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No. 00062
DATE: 1999/08/18 00:22:00
NAME: レイラ
SUBJECT: Examination 〜 尋問
※不適当な表現を含んでおります。気分を害される恐れがありますので、自己の責任においてお読みくださいませ(笑)
レイラ 現在牢屋生活の女海賊。
マイエルリンク オラン衛視隊海上保安第7分隊隊長。
ノルト 同隊員。
シャンバーク 雇われ絵師。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
「隊長、コイツが例の海賊の片割れ?」
「ああ、そうだ」
「なかなか美人じゃないですか……隊長、念のためもう一度聞きますが、ホントにコイツですか?」
「余計なことはいわなくていい。お前は私の指示するとおりに事を行えばいい」
「……わかりました」
がちゃり、ぎぎぃぃぃぃ…と鉄格子を開ける重い音が響く。
「出たまえ。2,3聞きたいことがある」
「私の名はマイエルリンク。お嬢さんの後ろにいるのはノルトという。海上保安課の者だ。まず、宣言しておこう。手早く済ませたければ我々に協力したまえ。そうでないときは我々はどのような手段も辞さない」
紅い髪のサングラスを掛けた男は、よく響くオクターブの低い声でそういい放つ。そのがっちりした体に衛視の制服に身をまとい、落ち着き払った様子は下級衛視と言うよりも軍の司令官のようにさえみえる。それに引き替え、後ろに控えているノルトは筋肉隆々のはげた男で、どちらかというと蛮族にちかい。
「さあ、座れ」
レイラは後ろ手に縛られた腕を引っ張られ、半ば強引に背もたれのない椅子に座らされた。
ふと、部屋の隅にあった画材の中から小柄な男がひょいと出てくる。鍔の広い緑色の三角帽と絵の具で薄汚れた草色の外套。どう見ても衛視ではない。時折吹き込んでくる風に帽子に付いている赤い羽根が靡き、ぱたぱたと小さな音を立てている。
「へっへへへ、オレはよぉ、雇われ絵師のシャンバークてんだ。せいぜい抵抗してゾクゾクする場面を見せてくれよ、お嬢チャン♪」
シャンバークと名乗った男はにたにたと邪悪な笑みを浮かべ、レイラに触れようと近寄る。マイエルリンクは左手でそれを遮り、ぎろっと睨み付ける。
「おおっとっと、旦那。ちょっとぐらいいいじゃねぇかよぉ」
「俺の指示に従え」
「……へへへへ、じゃあ、後のお楽しみと言うことにしておきます。へへ」
にたにたと笑いながら揉み手をし、落ち着かない様子で辺りをうろうろとぶらつきはじめた。
「では、始めようか」
「我々はこの度、とある筋からの依頼で手配書を作成することになった」
「ふん」
レイラは椅子にもたれかかり、後ろ手に縛られた縄をほどこうとこそこそと指を動かす。ノルトはそれを見逃さず、ばしっと腕を叩いた。そして何事もなかったかのように淡々と話しは続く。
「我々も気分のいいことではない。だが、断るわけにもいかないんでね」
マイエルリンクはおもむろに椅子に座って肩肘を付き、とんとんと机を指で軽く叩く。
「ふわぁぁ……なあ旦那、前置きはいいからさっさと始めようぜぇ……絵筆とナイフとどっちを持ちゃいいんだ?長いトコ待たされて肩がこっちまった」
レイラを見つめながらあくびをし、腕をぶんぶんと振り回す。
「何度も言うがな、お前は俺の指示に従え。それ以外は静かにしてろ」
「ちっ……へいへい、わかりましたよっ!」
シャンバークは悪態をつくと、ふてくされたように床に座り込んで再びおおあくびをした。
「奴のことは気にしないでくれ。すくなくとも私たちは穏便に済ませたいんでね」
