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No. 00069
DATE: 1999/08/25 21:19:34
NAME: クレア
SUBJECT: 狼、そして、戦いの始まり
「姉さん、今日だよね・・・」
使い込まれた皮鎧を着ながら、1人の少年が、話しかけてくる
「そうよ、油断しないでね、油断しなければ、狼ぐらいなら、簡単に倒せるはずよ」
鍛えられたばかり、いや、鍛えなおさせれたばかりの、プレートメイルを着ながら答える
その話しかけられた女性前には、相当使い込まれ、鞘が、何度も直されている、ブロードソードが置いてある
「私は、なるべく後ろで援護するから、ちゃんとやるのよ」
そう聞かれた少年は、うなずいて立ち上がった
「最後に、狼との戦いかた教えてよ、エリスねぇさん」
「鎧を付け終わるまで、ちょっと待ってなさい・・・聞いてるの?アルフィディ」
「エリスさん、どうしました?」
今日同行してもらう、セリアと言う少女が話しかけてくる
いつもと違って、皮鎧を着込み、剣を差し、魔剣士らしい格好になっている
「ゴメンね、ちょっと、狼との戦い方を、アルフィディに教えてたの
リーダーに正確な場所聞いてくるから、ちょっと待っててね」
エリスは、部屋の奥に入っていく、この家自体が、この冒険者グループのたまり場になっている
このグループは元々冒険者のパーティが、膨張して、一つのパーティとして成り立たなくなった事から作られた
ごく小さな、グループだった、リーダーとは、本当は昔の呼び方だが
グループになって、いきなり呼び名が変わるわけでもなく、リーダーと言う呼び方をしている
このグループは、そのリーダーや、他の初期メンバーが、仕事を集め
その仕事ごとに、パーティーや、個人を斡旋する、傭兵に近い仕事になっている
もちろん、参加するしないは自由、退会も自由になっている
説明はここまでにしておこう
「セリアさん、こんにちは」
「アルフィディさん?・・・こんにちは」
少年が入ってきて、話しかける
「これから仕事ですね、よろしくお願いします」
「こちらこそ」
2人で話を始めようとしたとき、ちょうどエリスが帰ってくる
「あら、2人とも仲が良いのね」
「・・・ねぇさん、からかわないでよ」
「本気にした?セリアちゃん、ゴメンね
狼が出た場所だけど、最初は、ここから西に二日ほど行った村よ
でもね、その後、猟師さんが狩りにいって、返り討ちにあったって話ね」
「とりあえずいってみる?」
「そうね、とりあえずは、その村まで行ってみましょ」
やっとエレミアか・・・疲れたな
でも、かなり日程より早いな・・・・
オランにつくのももうすぐだ、2週間ぐらいかかると言われているが
今のペースで行くなら、何とか、10日もあればつくだろう
「このまま、1日休んだらこのペースで行けるか?サーナ」
隣を歩いている、少女に話しかける
少女の格好は、ピンクがかった白色ローブを着て、ショートソードを提げているという
冒険者には見えない格好だった
それにもまして不釣り合いな理由は、話しかけた少年の異常な格好だろう
全身黒装束を着て、上からジャケットを着ただけという格好でいるのだ、盗賊に見えないことはないが、やはり異常だろう
「大丈夫」
一言だけ、辛そうに答える少女を見て
「無理しなくて良い、やっぱり休もう」
・・・少年が、心配そうに声を掛けると
「大丈夫だってば・・・カオスだって疲れてるでしょ?そんなに変わらないから」
「お前と俺じゃ、基礎体力が違う」
「そんなこと無いよ・・・」
・・・少年は、いきなり、腕を取って、背中の上に、背中にのせた
「え?・・・やめてよ、カオス」
「大人しく休んでくれるならな・・・」
よほど疲れていたのか、背負われて、ほんの数十秒後には熟睡してしてしまった
「この村ね、狼に襲われた村って」
中に入っていくと、村人が歓迎してくれた
話を聞くと、狼たちの被害が大きくなっているのだそうだ
猟師さん以外には、死人は居ないが
家畜も相当食われて、畑も手を付けられない状態だそうだ
「すぐに出発して、倒して来るって言うわけにも行かないわね」
村を出てから、姉が最初に言った言葉はそれだった
「なんで?」
「猟師さんを倒してるのよ、きっと凄い数だわ」
「どうするの?」
ネットや、ボ−ラ、クロスボウを取り出しながら言う
「罠よ、正面から戦いにならない方が良いわ」
