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No. 00159
DATE: 1999/10/25 23:43:14
NAME: ランテ
SUBJECT: 教え・・・今もこの胸に
あの店に始めて行った時の話し・・・おかげで昔の事を思い出してしもうた
忘れたらかんことやのにな
そう、あれはまだあちしが小さい頃やったなっと言っても10歳ぐらいや
旅の途中に寄った街で起こしてしもうた事件
忘れたらかん事や
あの頃はまだじっ様も元気やった
じっ様に、じっ様の使い魔である鴉のメルヴィス、いつのまにかついてきた、そしてあちしの大事な友人の子犬のディスの二人と二匹の旅やった
今日でこの街ともおさらばちゅう時やった
ディスがどっかに行ってしもうたからあちしは必死になって探してた
そしてディスを見つけたんは、街の外れの子供達の中心やった
あちしは子供達をはねのけ、ディスに近づいた
ディスは血まみれやった・・・・いじめられたんや
ディスを抱き上げるとディスは一声「きゅう〜ん」と鳴いてそのまま動かんくなった
死んだんや。まるで「ありがと」って言ったみたいやった
反抗すればいくらでも逃げれたはずや
なのにそうしんかったんはきっとじっ様の教えのせいや
じっ様はディスに「人を傷つけたらいかんぞ。どうなるかわからんからな。いいか」と教えておいたのだ
ディスはその教えを守って、死んだとおもう
ディス・・・・あちしのたった一人の友人
それをうばわれた怒りがふつふつとわいてきた
ディスをそっと下ろすとあちしは魔法を唱えだした
「万能なるマナよ・・・」
リーダーらしきやつの目の前の空間にライトの光を発生させた
突然の光に視覚を失ったそいつにむかって、そのままあちしは杖をふるい殴りつけた
ディスと同じ目にあえっとおもっちょった
2、3度殴りつけた頃やった。ふと回りのやつらの視線に気付いた
その目はまるで怪物を見るような目やった・・・・いややった
あちしは普通の人間や・・・・
あちしはディスを抱え逃げようとした。いややった、あの目が
その時、誰かが思いっきりあちしの頬を叩いた・・・・じっ様や
あんまり遅いから探しに来たんやな
それからじっ様はあちしを抱えてそのまま街を後にした
ディスの遺体は街から少し離れた街道の脇に埋めた
さらにそっから少し離れたところであちし達は野宿をした
涙が止まらんかった
ディスが死んだ事もあっちゃが、あの目がいややった
じっ様はそんなあちしをあやしながら
「ランテシア、他人に魔法を使ってどうだったか」
ランテシア、それがあちしの本当の名前。じっ様しか呼ばん名前
「魔法をつかっちゃんはなんとも思えへんかった。だがあの目は痛かった。いややった」
「何時も言ってろだろ。魔法は使う人次第だと。そして恐れられているから軽々しく使うなと」
あちしは頷くと
「今日の事で痛いほどわかっちゃ」
「魔法を使える事は隠すんだ。魔法は奥の手にしろ。頭で勝負するんだ。いいか」
「はい」
「それと命についても言っておく。ディスが死んで悲しかっただろ」
あちしは頷く
「おまえが殴りつけた子供が死んでも悲しむ人はいるんだ。それを忘れるな」
じっ様はさらにつづけて
「人の命を奪うと言う事は、その人の総てを背負わないかん。きっとあそこでおまえがあの子を殺していても、気持ちは晴れなんだだろ。それ以上に辛い思いをしていたはずだ」
もし殺してちゃらとおもうと・・・ぞっとして来た。だが傷つけた事もたしかや・・・それだけで十分つらかっちゃ
「いいか、命は一つだけだ。魔物にも命はある。それを忘れて殺すのはよくない。全力で倒すにしても忘れたらいかん。命に上も下も人間も魔物もない。これだけは忘れないでくれ」
「わかっちや・・・」
「さぁ、今はなにもかも忘れて眠れ」
じっ様がそう言った後あちしは眠りについていた
ディスの死。それはあちしが始めて身近に感じた死やっちゃ
そしてじっ様の教え・・・まだまだ幾つあっちゃな
思い出すときりがあらへん
その幾つかの教えを残したじっ様も今はおらん・・・
あちしはそっと胸に手を当てた。
そこにはじっ様の形見である発動体の指輪を紐でつるしてある
じっ様、あんはんの教えは今もこの胸にしっかりあるで・・・。
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