(衛視さんとやらも大変だねぇ。ヤリタイ事ができねぇってんだからよ……オレだったら絶対衛視なんぞやりたくねぇな)
「あと、逃げようなんて思わないことだ。その縄はほどけないぞ」
「では、続けよう。まず、お嬢さんたちの頭領の特徴を教えていただきたい。顔立ち、通常の服装、言動……どんなことでもいい。順序よく話してくれたまえ」
両肘を机について手を顔の前で組み、それにのしかかるようにしてレイラをのぞき込む。
「ふん、答える気はないね。そんなことが知りたかったら目撃者でも探すんだね」
レイラは見下したように笑い、そっぽを向く。
「ふむ、やはり話したくはない……か、解らないでもないがね。だが、協力して貰えれば多少ならば罪状を軽減できる。これは悪い条件ではないと思うがね」
突然マイエルリンクは席を立ち、くるっと踵を返して壁に掛けてあるランタンを取り外すと、テーブルの上に置き、火を灯す。
「できることならさっさと済ませたい。解っていただけるかな?」
「……」
(けけ、まどろっこしい野郎だ。んなこたぁさっさと痛めつけて吐かせりゃ一発だろうに。早くあの白い肌を紅く染めてぇぜ……くははは)
「……目撃者は以外に少なく、彼らの報告にはかなりのばらつきがあった。先日、わざわざ知らせに来てくれた少女から話を聞いてある程度作成した、が、今ひとつ真実味に欠ける」
再びどかっと椅子に座って片肘をつき、指で机をとんとんと叩く。
「そこでお嬢さん、あなたの情報が必要になる。より完全な絵を作るためにね……さあ、話してくれたまえ」
「くっくくく。アタイは親方を売ったりはしない。そんなことを話す気はないさ」
レイラはそういい放つと笑い出した。マイエルリンクも肩をすくめ、苦笑いする。
「やれやれ、聞き分けのないお嬢さんだ。仕方ない……おい、お前の出番だ」
「……待ってやしたっ!へへっ」
「好きにやっていいぞ。だが、間違っても殺すなよ……そのときはこのお嬢さんの代わりにお前が牢屋にはいることになるぞ」
「へへ、そんなことはしませんよ旦那。なあに、ちょっとコイツで遊ばせてもらえりゃ……」
外套の中から幅広のナイフを取り出し、しゅっしゅっと振り回す。
「さあさあ、楽しませてくれよぉ〜お嬢チャン♪」
背後にいたノルトは無言、無表情のままレイラのあまり長くない髪を引っ張り、強引に席を立たせる。シャンバークは左手にナイフを持ってゆっくりと近づき、間合いに入るとぴたりと足を止めた。邪悪な笑みがこぼれる。
シャンバークのナイフが一閃し、左頬に切り筋がつく。切り口からはじわっと血がにじみ出し、赤い筋をつくってしたたり落ちる。予期していたとはいえ、意外な苦痛にレイラの表情はゆがむ。
「へっへっ、いいねいいね、その表情♪わざわざのこぎり歯にしただけのことはあるね♪」
「くっ…オマエたちになんか……しゃべるもんか……」
レイラはきっ、とシャンバークと澄まし顔のマイエルリンクを睨み付ける。
「そぉれ、そぉれ♪」
容赦なく次々と繰り出されるナイフは、薄く、浅くレイラの肌と服を的確に切り裂く。斬りつけられるたびに襲い来る激痛に、気力が急速に奪われていくのを感じた。
「あうっ―――!」
「へへへ、どうした、どうした。もっと苦しめ、もっと悶えろ。お前の頭領もそのうち同じ目に遭わせてやる。ははははは」
悶えるレイラの姿に淫猥なものを刺激されたのか、シャンバークの声には欲情の響きが籠もり始めた。無数の傷と夥しい鮮血のついた服をナイフで切り取り、あらわになった裸体のレイラをなめ回すように見つめる。
「へっへ、ゆっくり、じっくり切り刻んでやる。今更しゃべるんじゃねぇぜ?」
手も足も出せずにゆっくりと斬られる恐怖が全身を包む。狂気にとりつかれたようなシャンバークの表情を見ていると、まさしく血が凍る想いだ。
(殺される!?)
