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No. 00131
DATE: 1999/10/01 00:21:32
NAME: ジャルド
SUBJECT: レイラ救出計画 1章、隠れ家にて
Chapter.4
「なあ、ラス。何かありそうかの?」
マトックマンがぶっきらぼうに呟きながら、ディック、ウォレスと一緒に階段を上ってくる。
「さあな……特に変わった精霊力は感じられない。っと、開けるぞ」
階段を上り、2階の一番奥手の部屋をそーっと開ける。微かに匂う油の匂いと、まだなま暖かい空気が冷え切った廊下へと流れてくる。しかし、中からは何の反応もなく、がたがたと窓に打ち付ける風の音だけが聞こえてくる。
「どうやらさっきまで誰かが居たようですね…せーの、で入ってみますか?」
「まぁ、待て……ディック。ちょっとワシを肩車せい。ドアの上に隙間がある」
「なるほど。でも、重そうですからラスさんと一緒に持ち上げますので、早く乗ってください」
ラスとディックはドアの前で手を組み上げ、マトックマンを押し上げようと力を込める…が、予想以上の重さに、二人の足はふらつく。
「こりゃ!二人ともしっかりせんか!!」
ぐらぐらと揺らぐ足下の二人に小さな声で怒鳴り掛ける。
「そんな事言われてもよ、重いぜおっさん。ちっとはダイエットしろよ」
「そんなことはないわい。これぐらいは普通じゃ」
聞こえるか聞こえないかぐらいの声でぼそりと呟くと、ドアの上のほんの少しの隙間に手を伸ばしていく。
「おし!!もうちょっと右……よし、とりついたぞい!!」
ふるふると震える指先を隙間に押し込む。そして、ぐいっと体を持ち上げさせると、素早く中をのぞき込む。
「中は真っ暗じゃないのか?」
「ドワーフに暗闇は関係ない!!ふむ、だれもおらんようじゃの……おい!?」
マトックマンのあまりの重量に耐えきれず、ついにラスは膝を折って倒れ込んでしまった。そして、突然足場を失ったマトックマンも、轟音を立ててディックの上へと落ち、ディック共々床に倒れ込んだ。
「何やっとんじゃい!!」
「うるせえや!もっと痩せてろや!おっさん!!」
「なんじゃと〜〜〜〜!やるか、若造!」
「……喧嘩は後でやってください……それと、さっさとどいてください。重い……」
「ふん、とにかく、今の騒ぎでなかに誰か居たとしたら気付いただろ。行くぞ」
ディックは予備のショートソードを構え、マトックマンにそう呟く。マトックマンも心得たりとばかりにマトックを構え、いつでも飛びかかれるように
両足に力を入れる。
「よ、せーの!」
ディックとマトックマンは勢いよく室内へとなだれ込んだ。が、そこは真っ暗でがらんとしていて、何の気配も感じない。ゆっくりと入ってきたウォレスは、壁に銅製のカンテラが掛けてあるのに気づき、取り外した。さわってみると、カンテラはまだほんの少しだけ暖かい。
「まだ暖かい…と言うことは、さっきまでここに居たのか……ちっ!」
軽く舌打ちをすると、ウォレスは”発火”を唱えてカンテラに火を灯す。紅い光が当たりを照らし出し、天井や窓に付着したすすがてらてらと黒光りする。
「やっぱり誰も居ない…」
ウォレスは半ばほっとした表情で薄闇の室内を見渡す。灯りがついたのを契機に、ディックとマトックマンがウォレスを押しのけて室内へと躍り出た。
