 |
No. 00092
DATE: 1999/09/10 02:16:31
NAME: エルフィン
SUBJECT: 情報
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
「冒険者を急募したい。」
「人数は数名。ただし魔術師は含まれる事。」
「報酬は500ガメル相当の宝石が4つ。」
「依頼の詳細については直接お伝えする。」
「待ち合わせ場所は、○の日の昼に埠頭にて。」
「ザムエル商会(サインしてある)」
「追記:当方、子猫を用意する。子犬を用意されたし。」
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
と、ある冒険者の酒場にてその羊皮紙は張り出されていた。
数名の冒険者を募る内容を見て、幾つかのパーティーが店の主人に尋ねたが、
問われた主人も、俺の耳には入っていないと首を横に振るだけであった。
主人に話が通っていない依頼は裏が有ることが多く、どのパーティーも
それ以上の質問はせず、以後その依頼内容について考える事は無かった。
中肉中背の男が、その依頼内容を見たのは、張り出された日の夜であった。
店内に入り、いつものように入り口と周囲が見渡せる壁際の席に着いたとき、
壁にピンで留められていた羊皮紙の存在が目に入った。
いつもの癖で席を立ち、何気なく目を通すと‥
共通語で書かれたその依頼内容は、男へあてた物であった。
(ザムエル商会・・奴か。)
(魔術師が相手で・・・情報料は500ガメル。)
(又、ずいぶんと吹っ掛けた物だが・・詳細は会ってからか。)
(猫と犬、ね。‥くくっ、奴らしい。)
顔に苦笑を浮かべた男は店員へ挨拶を済ますと、席を立ち店の外へと歩き出した。
船乗り達が積み荷を船に搬入出しているのを横目で見ながら、その男達はすれ違った。
すれ違いざまに一言を交わし、相手の事を確かめてから人目に付かない場所へと移動した。
その周囲には誰もいなかったが、もし居るとすれば、こんな会話が聞こえてきただろう。
灰色の髪をした男と街人にしか見えない男の会話。
遠くから見ると只の街人が世間話をしているようにしか見えない。
そして灰色の髪をした男が最初に口を開いた。
「子猫が生まれたらしいな。元気にしているか?」
『俺が聞いたのは子犬が生まれた話だが。』
「だから、こうして準備した‥。」
『どうやら、あんたが相手らしいな。』
両者の間にしばしの沈黙が流れた。
「又、面倒な手段を取る‥伝わらなかったらどうするつもりだ?」
『俺は人を信じちゃいないんでね。それに伝わらなくても俺は損をしねぇしな。』
「まぁいい。張り紙に有ったように魔術師と聞いたが?」
『へへっ、そうせかすなって。確かに相手は魔法の使い手さ。』
『だが、こっから先は貰うモノを貰ってからだな。』
「金か。どんな情報か知らないが、500ガメルは高いな。」
『おっと、巷に聞こえた何でも屋ともあろうお方が、値切るのかい?』
「そうは言っていない。だが、値段を付けるだけの価値があるのか、だな。」
『情報の値段は俺が決める。何せギルドも知らない特別な奴だからな。』
「判った。言い値で買おう。」
『っと、その前に。あんた、知っているか?』
「‥‥なんの事だ。」
『エルネストという商人についての噂をさ。』
『それについて流してくれるなら、情報料は只でも構わんぜ。』
「情報は情報で買う訳か‥‥。いいだろう。」
『そっちの方がもっと金になるんでね。っと、口が滑っちまったな。』
「エルネスト、か。奴はについては良い噂を聞かないな。」
「奴にはな…」
一見、只の街人見える彼らの会話は続き、しばらくした後、双方が満足したのか
挨拶もそこそこにして、別方向へと歩み去った。
 |