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No. 00140
DATE: 1999/10/04 00:33:22
NAME: カオス
SUBJECT: 牧場岩巨人退治(出発編)
注、無駄に長いので暇な人のみにお奨め(笑)。
**登場人物紹介*******************
カオス,記録者(笑)。高位の魔術師で盗賊でもある変人。
レイシャルム(レイ)。吟遊詩人で凄腕剣士,人外(笑)。
アレク。女戦士,かなりの腕,やっかいごと引受人。
ナヴァル。美形のお喋り剣士,無類の馬好き。
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1日目(出発)
旅立ちの日は晴天に恵まれた。
青く澄み渡り雲一つ無い。
・・・私は暗いじめじめした部屋の方が好きなんだがなぁ。
心の中で炎天下に出かけなくてはならない金銭事情を恨む・・・。
「なあ、なあ、あんたは何処から来たんだ?。何で冒険を?。」
さっきからやかましく話しかけてくる・・・。
この男の名はナヴァル。
今回初めて一緒になった男だ。
顔立ちは,どちらかと言えば優男系で、男前だが。
難点は,やかましいことと、馬が好きなこと,だ。
好きなだけならまだいい。
頼むから,返事もしない私に1時間も馬の話をしないで欲しい。
・・・お、ようやく諦めたのか次はレイシャルムの方に行ったらしい。
まあ、奴に聞いても私以上に無駄だとは思うがな・・・。
レイシャルムという男は得体が知れない。
かなり長い間呑み仲間だったが,ずっと吟遊詩人だと思っていた。
腰の剣はたしなみ程度と聞いた覚えもある・・・。
・・・が、たしなみどころか恐ろしく腕の立つ剣士だと解ったのだ。
あれは少し前の麻薬に関する事件の時だったか。
奴の剣を抜く速さは恐ろしいものがある。
私ではとうていかなわない,魔術を使わねば話にもならんだろう。
今回の話を受けたのも,奴ならトロールと2対1でやっても,
ひけを取らないだろうと推測しての計算が合ってのことだ・・・。
冒険者,というか旅もかなり長くこなしているらしい。
経歴は私も聞きたいところだと思い、聞き耳を立てる。
・・・やはり話を逸らしている。
楽器の話になって居るではないか・・・。
昼になり,昼食を取る。
保存食はそのまま食うには余り美味しい物ではない。
一応鍋を出し,水気のない乾燥肉を放り込む。
食える草を探す・・・心配そうな顔をするな!アレク。
ちゃんと食える・・・多分。
アレクというのは紅一点,今回の旅では唯一の女性。
料理ぐらい自分で作れ,と言いたいが。
どうやらやる気はないらしい,のほほんと鍋を眺めている。
まあ・・・確かに包丁より剣の方が得意そうではある,が。
レイ(レイシャルム)も楽しそうにナヴァルを前に楽器を弾いている。
「カオス、悪いな。」といいながら材料を鍋に突っ込みに来る,レイ。
再び楽器を手にしている。
そう思うなら手伝え!、そう思いながら黙って鍋をかき回す。
「アレク、暇なら焦げないようにこれをかき回してくれ,
・・・こぼすなよ?。」
「こぼさないよ!、大丈夫だって。」
だから・・・むきになってはりきるな。
かき混ぜるのに元気はいらん・・・。
そうこうしていると,近くに一台の馬車が止まった。
幌馬車だ,古いようだが矢傷や血の跡はない。
馬も訓練されている様には見えないし,商人のものか。
馬車から若い男が降りてきた。
持っていた手綱を置くと,近くの木に馬車を繋ぐ。
「あの、ご一緒して宜しいですか?,綺麗な音が聞こえたものですから。」
まあ、確かにレイの腕は一級品だ,
小さな街で有れば領主のお付きにだってなれそうなものだ。
珍しくて寄ってきてもおかしくはない。