「なにか、手がかりがあるかもしれない……探そう」
ウォレスが灯した僅かばかりの灯りを頼りに、ディックとマトックマンは室内をひっくり返すかように探し始める。
「畜生め……煤と埃だらけじゃの」
「何も無い…か」
「どうだ?なんかみつかったか?」
遅れて入ってきたラスは、すっかり荒れ果てた室内を見回すと、ふっと肩をすくめる。
「なんだこりゃ?嵐でもきたのか?」
「おお、そういえばお主が本職じゃったな。なんか手がかりが無いか、探してくれや」
マトックマンはぶっきらぼうにラスに言葉を投げかける。ディックも途方に暮れたような表情でラスの方を見やる。
「探すたって……もう少し丁寧に探しといて欲しかったなぁ」
ラスは軽くため息を付くと、煤だらけになった家財道具を一つずつチェックしていく。しばらくすると、ほとんど填め殺しになっている机の抽斗を見つけた。
「う〜ん……机のここが怪しいな?マトックマン」
「ほいよ。どっこらせ!!」
マトックマンは手に持ったマトックを振り下ろし、煤で真っ黒になった机に叩きつける。机は粉々に砕け散り、いくつもの破片と真っ黒な煤が辺りに散乱する。しかし、ラスはそのなかに混じる紙片を見逃さなかった。
「大当たりだな」
ラスは丹念に煤を払いのけ、ゆっくりと紙片を拡げていく。
「えっと、なになに……?おっと、この文字、見覚えがあるな……たしか、ミルディンの文字だったかな?そんなものが何故こんな所に……っと、なにぃ?」
ばっと顔を上げ、血相を変えてすすだらけの窓を開ける。そこからは荒れ狂う水面と、対岸には……海上保安隊の詰め所!?そ、その近くにはもしかして……ん、誰かいるぞ!?
ばん、と豪快な音を立てて窓を閉めると、くるりと振り返る。
「これは計画書らしいな…海賊ども、本気で詰め所を襲うつもりらしい……ということは、後を追えばヤツらは勝手にケイのところまで案内してくれるってわけだが、なぜヤツらはケイを!?」
(ふざけやがって……こうなったらどんなことをしてでもケイを救い出してみせるっ!)
ショートソードを固く握りしめ、わなわなと怒りにふるえるディック。
「気持ちはわからなくはないが、アツくなった方の負けだからな。冷静にいこうぜ」
ラスはディックの肩をたたくと、マトックマンに紙を預けて再び机の残骸をあさり出し始めた。そして残骸の中から指輪を見つけると、ディックやマトックマンに見つからないように、手早くポケットへとしまい込んだ。
「若いのぉ…うむ、がんばりなされ。……お、裏にも何か書いてあるぞ?なになに、『人の家のものを勝手にあさるのは、薄汚い泥棒と一緒だと言う事をわきまえなさい』じゃと?……この、ふざけおって!おまえなんかこうしてくれるわ!」
ばりばりと歯がみをしたかと思うと、力一杯紙を握り、くしゃくしゃに丸めて窓の外へ投げ捨ててしまった。
「ふん、おそれいったか」
振り返ると、そこにはじと目でマトックマンを睨む3人の姿があった。
「ふむ……やれやれ、たいした計画じゃのう……さて、とっとと行かんとな。行くぞ皆の衆?」
Chapter.5
