No. 00052
DATE: 1999/08/12 00:51:27
NAME: ラーズ
SUBJECT: オレの剣
とある酒場、その男はこう語りかけてきた。
「よお、エルフがバスタードソードなんか持って、重くねえのかよ」
この剣は、特別製だからな。
オレの言葉に男は不思議そうな顔をしてみせる。
抜いてみるかい?
言いながら、オレは背負った剣を鞘ごと男にわたす。
「いいのか?」
ああ、かまわないさ。
オレの言葉を聞き、男は剣のグリップに手を掛ける。
そして、一瞬の躊躇いのあと、ゆっくりと剣を抜いた。
「へえ、こいつはスゲえ」
男の口から感嘆の声が漏れた。
それは、剣の軽さと同時に、その機能性に対する物だろう。
一般的なバスタードソードと異なり、片刃で先に行くほど細くなる刀身。
刀身に穿たれた無数の穴と、その隙間に刻まれるスリット。
「なるほど、これくらい軽けりゃ、扱いやすいな」
男は感想を述べた。
しかし、それはこの剣の最も短絡的な評価でしかない。
軽いだけじゃないぜ。
「?」
オレの言葉に、再び男の顔に疑問の色が浮かんだ。
例えば・・・
オレは刀身に刻まれたスリットを指さし続ける。
このスリットは、軽量化の効果もさることながら、敵を斬ったときに出る脂分を刀身から吸い上げる・・・つまり、何人斬っても、切れ味が落ちない、って事さ。
ついでに、この穴は敵に命中した時、その体内に空気を入れる働きがある。
「空気を?」
ああ、人間に限らず、まともな生き物は体内に空気が入るとかなり高い確率で死ぬからな。
オレの言葉に、男は少し青ざめて、剣を鞘に戻した。
そして、剣をオレの方に返して、続ける。
「もし、相手を殺したくない時はどうするんだい?」
あんたならどうするか知らねえけど、オレなら精霊魔法を使うな。
そう言うと、オレは再び食事に戻った。