだよ。」
「え?」
不思議そうに聞き返すライカ。
「話をしているだけならなんともないが、身体のどこかに触れられるのを極端に嫌っている。」
会ったとき握手をしたランドと、それを見てもしなかったミニアス。不思議に思いはしたが、ライカもその時はそれで済んでいた事だった。
「一度頭をなでたら、手を振り払われて怒鳴られたからな。」
苦笑いしながら言うシタールに、ライカは少し考えてから聞いてみる。
「それ、口説いていたんからじゃないの?」
キョトンとした顔のシタール。だが、意味がわかったらしく慌ててライカにこう言った。
「ちょって待て!そういう事してたんじゃないぞ!それに俺が好きなのは、お前だけだぞ!」
「大きな声でそういう事言わないで!」
真っ赤な顔のライカ。
まぁ、ライカの方が大きな声を出していた事は置いといて。
洞窟まで戻って来る頃には日がかなり高くなっていた。
洞窟の入り口に向かって、ゆっくりと歩く。
するとランドが突然身構えた。
「いる。」
その言葉の意味はすぐ理解できた。
牛の頭をした巨大な人の形をしたモンスターが、突然洞窟から飛び出して来たのである。
ランドがすぐにウィル・オー・ウィスプを呼び出し、出てきたモンスターにぶつける。
ウィル・オー・ウィスプが命中し爆発すると、モンスターは辺りの空気を震わす程の咆哮をあげる。
「ミノタウルスです。とんでもない怪力の持ち主だから、気をつけて!」
そう叫びつつ後ろに下がるライカ。
ミノタウルスがシタールに向かって走り、持っていた幅のある大きな剣(ダンビラ)を振り下ろす。
左手に持つ楯を使いうまく受け流すシタール。
「ぐっ」
その力に押されてか2、3歩下がるが、体勢を整えるとお返しとばかりに右手のバトルアクスを振るう。
当たりはしたが、ミノタウルスの厚い皮膚に阻まれたいしたダメージを与えられなかった。
横から私の振るったハルバードが当る。
かなりの手応え。だが、思った以上にミノタウルスの皮膚は厚い。
間合いをとるために、数歩後ろに下がる。
シタールに向かってライカが叫んだ。
そのすぐあとにランドの声が聞こえた。
すると、地面の中からはじける様にたくさんの小石が飛び出し、すべてミノタウルスに当る。
これはかなりのダメージを与える事が出来たらしく、ミノタウルスがよろめくのがわかった。
そのよろめいた先にいたのは、私だったらしく幅のある剣を振り上げて襲ってきた。
間合いを取り損ね、振り下ろされた剣の切っ先が額から右目をかすめて頬へ抜ける。
「ひぅっ」
思わず片手を傷に当てようと動くが、それよりもくやしさが込み上げしっかりとハルバードを握り直す。
「ちくっしょぉぉぉぉぉ!」
高めに振り上げたハルバードが、急降下して足を払う。
「ブォウ?」
ドスンという重い響きとともに、ミノタウロスは横に倒れる。
倒れたミノタウロスにシタールが燃え上がった剣を突き立てる。
声にならない叫びをあげると、ミノタウロスは動かなくなった。
止めを刺し、ランドとシタールでミノタウロスの首を落とした。
私はライカから応急処置を受ける。
傷は見た目よりも深くはなく、目もかすめただけで何ともない。傷は残るだろうけど、まぁ、覚悟していた事だから。
洞窟にはまだいるかも知れないと言う事から、ランドがウィル・オー・ウィスプを呼び出し向う。
ちなみに私はライカの後ろの最後尾。
前線でもよかったのだが、ランドとシタールがゆるしてはくれなかった。
洞窟は入って少し歩くと、かなり広い場所に出る。
ウィル・オー・ウィスプが先行しているらしく、中の様子がはっきりと照らし出される。
そこには、食い殺されたらしいゴブリンの死骸・・・いや、部品。
一番奥には枯れ草が敷いてあり、その所には金髪の女性・・・!?
みんなを押しのけてその女性に駆け寄る。いやな予感は当り。
「コロム!しっかりしてよ!コロム!!」
慌てて駆け寄るシタールとライカ。
たしかに衰弱してるし、汚れてるし、暗くてはっきりとしないけど、これはコロムだと私は確信していた。
「ミニアス。お前が知っているヤツってのは・・・」
シタールには、私がこの仕事を受けた理由を言ってある。
この仕事を受けた理由・・・コロムと思われる人物がここに行ったきり行方不明だったから。
気付いた以上、確かめないと後味が悪い。そう思って仕事を受けた。心の中ではそうでなければいいと願っていたのだが・・・
「生きているわ。かなり衰弱しているけど。とりあえず、村に戻りましょう。」
「そうだな。」
コロムをマントで包むと、シタールの背中に乗せる。
シタールの持っていたシールドと荷物をライカが持って歩き、ランドと2人でミノタウロスの首を持っていく。
ちなみに、村に着くと村長がミノタウロスの首を見て腰を抜かした。
へーんだ、ざまーみろ。
翌日。
昨夜の交渉で負けた村長が渋い顔して見送ってくれた。
ミノタウロスの首を見てかなりびびっていた事もあり、報酬が1人頭1000と大幅に増えた。
コロムは意識は取り戻したものの、歩けるまでには回復せず。
そのため私とシタールとランドの3人が、オランまで交代しながらおぶっていく事になった。
この村から直接オランへの街道に出る道があったため、パダまで戻る必要がなくなり予定よりも早くオランへと帰る事が出来た。
コロムは、この依頼の言い出し始めである私がしばらく預る事にした。
ちなみにコロムは、道中ずっとカレンという名を呟いていた。
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