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No. 00155
DATE: 1999/10/19 00:47:31
NAME: レドウィック・アウグスト(カオス)
SUBJECT: 牧場岩巨人退治4日目(戦闘編)
鳥の鳴き声が聞こえ始める,朝早く。
私はそっと村長の家を出た。
村人の足によって踏み固められた土が,硬い感触の道となって感じられる。
レイが村の柵に寄りかかって私を待っていた。
「レド,行くのか?」
「ああ、知り合いかもしれん。」
「・・・そうか、手は貸さなくて良いか?」
「自分で片を付ける。」
すれ違い,お互い手を上に挙げ叩き合わせる。
パァン。
アレク達に上手く言っておいてくれ,と言い残す。
レイは無言で村長の家へと歩き始める。
私は1人,森へと向かった。
不思議と確信があった。
これは偶然ではないと。・・・待って居るのはレウレリア。
古い知り合いだという自信があった。
レリー,そう呼んでいた時代を思い出す。
・・・感傷か,私らしくもないな,と思わず苦笑いが漏れる。
そろそろ過去と決別する時が来た,ということか。
ジャルドとはもう会うことは無いだろうという別れはした。
キュイも,ゲフトも死に,リーフとの片を付ける時期も近い。
レウレリアとは今日が最後になるだろう。
レリーの持っていた魔法のレイピアに「探索」の魔法をかける。
・・・もう少し南か。
朝靄の立ちこめる森の中,枯れ木を踏まぬよう足音を消して歩く。
レウレリアは叫く子供の音をシルフに命じて消させていた。
「煩いわね,人間の子供は。」
洞窟の中で音が消えても涙を流す子供に辟易しながら夜明けを待っていた。
不意にシルフが苦しみだしたかと思うと,消え去ってしまった・・・。
「『四大制圧』?、誰?。」
腰のレイピアを抜く。
「そこで死にたくなければこの村を去れ,レリー。」
「レッディ,レッディ!?なの。」
レウレリアには何故ここにレドがいるかも、
そして何故敵対しているかも解らなかったが。
もし,レドが本気なら,一撃で決めるつもりがなければ倒せないことは解っていた。
最大の精霊力で『眠り』の魔法をかける・・・,そう覚悟を決めた。
「出てこなければしょうがない,炎で焼き尽くすか・・・。」
レウレリアの脳裏に,彼の魔法で黒こげになった人間や怪物の記憶が甦る。
・・・ここには子供が居る,けれどレッディはそんなことを気にかける男ではない。
「闇の中に住まいし精霊よ,集いてその姿を現せ。」
闇の精霊をふたつ召喚し,一方に隠れ飛び出す。
飛び出した瞬間に焼け付くような痛みが肺を襲う・・・。
コハッ!。
口中が血であふれる・・・『酸の雲』だ。
闇の精霊を身体から離し,レドを捜す。
・・・いた。木の陰,半身を隠すように立っている。
あふれる血を吐き出し,眠りの魔法を放つ。
しかし,それはむなしく宙に消えた。
「・・・幻覚?。」
レウレリアは背中に焼け付く痛みを感じて気を失った・・・。
洞窟の入り口の真上からゆっくりと着地する,レド。
倒れている彼女の美しい横顔を見ながら,脈を取る。
・・・死んだか。
1時間ほど立っただろうか。
レドは彼女を埋めた土の山を座って見ていた・・・。
おもむろに立ち上がると,彼女の持っていたレイピアをもって子供を解放する。
村へ帰ると,アレク達はもうトロールの居る丘に向かったという。
丘に着くと,三人がトロール相手に善戦していた。
やれやれ、まだ働くのか?。
すでにトロールの数は7体に減っていたがアレクもナヴァルも疲弊していた。
アレクの武器に『炎武器』の魔法をかけ,
慎重に巻き込まぬように3体のトロールを『眠りの雲』で眠らせる。
ふぅ・・・疲れた,年なのに無理をする物じゃないな。
私は丘の端の木に寄りかかり戦闘が終わるのを眺めていた。
・・・すでに魔法の使い過ぎで,意識を失いかけていた。
気がつくとどうやら片が付いたらしい。
結果的にはレイが半分近くを倒したという事らしいから凄い。
アレクは『炎武器』がかかってから追い上げたらしいが,
追いつかなかったと言っていた,腕の差というやつか・・・。
ナヴァルは戦い上手らしく,あまり大きな怪我は負っていなかったように見えた。
あとあと,強かった、強かった,と五月蠅かったが。
帰り道,レウレリアのレイピアをアレクに取られたのは言うまでもない・・・。
新王国歴511年9の月16の日、レドウィック・アウグスト(カオス)記
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