只で聞けるなら儲けたものだ。
「いやあ、良い馬だねぇ・・・何処の,いや当てて見せるよ。」
などとナヴァルが言い出したから,
何時の間にか一緒に飯を食うことになっていた・・・。
飯を食いながら話を聞くと,どうやら行く先は一緒らしい。
鍬やら鎌などの鉄製品や,塩,衣料品まで運んでいるらしい。
村には牛や羊,それに最近不足と言われている野菜を仕入れに行くそうだ。
まあ、まだ地方では金より物々交換の方が儲かる事もよく分かる。
悪くない取引の仕方だな,と思う。
不意に,レイが私に話しかけた。
「なあ、カオス,岩に化ける怪物について何か解ったか?。」
「そほそほ、私も聞ほおと思ってたの。」と、アレク。
・・・食べながら喋るのはよせ,アレク。
「おそらくトロールだろう,身長は,そうだな。
・・・アレクの二倍くらい,か。」
「2倍!?、そんなにおっきいの?。」
甲高い声をあげるアレク,食い物がとんでるぞ・・・。
「トロール,か。聞いたことはあるなぁ,大地の精霊と仲が良いって,
そんな歌がある。・・・腕がものすごくながいとか。」
「ふーん、なるほどなぁ。」
とナヴァルは言いながら商人と馬の話をしている。
・・・後で聞けばいいや,とか思ってないか?。
私は2度も説明するのはやだぞ。・・・疲れるし。
昼食も終わり,出発の支度をする。
なんとなく一緒に進むことになった商人。
道中心強いと思われたかな?。
まあ、ナヴァルが馬と離れたがらないのも原因の一つではあるが。
道々,岩のように硬いトロールの肌と、怪力について説明する。
馬なら一撃で死ぬ,と例え話をすると。
ナヴァルが怒って,馬で例えるな,と言っていたのが印象深い。
夜になって,そんなのに剣が通るのかな?。とアレクが心配していたので。
剣に魔法を掛けてやる,というと。
不思議そうにそんな魔法があるの?、とか言っていたので。
あとで試しに一回ぐらい見せておかないと,
土壇場で困りそうだな,と思い,試してみることを決意する。
剣が燃えた,とかいいだして放り投げられても困るからな・・・。
こうして私たちは1日目の夜を迎えた。
夜半を過ぎた頃だった。
最初の見張りを申し出た私は妙な気配に気がついた。
・・・何か居るな。
姿は見えないが,殺気は感じる。
おい、レイ,と小声で話しかけると,薄目を開けていた。
「解ってる・・・殺気の数は14,おそらく人間だな」
・・・数まで解るのか,こいつホントに人間か?。
そう思いつつ位置を確認するために使い魔を動かす。
私の使い魔は蝙蝠のキース,人間の視界と違うのが難点だが。
暗闇でもはっきり見えるのはありがたい。
アレクはたき火の側で剣を抱えて幸せそうに寝ている。
ナヴァルは馬の側から離れていない・・・らしいが。
商人は馬車。
おそらくこれが狙いだろう,いい迷惑だ。
当然,一斉に襲いかかってくるのを待つより
こっちから行った方が有利なのは明確だ。
「見張り,交代だ。ちょっと用を足してくる。」
レイを起こすふりをしながら。
そう言い,殺気のない方の茂みに入る。
「さ、て,剣の稽古でもするか。」
と,聞こえよがしに言うと剣を抜く。
レイは剣の刃筋を確かめるフリをしながら,目配せしてくる。
・・・この時点ですでに双方考えに違いがあった。
私は自分の命を奪おうとする馬鹿共を生かして返す気はなかったが、
レイは懲らしめてやろう程度だったらしい。
茂みにはいると私は赤い外套を脱ぎ,
小さく丸めて腰の後ろに付けると,剣を抜いた。
足音を消し,3人固まっているところを見つけると,
小さく呪文を唱える。
「眠りをもたらす安らかな空気よ・・・」
音もなく倒れ込むのを確認すると,そっと近づき。
仰向けに寝こけている間抜けな男達を確認する。
汚い革鎧に研ぎきったような小剣,・・・盗賊か。
