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No. 00142
DATE: 1999/10/06 01:07:03
NAME: カイン、ジッカ、レツ
SUBJECT: 今を生きてる冒険者(3)
(注)このエピソードはリレーしております。これまでの経緯は、前回までの「今を生きてる冒険者(1)(2)」をご覧ください。
「まぁ、チャ・ザの祝福はいいとしてだ(?)とりあえず玩具ばかりじゃ儲けにならねぇ。さっさか奥に行くぞ!」
ジッカがよっこいせと気合を入れて立ち上がる。
「ちょ、ちょい待て。もう俺ら半日ぐれぇ動きっぱなしなんだけどよぉ」
「ああ、ちょっと今からまた探索ってのはきついぞ」
さすがに遊びに付き合って疲れたのかレツとカインは抗議し始めた。
「あぁ!?まぁしかたねぇなぁ…じゃぁここで野宿といくか」
「おい、もどらねぇのか?」
「おいおいレツ。ここまで来るのにも結構旅費かかってんだぜ。収穫がこれじゃチョンチョンってとこじゃねぇか」
「そうだな。ここはとりあえず野宿して探索を再開した方がいいだろう。まだ奥があるようだしな」
話がまとまる。そうなると早い。すぐさま野宿の準備に取り掛かり速攻眠った。なにしろこの部屋は魔法の鍵がかかっていた扉である。幽霊の少年もいなくなった事だし安心して眠れるというものだ。
いや、普通は幽霊がさっきまでいたような場所なんかで寝たくはないものだが、そんな事でためらうようでは冒険はやってられない。
そしてどれほどの時間が経っただろうか?レツが目が覚めた頃、すでにジッカとカインは目が覚めていたようだ。
「さぁ〜っていくとすっか!」
比較的寝起きがいいのかジッカが背伸びをしながら頬を張る。
「ああ、用意はできてるぜ」
最初に目が覚めたカインはすでに用意をすませてしまっている。
「ガハハ、なんだ俺が最後か」
何が可笑しいのか笑いながらレツが悠々と干し肉を食い始めた。
『……今から食うのか?』
同時突っ込みを食らうレツ。
「ジッカ、これをどう思う?」
カインが尋ねる。
3人は止まっていた。
目の前の壁にあるのはおそらく何かのスイッチなのだろう。明らかに見える位置にある。そしてまだ通路が続いている。
「罠なんだろうなぁ…どうみても。上の方にあった岩転がる奴に似た感じだけどよ」
「ちょっと違うだろ。上のは見つからない場所にスイッチをおいといて押さないと罠が作動するタイプ。こちらは…あえて見つかる場所に置いといて…で、押せばいいのか押すとまずいのかわからないと」
「おいおい、おめぇら二人いてどうすりゃいいのかもわかんねぇのか?」
「ば〜か。上とは比べ物になんえぇんだよ…さすがに堂々と置いてるだけあってしっかりスペースとって細かいとこまでしっかり混乱するように仕掛けてやがる。うかつに手も出せねぇしな」
「どんな罠かさえ予想がつけばこちらも手の出しようがあるんだが…」
「踏み潰すってのはどうだ?」
『あ?』
「いや、とりあえずかかってみてやばかったら」
『死ぬって』
二人に突っ込みいれられてさすがに黙るレツ。
「こんな時10フィート棒があれば〜」
「いや、ジッカ。上の罠のように後ろから来る仕掛けだと10フィート棒も使えないぞ」
「だけど前方で何か起こるやつにゃぁ有効だろ?とりあえず2分の1で罠が潰せるわけよ。更に言うなら押していいか押さない方がいいかで2分の1ってのもあるからやばい確率は単純計算で4分の1だ」
「おい、ジッカ。ねぇもんの事いってもしょうがねぇんじゃねぇのか?」
「レツの言う通りだ。あるもので何とかしないとな」
再び考え込む3人。
「なぁ…とりあえず押してみねぇ?」
しばらく考え込んだ後、ジッカが言う。
「ここで引き上げるってのも手だが、またここに来るのは正直骨だ。別の遺跡探すのも手間も時間もかかるしよ。何より、探した場所が辺りともかぎらねぇし。それを考えりゃ、少々リスクおかしてでもここでイッパツって思うわけよ」
しばしカインは悩む。レツは…任せたといった感じだ。
「……押さずに行くという選択はないのか?」
「いや…ほら。ここまであって押さないのってなんかこう嫌くさくねぇ?」
「……好奇心猫を殺すというぞ」
「俺ぁ人だしよぉ」
ハハハと笑うながらジッカ。
「ガハハ!そりゃぁいえてる」
「しかしせっかくだからで命は落としたくない」
「あったりめぇだ!俺だって死にたかねぇよ!」
「…………」
なんか妙に話しが噛み合ってないような…。
「押さないのが嫌臭いというだけで命を落としたくはない」
訂正する。
「ああ、なるほど。まぁそりゃぁそうだよなぁ…」
それでやっと気づいたのかわざとなのかジッカが同意した。
「で、そうなると選択は退くしかないんじゃないのか?」
「そうだよなぁ。ここまで見えてる仕掛けだと普通、他に道はねぇだろうし…あん?ちょっと待てよ…」
『どうしたジッカ?』
「いやぁふと思ったんだけどよ。これって2分の1じゃん。こんな凝った仕掛けで2分の1って可笑しくねぇ?」
「どういうこった?」「なるほど…」
