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No. 00055
DATE: 1999/08/04 00:47:22
NAME: ディック&ボルド&ロビン
SUBJECT: 大海原のの冒険者達
登場人物
ディック:戦士で精霊使い。頼れる男。
ボルド:ロビンの話を聞いて面白がってついてきてくれた。
ロビン:俺。ディックのことをにいさんと呼んで慕う。
かあちゃん:ボルドの奥さん。名前は結局分からなかった。
センチョー:ロビン達に船を出してくれた酔狂な人。海の男。
−−−航海初日−−−
「フッ・・・潮風が目に染みるぜ。」
「何を言ってるのですか?ロビンさん。」
「いや、一度言ってみたかったの、このセリフ。」
「そうですか。」
さらりと流される。流石はディックにいさん。これくらいのことでは動じないらしい。横ではボルドが豪快な笑い声を上げているのに。
その声を聞きながら、俺は目を遥か彼方にもどす。見渡す限りの水平線と潮の香りのする風。俺は再び目を細めた。見上げれば青空。蒼穹をバックに、大きく膨らんだ白い帆は順調な航海を表わしている。
そう、ここは海!カゾフで船を手に入れた俺達は、海賊に襲われたという商船、「海乙女号」を救うべく、その船に乗っているというカレンさんを救うべく、この眼前に広がる大海原を突き進んでいるところなのだ。
「フッ・・・赤い夕日も目に染みるぜ。」
「ロビンさん、それはもういいからこっちを手伝ってください。」
「はい・・・。」
すごすごと船首から離れる。
時刻はもう夕刻時。かあちゃんが作る夕御飯の匂いが、海の香りと混ざって俺の腹を鳴らす。海の上じゃあ燃料が限られてるから、火の通った物はあまり食べれないんだけどね。
「んしょっと。」
樽を使って海水を汲み上げる。それににいさんが精霊魔法をかける。すると、あらフシギ、真水になっちゃった♪うーん、魔法の力は偉大だ。
「ねえ、こういう力仕事はボルドの方がむいてるんじゃないの?」
「あの方は、力がある上に手先が器用ですからね、ロープワークをしてもらってます。」
「あ・・そう・・。」
船室を覗いてみるとセンチョーがピンをいくつも刺した海図とにらめっこしている。
「おう、ロビン。どうだった?航海初日は。」
俺に気づいたセンチョーが人懐っこい笑顔を浮かべながら話し掛けてくる。
「今日は良い風が吹いたからな。だいぶ距離が稼げたぞ。」
そう言ってピンを一つ持ち上げると、海図に刺し込む。どうやらそのピンが俺達の船らしい。
「あと、どれくらいでアノスに着くかな?」
「そうだな・・・・風に聞いてくれ。」
そんな会話を交わしながら、航海第一日目は過ぎていった。
−−−航海二日目−−−
「ゴン!!」
朝、奇妙な音で目が覚める。まるで、鈍器で頭を殴ったような・・・。
ふと横を見ると、フライパンを持ったかあちゃんと、たんこぶをつくったボルドがいた。
「むう・・おはようじゃのぉ。」
いや・・おはようってあんた・・・。
どうやらかあちゃんは俺達のこともフライパンで起こそうとしたらしい。
「ロビンさん・・・。」
振り向くと、脅えた顔をしたにいさんと目が合う。
「(寝坊は許されない・・・。)」
目がそう語っていた。
青い空、白い雲。今日も順風満帆だ。
「そういやあ、ドワーフって泳げないんだよな?」
「うむ、泳げないことないんじゃが、身体の構造上、どうしても沈んでしまうんじゃよ。」
「そんなことでよくついて来たな・・・。って、俺も泳げないからドワーフのことは言えないか。」
「俺も泳げんぞ。」
・・・・センチョー?今なんて・・・?
「・・・。」「・・・。」「・・・。」
三人の視線がディックにいさんに集まる。
「わ、私は泳げますけど・・・・。」
なぜか弱気な声のにいさん。ああ・・・。でも、貴方がついてきてくれて本当に助かった・・・。頼りになるぜ。
−−−航海三日目−−−−
いきなりの無風状態!あぁぁ・・!こうしてる間にもカレンさんが、カレンさんがぁぁ!
「なあ、センチョ〜、なんとかならないのか〜?」
「何度も同じ事を聞くな。なんともならん。今日は晩飯でも釣ってろ。」
ということで、今日はボルドと一緒に釣りに精をだすことにする。
「ほっほっほ!入れ食いじゃなぁ!こりゃあ!」
「・・・・おい、場所かわれ。」
「いやじゃ。おっ!またアタリじゃわい!でかいぞ!これは!」
「・・・・・。」
結局ボルドが20匹以上釣り上げて、俺、ボウズ。
「いやあ、釣りって楽しいのぉ。」
「ロビンさんは魚にもモテないんですね。」
ほっといてくれ、にいさん。
今日の夕飯は豪勢なものになった。いやあ、かあちゃんの料理って美味いよな。
その夜、ボルドの歯ぎしりに起こされる。あれ?ディックにいさんの寝床が空だ。
完全に目が覚めた俺は誘われるように甲板に出た。
満天の星空。
「はぁ・・・・。」
思わず声が出る。
「・・・・眠れないのですか?」
不意に声がかかる。星の淡い光が、船縁に座った声の主を微かに浮かび上がらせる。
・・・・ディックにいさん。なんとなく、俺はその横に静かに腰を下ろした。
−−−−−−−闇は人を素直にする−−−−−−−
冒険者としての人生。そしてその辛さ、といった内容の話をどちらとも無く、静かに話し始める。
どれくらい経っただろうか。のそのそとボルドまで起き出してきた。
「なんじゃい、寝付けないのか?」
あんたのせいだ、あんたの。
その後、ボルドも加わった奇妙な座談会が始まり、その夜はふけていった。
−−−航海四日目−−−
不覚!ロビン一生の不覚!昨晩、夜更かししたせいか!?この俺がフライパンで起こされてしまうとは!お陰で朝から星が見れた・・・。
「ふふふ・・・。修業が足りませんね、ロビンさん。」
にいさん・・・なんで起こしてくれないんだ・・・。
「甘えていては、いつまで経っても一人前にはなりませんよ。」
そう言い残して、にいさんは甲板へと消えていった。
その日、俺達は無事「海乙女号」を見つけ、全てが解決していたことを知る。しかし、みんなに落胆の表情はない。なぜなら俺達は冒険者。今までの大海原での体験が俺達の冒険心を満足させるには十分だったからだ。
そして、なによりカレンさんが無事であったこと・・・・・・。
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