喉仏に向かって逆手に剣を突き刺す。
鈍い輝きを放つ広刃の剣は,ほぼ急所を捉えていた。
瀕死の男は立ち上がる間も与えら得られず,
言葉を発する変わりにヒューと喉から音をさせて,2撃目で命を失った。
2人目は,外さないようにと断ち切るように首を狙ってみる。
今度は深さが足りなかったようだ。
起きあがりつつ,隣の男を必死で起こそうとする所を頭を割った。
3人目は起きかけたところをこめかみに向かって横殴りに一発。
・・・昏倒した。
やっぱり頭だな,そう思いつつ次の獲物を探す。
昔,お前には躊躇いってものがないのか?。
と、聞かれたことがある。
躊躇するくらいなら剣を持つな。
そう応えたが・・・私にも躊躇いはある。
最近特に子供と女に甘い気がする。
リヴァとリッティのせいだな,と人の責任にしつつ。
眠りの雲をあと3回ほど唱える頃には半数近くを殺していた。
と、その時,たき火の方で剣撃の音がした。
・・・・・・そうか、昏倒した奴にトドメを刺さなかったっけな。
苦笑しながらたき火の方へ向かう。
あと8人か,レイの言うことを信じるなら・・・。
ま、何とかなるだろう。
到着するとレイが3人相手に頑張っていた。
・・・手傷一つ負ってやがらんな。
アレクが手強そうな巨漢と戦っていた。
ナヴァルは2人。
たらんな,計算があわん。
そう思ってあたりを見回すと馬車に向かう奴が居た。
昏倒させた奴ともう1人。
間合いを後ろから詰めながら抜き打ちでダガーを投げる。
・・・手応えからいって死んだかな,とおもいつつ。
もう1人の男がふりかえったので,向かい合う。
たき火の側から離れた馬車の陰向き合いながら斬り合い始める。
・・・弱い。
野盗になりさがる奴なんてこんなものかと思いつつ,
心臓を狙って突き込まれた小剣を鍔元で軽く上に受け流し,
身体を回転させて脚を剣でなぎ払う。
助けてくれ,と命乞いをする男を黙って切り捨て,
馬車の陰からアレクに向かって声を掛ける。
「アレク,剣が燃えるが熱くないから気にするな!。」
「は?」という声をだしつつこっちを向くが,
よく分からないという顔をしている。
「火蜥蜴の脚,紅蓮の炎となりて剣に宿れ。」
「ボワッ」と燃える剣に一瞬驚いたが,放り出さなかった様だ。
巨漢のおとこの鎖鎧を易々と切り裂いたようだったから,
非力なアレクでも,すぐに勝負はつきそうだ。
レイは・・・手加減してやがるな。
殺す気は無いって事か。
ナヴァルは,1人倒れてるし,
もう1人も,もう逃げたそうな様子だな。
アレクが首領格らしい男を切り倒すと残りは逃走を始める。
レイもナヴァルも追う気は無いらしい。
どうでも良いがな,私も。
アレクが文句のあるような顔をして寄ってきた。
「魔法なんか無くても倒せたのに!。」
そうか?、結局早く撃退できたんだから良いだろうが,と思いつつ。
「本番前に一度見せておきたかっただけだ・・・。」
「ふ〜ん、まあ、いいけどさ。・・・凄いねあれ。」
もう炎の消えた剣をまじまじ見ている。
そんなに探しても焦げ跡一つみつからんぞ,魔法なんだから。
「カオス,残りは?。」とレイが剣を拭きながら訪ねる。
「殺った。」
「そうか・・・。」
困ったような顔をするな,仕方がないだろ,考え方の差だ。
「生かして置いた方が話を聞けたのにな,あ、捕まえておけば良かったか。」
と建設的な意見を言うナヴァル。
死体を茂みに放り込みつつ野生動物の餌になれよ,と声を掛ける。
次の朝,死体が埋めてあったのはおそらくレイの仕業だろう。
律儀な奴だな・・,アレクナヴァルも手伝ったのかもしれんが。
私は寝ていたから、当然知らない。
カオスの冒険回想記(笑)511年9の月13の日,分。
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