全く手入れされていない生け垣をかき分け、狭い庭を、駆け抜けるように進むミッキー、リュイン、ミルダス。払えども払えども覆い被さるように枝が行く手を遮り、服には葉っぱの細かい切れ端がいくつも張り付いている。庭の角まで来ると、ミッキーは腰の高さまである赤茶けた煉瓦の壁に登り、ふっと二人の視界から消えた。
「おい、兄ちゃん。何処へ行った?」
「あの壁の向こう」
リュインはきょろきょろするミルダスの肩を叩き、壁の方を指す。ミルダスは面倒くさそうに、体のあちこちにへばりつく蜘蛛の巣や葉っぱを払い落としながら、ぼろぼろに崩れている赤茶けた煉瓦の壁を乗り越えようと足を出した。が、地面がない。突然のことに驚いたミルダスは、今にも崩れそうな壁にしがみついて泣きそうな声で、下の方に見えたミッキーに抗議する。リュインはくすくすと笑いだしたが、気を取り戻して手早く壁に飛び乗る。
「あ、あぶね〜…俺を殺す気か?」
「何いってんだよ。ほんの2m、ほんのひとっとびじゃないか。死にゃしね〜よ」
「そうだケドよ…ディオンやセリアがまだ来てねぇぜ。それより、そっちになにがあるんだ?」
煉瓦の上で体勢を立て直し、そのまま座り込んだミルダスはぶっきらぼうに尋ねる。その間にリュインは軽々と煉瓦の壁を飛び降り、した、と着地する。そして振り返って上の方を見上げる。
「もー、早くしなって!おいてくよ?」
「さっきも言ったろ?船着き場さ。あいつらの船を1度見たことがある。ひょっとしたらそっちで見つかるかも……」
「あ、な〜るほど♪先回りすりゃカワイイ女の子にありつけるって訳?あんたも考えることが憎いねっ」
宙に足をぱたつかせてにやにやと笑い出す。すると、不意に後ろから枝をかき分ける音が聞こえ、とっさに構えようと身を翻したとたん、足を踏み外してすぐ下の路地へ転落していった。
「う、うわぁぁっ!?」
「おっと、誰か居たのか?」
ディオンがひょいと煉瓦の壁に飛び乗り、下の路地を見下ろす。髪の毛に葉っぱがたくさんついたセリアもそれに続いて顔を出す。
「お、おまえらまで俺を殺す気かぁ〜!?」
「そっちが勝手に落ちたんじゃない!」
「おいおいセリア、喧嘩してる場合じゃない。それよりもミッキー、そっちであってるんだろうな?」
崩れそうな壁を乗り越え、ディオンは勢いよく路地へと飛び降りる。続いてローブの裾を押さえながらセリアも路地へと飛び降り、服や髪についた葉っぱの切れ端を丹念に払い落とす。
「この道をちょっと行ったところに船着き場がある。あいつらの船まで案内してやるから、ついてきなって」
それだけ言うと、ミッキーは海から吹き上げる突風を真に受け、走りづらそうに、まだ動き出していない船着き場の方へと駆けていく。そして互いの顔を見合わせて苦笑いし、4人はミッキーを追い始めた。
Chapter.6
夜も白み始めた頃には小糠降りの雨も止んだが、海から吹き上げる突風は波や飛沫を軽々と持ち上げ、雨よりも激しく降り注ぐ。ちょっと気を抜いただけで沖まで持って行かれそうだ……。
「……万物の根元たるマナよ、原初たる大地が眷属、青き玄武の岩に宿りて我らが命に服せ!」
強風の吹き荒ぶ浜辺に並べられた小さな岩のかけらが、まるで意志を持ったかのように膨れ上がり、手足が生えていく。そして、まるで石造りのドワーフのような石人形が次々とできあがっていく。
「いつ見ても魔法ってのは不気味でいけねぇや。そんな素っ気もない石っころどもに何処まで出来ることやら。はっははは。なあマクレイン?」