「あう、あ……親方ぁ……助けて―――い、いやぁぁぁぁぁ!」
邪悪で淫猥な笑みを浮かべたシャンバークは、レイラの右肩から乳房、腹にかけて思いっきり斜めに切り裂く。今までにない激痛がレイラを襲い、ついに気絶してしまった。
「ありゃあ、気絶しちまいやしたねぇ…どうします旦那?せっかくこれからランタンの火で炙ってやろうと思ったんだがねぇ♪」
残念そうに机の上のランタンを見つめるシャンバーク。
「意識が戻ったら続けろ。それまでは待つんだな」
「隊長……これ以上やったら彼女は死んでしまいます。医務室へ連れていって治療すべきです」
ノルトは血塗れになって気絶しているレイラを担ぎ上げると、くるっと踵を返した。
「待て、ノルト。尋問は終わっていないぞ」
「独り占めはずるいぜぇ、筋肉坊や。オレはなぁ、今のお嬢ちゃんの絵を描きてぇんだ。もうちょっとだけ色彩を施したかったがねぇ♪」
マイエルリンクとシャンバークはほぼ同時にノルトに怒鳴りつけた。
「お前は俺の指示に従って動けばいい。余計なことを言うなと言ったはずだが?」
「くっ……隊長、こんなげす野郎、何で雇ったんです?これも上からの指示なんですかっ!?」
ノルトはわなわなと震えながらシャンバークに詰めかける。そして両手で襟元を掴み、天井にぶつからんばかりに持ち上げた。
「お、おろせよ、筋肉坊や。げす野郎とはヒドイぜ…せめて芸術家と言ってくれ。オレは手配書の絵を描きに来たんだぜ?これはほんの余興じゃないか。そうカリカリするなって♪なあ、マイエルリンクの旦那?……っとわっと!」
ノルトはシャンバークを思いっきり壁に向けて投げつけた。が、シャンバークは器用にノルトの腕を軸にしてくるりと回転し、何事もなかったかのように床に降り立つ。
「上からの指示は絶対だ……ノルト。逆らうことは許されていない。今回のこういったことは、すべてシャンバークに任せろという上からの指示だからな。口出しするべきではない」いつもと変わらない淡々とした口調で呟く。「……しかし、治療してはならんという指示はなかった。どうしてもというなら、医者を呼んでくるといい」
「は、はいっ!」
再び踵を返して勢いよく出ていくノルト。ドアは荒々しく閉じられ、室内の空気を振動させた。
「あの坊や、まだこういう世界に向いてねぇなぁ……青い、青い♪おっと、坊やが戻って来る前にお嬢ちゃんの体、楽しませてもらうよ♪」
― ※これ以上の描写は本気でやばいので省略(笑) ―
半刻ほどすぎてノルトが医者を連れて戻ってくると、そこにはすでにシャンバークはいなかった。レイラは裸のまま石床に座り込み、大粒の涙を浮かべて震えていた。床面は血で汚れ、暴虐のすさまじさを物語っている。医者はレイラを見つけると、手早く塗り薬を取り出してレイラの肌に塗布していく。
「隊長…」
「遅かったな。手配書はついさっきできあがったところだ」
「隊長!本当にこんな事をしてまで作る必要があったのですか!?」
「必要だとも。これを貼りだして海賊どもが捕まれば、これから先、少なくとも市民が海賊の脅威にさらされることは少なくなる。いいかねノルト、我々は海上の安全を守る立場にある。この件は、本来ならば依頼など無くても我々がするべき仕事のはずだ」マイエルリンクはできあがった手配書とランタンを持ち、席を立つ。「治療が終わったらお嬢さんを牢屋に戻すように。私は先に本部に戻っているぞ」
「海賊とはいえ、女性を、いや、人間をこんな風に扱うのは間違っている!隊長、あなたは間違っている……」
ノルトは自分の上着をレイラにかぶせ、そっと肩を抱く。
「もうこんな事はしたくない……仕事柄、逃がしてやることはできないが……私は……できる限りあなたを守りたい……」
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