 |
No. 00119
DATE: 1999/09/26 01:50:39
NAME: ラーズ
SUBJECT: アーダのからみの襲撃者
「・・・おっと待ちな」
オレの行く手を遮ったのはチンピラ風の男だった。
だたし、普通のチンピラはブロードソードなど持って居ないだろうが。
両サイドと背後に一人づつ。計四人という配置。
場所は裏路地の十字路である。つまり逃げ場はない。
オレは立ち止まり、口を開く。
「わりいな。チンピラの遊びにつき合ってる程、暇じゃねえんだ」
軽く、挑発する。
しかし、前方のチンピラは動じない。ペースを変えずに言葉を続ける。
「アーダ・レン・アルフリードの仲間だな」
「いや。違う」
即答した。
「・・・」
しばし気まずい沈黙。
「・・・ごまかすなら、それでもいいだろう」
言い放って、男は抜刀する。
・・・ちっ。面白くない奴。
しかし、こういうことを聞いてくるという事は・・・
「ははあ。お前ら、アレだな」
オレは落ち着き払って言う。
「爆笑暗殺団「牛」つったか」
「殺せ」
無表情に、襲撃者は言った。
「あっ、やっぱり怒ってる」
言いながら、内心前方の襲撃者をA、右をB、左をC、後ろをDと命名する。
取りもあえず、四方を囲まれるとやっかいである。
オレは一気に襲撃者Aに向かって、間合いを詰める。
剣には手を掛けていない。
剣を低く構えて、対応する襲撃者A。
「ふっ」
オレが間合いに入ると、そんな、小さな気合いの声と共に、剣が突き出される。
腕は、悪くない。
が。
タイミングがなってない。
相手が左足を踏み出した瞬間に、剣を突き出すというのは、なんと言うか良くない。
体を左にずらして、切っ先をかわす。
オレの目の前、間延びした時間の中を、ゆっくりと襲撃者Aの体が泳いで行く。
相対速度をそのままに、襲撃者Aの鳩尾に右の膝をたたき込む。
一瞬浮き上がる、襲撃者A。
続けて、その背中を両手で思いっきり叩く。
襲撃者Aの体は、オレの右膝を軸に一回転し、地面に叩き付けられる。
同時に、右足で襲撃者Aの右肩を踏む。
「シャドウ・タップ!」
そして、右足のつま先を軸に、一回転した。
なんとも言えない音と、感触。襲撃者Aの肩が脱臼したのだろう。
次の目標は、一人だけ先行して来ている、C。
オレは走り出す。
間合いまで、3・・・2・・・1・・・。
剣を振り上げるC。
間合いに入るまさにその瞬間、オレは走るスピードを上げた。
それにCは対応できない。
伸びきったCの腕。その内側にオレは進入した。
剣は近すぎても、当たらない物なのである。
オレはやや体を屈め、左手でCの右手首を掴み、右の肘を脇腹にたたき込んだ。
続く動作で、右の掌打を脇の下へ打ち込み、体を捻りながらCの体に背中を押しつける。
「フレア・ディストーション!」
叫び声と共に、変形背負い投げに移行した。
相手を投げると同時に、自分も跳んで、腕を極めたまま、地面に落ちる。
オレはCの上に落ちるので、その体がクッションになって、ダメージはない。
しかし、オレが受けなかった分、余計なダメージを食らうのはC。
ましてや、腕を極められていたのである。
・・・折れたな。
思いながら、投げの勢いをそのままに、もう一回転してオレは立ち上がる。
「まっ、命まで取るとは言わねえけどな」
振り返りながら言う。
BとDは立ち止まり、一瞬顔を見合わせる。
一瞬の沈黙。
「逃げるんなら、追う気はねえぞ」
そう言って、場所を開ける。
「次は無いぞ」
Bはそう言うと、Cを抱え上げ、走り去る。
見れば、DもAを抱えて、別の方へ走り去った所だった。
「まったく、アーダの野郎、また変な聞き込みのしかたしたな。まったく・・・」
襲撃者を見送りながら、オレは呟いた。
その時オレは気づいた。襲撃者・・・多分Cだろう・・・が落としたと思われる品に。
「これで、メシ代は浮いたな」
オレはそれを拾い上げ、ポケットに落とし込み、再び歩き出した。
・・・治安、悪ぃな。この街も・・・
 |