二人から逆の返答が来る。
「確かにそうだな。ここにこれだけのペースを用意して、なおかつ俺達がさっぱりというぐらい凝った仕掛けを用意して、それでも偶然で2分の1の確率で助かるような仕掛けは随分と割にあわない」
「だろ?変だろ?いや、トラップ狂ってんなら話しは…いや、トラップ狂ならなおさら偶然で片付くような仕掛けはつくらねぇわな」
「あ?つまりなんだ。押しても押さなくても罠が発動するってか?」
二人の推測にレツが尋ねる。
「その可能性は高い」
「ま、でも、その代わりだ。別の方法があるはずなんだよなぁ。ここを通る奴もいたはずなんだからよ」
「別の方法って?」
「なるほど…隠し扉だな」
またもや逆の返答。
「まぁそれじゃなきゃ、こっちには何もなくてもうここの遺跡はこれで打ち止めかだ」
「これだけ仕掛けを用意しておいてここで打ち止めは可笑しいだろう」
「そう考えりゃ隠し扉ぐれぇしかねらわな」
「おいおい、ジッカ、カイン。かくし扉つってるけど何処にあるのかとかわかってんのか?」
レツの疑問に不意に黙り込む。そしてしばし考えをまとめるかのようにうろうろして…
「人を隠すなら」
カインが不意に呟く。
「あん?」
レツはさっぱりといった風だ。だがジッカはピンときたのかハッという顔になる。
「人の中だ」
ニヤリ。カインとジッカに不敵な笑みが浮かぶ。
「おいおい、オマエ等二人してなんだっつうんだよ」
「ヘッヘッヘ、レツ。そんな事だからてめぇはウドっつうんだよ」
ジッカがからかうような顔でレツに肘討ちする。
「なんだぁジッカ!?てめぇこそカインが何かいわなきゃきづかねぇみてぇだったじゃねぇか!」
「おいおい、オマエ等。喧嘩は後にしてくれ」
苦笑いを浮かべながらカインが仲裁に入る。
『おぅ、喧嘩は後回しにしてやらぁ』
「ここだな」
苦笑しながらカインが言う。
「まいったぜ。バッチリ謀られちまってるじゃねぇか」
ジッカは悔しそうだ。
「おい、ここってさっきの…」
レツが言う。
ここは子供の幽霊がいた部屋のすぐ隣。構造上、少々無理があるためか不自然な形ではあるが確かによくよく見れば扉なのではないかと思えるものが隠されているのがわかる。
「考えるだけ損だったという事か」
「いやぁ、逆じゃねぇの?考えなかったらさっさか通路の罠にかかって」
「引き返してたんじゃねぇのか?」
「よし、罠はないようだぞ」
カインが隠し扉の鍵穴らしき所をいじるのを止める。
「あん?鍵は?」
「開かなかった」
「失敗か?」
「ああ、ちょっと俺の指じゃ入らないみたいだ。まぁジッカもいるし、いざとなったら開錠(アンロック)もある」
「お〜っし、んじゃ、次ぁ俺の番だな」
さっきまでの悔しさも薄れたのか鍵を破ろうとしているジッカはなかなか嬉しそうだ。
「ん、っと…こいつぁなかなか…おろ?」
どうも上手くいってないようだ。
「おいおい、ジッカてめぇ。お前さんから鍵開けとったら何が残るんだ?」
ガハハと笑いながらレツが日ごろのお返しとばかりにやじる。
「あ?頭が残るぜ。ウドっちとはレベルが違いますからなぁ」
ヘヘヘときりかえされるが。
随分と手間取りはしたがカチッという音がする。
「ようっし、成功。ははは、見たか俺の実力」
「あ?偶然じゃねぇのか?」
「喧嘩は後にしろって」
カインが仲裁に入る。だが、その言い方では後ならいくらでもやれとも聞こえるが。
「さ、開けるぜ」
入ってみると中は随分と冷え込んでいた。細く長い通路が続いている。レツなんかはかなり窮屈そうだ。
「ジッカ。何か見えるか?」
「うんにゃ、何にも。お先真っ暗だぜ」
「ガハハ、ジッカ。それじゃ違う意味だろ」
『でけぇ声で笑うなって』
でかい声でツッコミを入れる二人。
ポチャン……
水滴の音がする。
ポチャン……
ランタンの光だけがそこに輝いている。
「随分と長い通路だな」
カインが呟く。
「おお。なんか予想なんだけどよ。さっきの破れなかった罠あるじゃねぇか?この長さってのぁあそこを越えるためじゃねぇのか?」
「おお、なるほど。つまり、あの罠を通らずに先に行くための道って事か?」
「そういう考え方もあるな。俺はあくまであちらはダミーだと思っていたが」
「ダミーだろうが、罠の或る危険な道にはかわりねぇ。ま、あっちにはちかづかねぇのが得策ってかい」
「まぁ、それもこの道が正しかったらだな」
「カイン、この道が正しくねぇかもしれねぇってのかい?」
「バーカ、レツ。それぐれぇ当たり前だろ」
「いや、あっちがまちがってりゃこっちが正しいかもと思うじゃねぇか」
「あっちが間違ってるなんて誰が決めたよ。全部推測にゃかわりねぇ…!」
不意にジッカが止まる。
「どうしたいジッカ?」
「シッ」
レツの質問にジッカは黙ってろと合図する。
カインはすでに小剣を構え、臨戦態勢に入れるようにしている。ジッカはランタンを抱え、少し後ろに下がりレツと位置を後退する。
ザッ
物音が聞こえた。
(何かいやがるな…)
何がいるというのだろう?魔法生物?そうなるとこっちは古代魔法王国関係の通路なのか?
