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No. 00039
DATE: 1999/07/28 23:30:28
NAME: リッティ&・・・?。
SUBJECT: 罪の行方
「師,師匠,いや、あの、アウグスト師は!
どうして魔術師ギルドに処罰させられることに,
なったんですかっ!。」
真摯な黒い瞳に黒い髪の少年は,二回りも年上の導師に,
食ってかかっていた・・・。
彼の名はリッティ,処罰されることになったアウグストと、
言う元導師の弟子,いや、だった,者だ。
リッティ。
彼は事情を知っていた。しかし。
・・・違うのだ,師匠が去り際口にした理由と。
魔術師達の噂による理由が・・・。
再度,導師に詰め寄ると。
導師はどうやら本当の理由をよく知らないらしい。
まあ、今回の事件で急遽昇格した「新米」導師らしい,
のでしょうがないか・・・。
リッティは頭を下げると,
「解りました,他で聞きます。」
と言って,くるりと後ろを向いた。
あ,っと言う間に階段の方へ向かう少年を見て,導師は呟いた。
「師匠もそうなら,弟子も礼儀知らず,か。」
1年前,講義を受けていたころを思い出し。
苦笑した。良い導師だったのになぁ,レド師・・・,と。
夜。
7の時を過ぎ,日の暮れた頃。
リッティは上級導師に呼び出しを受けた。
真理の塔の10階。
普段は立ち入ることの出来ない部屋だ。
「・・・で、何が聞きたいんだね?。」
そう言った上級導師は思っていたのと違い,随分若かった。
「師の・・・」
一瞬,ここで師と呼んで良いのかと躊躇ったのだが・・・。
「アウグスト師の処罰の理由を教えて下さい!。」
言い切った少年の真っ直ぐな瞳を,暫く無言で見つめ。
若き上級導師は口を開いた。
「魔獣創造の嫌疑,そして調査からの逃亡。」
「そして、彼の調査をしていた導師殺害の嫌疑。」
「最後に魔術書,そう禁断の魔術書を使い,実験した際の,
研究費用の横領疑惑,だな。」
そこで一旦口を閉じる。
「まあ、確定した証拠は無い・・・。
しかし、調査に応じないのだから仕方あるまい。」
リッティは暫く考え,そして慎重に言葉を選ぶ。
「師は,魔獣創造の実験をしていたかも知れません,
しかし、それは飽くまで疑似生命体の実験過程で,
必要と思われた際の別方向からのアプローチに過ぎません。」
「逃亡は・・・別の理由からです。」
「師は,研究途中に幾つかの実験をしました。」
「詳細は言えません,が、それが原因となり,
ある,盗賊の組織から追われることになりました。」
「暗殺者から逃げていたんです・・・。」
リッティは唇を噛み締めた。
「そして,師匠は人を殺してません!。」
「・・・その導師は生きています。」
一瞬,驚きの表情を浮かべる導師。
「じゃあ、彼の・・・行方不明の導師の,
居場所をしっているのかね?,リッティ君。」
「はい・・・,豚,に,変わってはいますが・・・。」
導師は,目を軽く見開く。
「・・・そうか『変化』の呪文か。」
「費用の件は・・・確かに使い込んでいたかも知れません。」
「でも、師匠は研究が出来上がれば,その成果は学院に,
行く,のだから・・・自分で金は払う必要はない,と。」
「魔術書は個人の所有物だから・・・とやかく言われる,
筋合いは無い・・・と。」
しばし,沈黙が流れた・・・。
顎に当てていた手のひらを放すと。
「そうか・・・豚か・・・。」
と,小さく呟く。
「解った、この件はもう一度審議にかけよう。」
「禁断の魔術書の出回ることを恐れてしまうあまり,
少し性急だったかもしれん・・・。」
少したち,リッティは下がって良いと言われたことに気付き,
部屋を出た・・・。
導師は1人呟いていた。
「そうか・・・、豚,ね。」
苦笑しながら,自分で申し開きしないところや、
殺さずに豚になぞ変えるのが,いかにも,
あの偏屈魔術師のやりそうなことだな、と苦笑していた。
新王国歴511年7の月の終。
密かに1人の魔術師の処分は解かれた・・・。
『至急,学院に出頭するように』
と変えられた通告は,未だ当人の目に触れる機会は,
無さそうだった・・・。
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