森の中に入りながら、戦いやすい場所を捜す、追いかけるより
おびき出す方が早いからだ
適当に開けた場所に、罠を仕掛け始める
その罠が完成したのは結局、夕方を過ぎてからだった
「疲れてちゃ、戦いにならないわ、休みましょう」
その後しばらく休み、簡単な食事をとってから
僕は、冒険用の竪琴を取り出して、曲を奏でた
最近覚えたばかりの曲、ゆっくり歌いながら
しばらく、曲を奏でていると、狼の咆吼が近づいてくるのが分かる
そして、僕たちの罠がある範囲に入ってきた
しかし、狼たちは想像以上に多かった
罠を踏み越え、近づいてくる
ざっと見ただけでも、20匹はくだらない
だが、以上なのは、その狼らしき奴の目の中だった
真っ赤に血走らせた、特殊な目だった
そいつらは、狼とは思えないほど素早い身のこなしで、僕たちに近づいてきた
とっさに、竪琴を捨て剣を引き抜く
左手には、ダガーを構えておく
飛びつかれて、よける自信がなければ、ダガーを使うしかない
狼らしき奴が、僕たちを囲み始める
「セリア、明かりを付けて!アルフィディは、距離を取って戦いなさい」
多少隙間の多い、円形を取る
すると、狼とは思えぬ、素早い動きでアルフィディは、いきなり押さえ込まれた
「うわ!」
左手(左利き)に持っていたサーベルを落とし
右手に持ったダガーを必死に振るう
予想以上に手強い狼らしき奴らに苦戦しているのは、アルフィディだけではなかった
「何?狼じゃないわ」
右手に持った、ブロードソードで、狼らしき奴らを、軽くいなしながら
「何やってるの、距離を取るのよ、アルフィディ!セリア、下がって!私の後ろに来るのよ」
指揮をとる、経験の差と言うものだ
明かりが灯る
元の中央辺りに全員が集まる
すでにアルフィディには、武器がダガーしか無い
セリアは何もない
エリスの持っている、ブロードソードだけが、致命傷を与えうる武器だ
「ここは、逃げましょう・・・セリアは合図をしたら真っ直ぐ走って
アルフィディは、フェイント掛けてから、そっちを追いなさい、私が最後に行くわ」
そういってから、ブロードソードを構え、動かなくなった・・・
それは狼らしき奴らもだ・・・
そして、数秒後
「今よ!走って!」
言われた通り、一歩前に踏み出してから
セリアさんの後を追う
ダガーで敵を払う
後ろを見る暇もない
だが、ついてきているのは分かった、後ろからの攻撃が全くないからだ
大きく踏み出して、左右の敵をわずかに距離をとらせる
と、後ろから、何かのしかかってくる
とっさに振り返りつつ、ダガーを振るう
だが、そこにあった、いや、いたのは気を失ったエリスだった
「ねぇさん!!」
とっさに、右腕で支えて、引っ張って逃げる
よく見ると、僕たちを庇って受けただろう傷が、背中に幾筋もあった
大きく間を取っていた、狼達を一気に引き離して
僕たちは、森の中に姿を消した・・・・
「ねぇさん、大丈夫?」
・・・・・・森の中に入ってしばらくしてから、応急処置は施したものの
エリスは回復しなかった
「僕も魔法が使えたら・・・そんなこと思うから、魔法なんか使えないんだよな・・・」
「大丈夫なんですか?エリスさんは」
セリアが、薪を拾って戻ってくる
・・・・・
と、その瞬間数匹の狼もどきがが出てきた・・・
とっさに、エリスのブロードソードをかざしてみる・・・
そんなものではじけるものでもなく、吹き飛ばされる・・・
そのままのしかかられると思った瞬間
そいつの心臓に、ダガーがつき刺さっていた
「ったく・・・何で、俺が・・・真面目に戦えよ・・・」
カオス・・・昔の仲間でスカウト、確か・・・ロマールにいたはずじゃあ・・・
たった数体で追いかけてきていたのか、そいつら簡単に全滅させることが出来た
「カオス、何でこんな所に来てるんだ?」
「オランに行こうと思ったら、お前等の話を聞いたんだ、それとこいつ等の正体とな」
狼もどきの死体を指しながら言う
「こいつ等は、魔法生物なんだ、やけに早いが、所詮不完成なままおいてあるんだから、簡単に殺せる」
魔法生物?・・
「何でこんな所に?」
狼もどきの死体を見ても、生物にしか見えない
「俺が知るか・・・エリスさんはどうした?居ないようだが?」
その後、カオスが持ってきていた、薬草でエリスは回復
残りの狼もどきは殲滅された
だが、本当の戦いはこれからだと言うことに、気づいていた者は居なかった
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