予想ではこの道は盗賊団とおぼしき者たちが追加したものだと思っていた。いままで見つけたものなどからはまさか、人間がいるとは考えにくい。
「!」
不意に嫌な匂いが漂う。
「まさか……まいったね」
ジッカは苦笑を浮かべる。
ランタンの光にはあるものが写ってきた。いや、写らずとも匂いで解る。
「ゲッ」
レツがうめく。無理も無い。正直、あまり相手にしたくないモノだ。
「ゾンビ……だな」
わかってはいたがカインは確かめるように呟く。
「まいったねぇ。これで推測盗賊団にはダークプリーストちゃんもいたかもしんないよ〜」
口調は軽いが顔は笑っていない。
「カッ!胸くそ悪い連中がいやがったのか!」
レツはさすがにこの狭い中でモールやグレートソードを使うようなマネはできない。予備の武器のメイスを手に持ちゾンビに向かう。
ゾンビも緩慢な動きながらこちらに向かっておもいっきり殴り掛かってきた。
ゾンビに痛覚はない。そのためか攻撃は異常に重い。自分への反動など考え(?)ないからだ。
レツのメイスとゾンビの腕が衝突する。
「ウヒャ!」
ジッカが嫌そうな顔をしながら砕けたゾンビの腕の破片をかわす。
レツの攻撃が命中した直後カインはすかさずゾンビの足を凪いだ。
所詮は一匹である。しっかりと訓練された戦士に盗賊が2人となれば相手にはならない。
片腕片足をやられ動きを封じられたゾンビは数瞬の後には肉片と化していた。
「レツ〜。おめぇの武器なんとかなんねぇか?ゾンビ相手にそれじゃぁ腐った肉が飛び散ってたまんねぇよ」
「しかたねぇだろ。俺ぁ軽い武器は使いにくくてしょうがねぇんだ!」
「まぁ、この際そゆがないだろう。後で洗えばこんな匂い、とれる…はずだ」
ゾンビからの帰り肉を拭き取りながら再び先に進む三人。ゾンビの出現からダークプリーストがいた可能性が高くなった。そうなってくるとまだまだゾンビやらスケルトンやらが出てくる可能性はある。
警戒を止めずジリジリと進む。この暗闇の中、もし罠などがしかけてあったらそうそう気づかない。諸刃の剣のような罠を仕掛けるとは思えないが、もしかしたら連中にしかわからない目印があるのかもしれない。絶対罠が無いといいきれない異常、油断するのは死を招きかねない。
「さ〜て、鬼が出るか蛇が出るか…」
そう小声で呟きながらようやく角を曲った。すると光が見える。
「光だ!」
レツが走っていきそうになる所をカインが止める。
「駄目だ!ここで油断して罠にかかるかもしれんぞ!」
「そうそう。ここは俺ら盗賊にまかせときなって」
そう言ってジッカがまず先行する。あくまで慎重に。ゆっくり辺りを見回しながら光に近づいていく。或る程度進むと後ろのレツとカインを招き寄せる。カインはカインで後ろからなんなかの動きが無いよう常に目に耳に神経を集中させながら進む。
さすがにレツにはそのような技術はない。ここは黙っておとなしくいているのが己の役目と下手なう語気を取らぬよう指示があるまで一切の動きを取らない。
そうやってようやく光り差し込む場所までたどり着いた。
「こいつぁ……」
ジッカが呟く。
後ろから追いついてきたレツとカインもその光景を見た。
「おいおいこりゃぁ…」
「神殿……だな」
そこには祭壇があった。そしてその先に見られる像は…。
To be continued
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