「俺は魔法ってやつは大嫌いなんだ。どうせ一緒に戦うんならよ、そんなイカツイ石像よりはすらっとして綺麗な女の子とご一緒したいもんだがねぇ…」
シードとマクレインは堤防に座り込んで、無愛想な(表情はあるのかな?)石人形たちを見てげらげらと大笑いする。レドに続いてフェリアスの方も石人形を作り上げ、ぶつぶつと命令を与える。
「準備は出来たぞ、と。いいか、オレ達は裏に回って合図を送るから、そしたら出来るだけハデに暴れろ!なんにしろこの時間だ、まだ衛視の数はそんなには居ないはずだ」
「ハデに……ねぇ」
「へっ、確かそいつらにはオレ達の言うことなんてほとんど聞こえねえんだろ?だったら誘導が終わったら早速、好き勝手やらせてもらうぜ。この大地の精を封じた腕輪とそれに仕込んだギャロットで……な。はっははは」
「静かに!向こうを見てみろ、もう嗅ぎつけてきやがったな……さすがは冒険者ってトコロか……急ぐぞっ!」
ミルディンは対岸に見えるアジトの方を指す。そこにはすでに何人かがうろうろと彷徨く姿が見える。
「いいか、陽動だって事を忘れるなよ。あいつらもじきにこっち側の騒ぎを聞きつけて来るだろうからな……それじゃ始めてくれ」
ミルディンはさっと踵を返すと、それに続くように主だった面々が裏路地へと駆けていき、視界から完全に消えた。そして石人形達も階段をぎこちない足取りで順序よく上り始め、石と石のぶつかり合う鈍い響きが風の音をつんざかんとばかりに当たりへ響き渡る。
「ばかでかい音たてんじゃねぇ!衛視達が……出てきちまったじゃねぇかよ……仕方ねぇ、いっちょやるか」
詰め所のドアが勢いよく開かれ、二人の衛視が寝ぼけ眼で表へと出てきた。そして音のする方向を見やると、ぎょっとした表情で詰め所の中へ向かって叫ぶ。
「た、隊長!ば、化け物、化け物が堤防を上ってきてます!」
「なに?…とにかく街に入れるわけにはいかない。ここで防ぐぞ!」
室内に鎮座していたマイエルリンクは、腰に下げた長剣を抜き、机を乗り越えて表へと飛び出す。それに続くように、麾下の衛視達も手に手に剣を取り、表へと飛び出していった。
「何者だ!?」
マイエルリンクは、ただ1人で石人形達の前に立ちはだかり、奥に見えるシードとマクレインを睨み付ける。そして、ちらりと後ろを見ると、びしっと隊列を整えた衛視達は剣を構え、いつでも飛びかかれるように身構えている。
「名乗れとよ……シード、前口上は任せとけって!せっかくだから考えておいたんだ」
にたにたと不自然な笑みを浮かべながらシードをちらっと見る。
「そんなに言うなら聞かせて貰おうじゃないか」
高みに登り、戸惑う衛視達を見下ろす。煤で汚れたローブを吹き募る風に靡かせ、ばっと翻す。シードは呆然とその様子を見守る。
(あのへんな眼鏡のせいで、何を考えているのかわからんなぁ…)
「では……フッフッフ、ヒャ〜〜ヒャヒャッヒャ〜!愚かなる人間どもを血祭りにあげろ〜〜。ゆけっ、悪魔どもっ!……こんな感じでどう?」
「……」
マクレインは石人形達が駆け出すタイミングに合わせて大声で叫び、にぃっと悪戯っぽく微笑んでシードに意見を求めた。シードはあまりのつまらなさに絶句し、言葉を失ってしまった。
「……まあいい、突撃〜〜」
meanwhile...
かつん、かつん……静まり返った地下牢の廊下に革靴の堅い音がこだまする。カンテラを片手に細い廊下をゆっくりと進み、レイラの居る牢の前にたどり着く。
「ここだ。言っておくがな、見るだけだぞ」
ノルトは仏頂面でシャンバークを見下ろし、腕を組む。
「判ってるって、筋肉坊や♪オマエがこの女をスキだってこともな!」
「な……」
突然の発言に狼狽するノルトを見て、シャンバークはにやりと邪悪な笑みを浮かべる。
「へへへへ。オレの後にやらせてやるからよ、それまでしばらく眠ってな!」
シャンバークは指に填めていた緑色に鈍く輝く宝石をかざすと、”眠りの雲”を発動させる。宝石は音もなく砕け散り、ノルトの周囲は白っぽい霧に包まれる。そして身構えるまもなく膝から崩れ落ち、冷たい石畳の上にうつぶせになって眠ってしまった。
「……なぁ〜んだ、こんなに簡単に行くとは思わなかったぜぇ?ま、それはいいとして、カギ、カギ、と」
シャンバークはノルトを起こさないように鍵束を取り外し、鉄格子の鍵を外す。ぴき、という軽い音がすると、ゆっくりと音を立てないように扉を開ける。
「さてさて、ご開帳っと♪お嬢チャン、遊びに来たヨ♪」
やがて、上の方からごん、ごんと鈍い音が聞こえ始めたが、気にとめる様子すら見せなかった。
Chapter.7
「ね〜〜向こうからスゴイ音がするんだけど〜〜なにかな〜〜」
すっとぼけた声でロイランスが荒れた海の方を指す。波飛沫に遮られて向こう側がよく見えないが、堅い物同士がぶつかり合う甲高い音、重い物がいくつも飛び跳ねているような低重音……何にしても、ただごとじゃなさそうな雰囲気は伝わってくる。
「ひょっとして……私、見てきます!」
青灰色の寒々しい石畳に座り込んでいたマリーは、思いついたかのように立ち上がり、対岸へ通じる橋へ向かって走り出そうとする。
「ちょっと待てって。1人で行ったって仕方ないだろ?ある程度まとまっていこうぜ」
レイシャルムがマリーの腕を掴み、落ち着かせようと肩を軽く叩く。
「でも、急がないと……」
マリーはレイシャルムを振り払うと、再びもの凄い速度で駆けだしていった。
「やれやれ、仕方ないな…」
「行こ、レイ」
アレクがマリーを追って走り出そうとしたそのとき、屋敷の中からラスとディックが、遅れてマトックマンとウォレスが血相を変えて飛び出してきた。
「……どうしたんです?」
ラスは息を切らしながら、両手でカイの肩を掴む。しばらくして落ち着くと、ふっと顔をあげて、中で見つけた走り書きのことをみんなに伝える。
「ヤツらはついに行動を開始したらしいな。上から見えたぜ。で、どうする?あっちに行ってみて、ヤツらを追えばケイの所まで案内してくれると思うが……危険だ」
「とりあえず行こうよ!相手のことをよく知ってるのはミッキーとマリーなんだから……あ、そういえばミッキーは?」
ランドは辺りを見回し、ミッキーを探そうとしたが見あたらない。
「さっき裏の方へディオン達と行ったみたいだけど?」
シュウがぼそっと呟く。ランドの表情はちょっとだけ曇ったが、すぐに平静を取り戻す。
「裏…?あ、マリーを置いて逃げるなんて事はないか……なにかあるのかな?でも、ディオン達も一緒なら任せて置いてもいいかぁ」
ランドは小さくのびをすると、マリーを追って対岸へ向けて駆け出す。シュウはラスの方へ振り返り、さらにぼそっと呟く。
「で、ラスはどうするんだ?」
「…向こうへ行ってみよう。ミルディンを捕まえれば何処に行くか判るはずだからな。……カイは俺の側を離れるなよ?」
「はい……」
力無く返事をしてそっと寄り添うカイ。ラスは、それを見てにたにたと笑うシュウとロイランスをじろっと睨みつける。
「ほら、急ぐぞ!みんな、気をつけてかかれよ!」
「わくわくするのぉ〜久しぶりに暴れられそうじゃ」
レイシャルムはアレクの手を引いて、もうだいぶ先へ行ってしまったマリーを追いかける。それに続くようにマトックマン、上気した表情のアンジェラに引かれてウォレスが一斉に駆け出す。
「傭兵家業もどうやら終われそうね・・・・この子の為にも、これで終わりにしたいものね」
呟くように言い放つと、アンジェラはウォレスの手をしっかりと握りしめた。ウォレスはちょっと苦痛の表情を浮かべながらも、懸命に付いていこうと必死に駆けていく。
(…くそっ!せめてオレが行くまでは無事でいてくれっ…)
ディックは朝日を浴びて白銀に輝く槍を扱き、片手でぐるぐると振り回すと、まるで突撃するかのように、対岸の詰め所へとかけ出していった。
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