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No. 00184
DATE: 1999/11/24 02:22:46
NAME: フェリアス
SUBJECT: 地下調査前
地下下水及び遺跡の調査の数日前・・・
いつもの様に三角塔を後にし、家路に付く・・・
結局学院という住処から離れた俺は、オランの住宅街とでも言うのだろうか?
それなりの場所に家を借りている。
そこと、学院を行き来し、偶にその辺の酒場や、時には冒険者達が集まる酒場に行く。
そんな単調だが、それなりに充実した、日常の風景。
そんな中に思わぬ出来事があった。
いきなり俺の周りを紫色の霧が包み込む。
「・・・何だ?」と呟くと霧の中から声が掛けられる。
『命が惜しければ、地下下水道の調査をやめろ。』
更に声は続く・・・
『もし、暗黒神官に関われば調査隊の無事の保証はしない。』
だそうだ・・・
どこかで聞いたことのある声・・・カオス・・・レドウィックか?・・・
俺が考え込んでいると、更に声が続く。
『どうした・・・?、返答は無しか?、魔術師。』
いちいち小五月蠅い奴だ。
が?、こいつ保証がどうとか、止めたがってるのか・・・
『強行するというならそれなりの手段を採らせて貰うが・・・・?』
強行ねぇ・・・
「おやおや(苦笑」
「調査自体は冒険者の方から持ちかけてきた話だが?・・・」
「・・・俺にそれをどうかしろとでも・・・魔術師殿?」
「それに、相手に姿を見せられない辺り、既に強硬手段だと思うがな・・・違うか?」
この霧を作り出したのは魔術師に他ならないだろう・・・
『ほほう、これが魔法の幻覚だと解る程度には学んでいるようだな。』
声から推測するには彼なのだろうが・・・、
俺は、苦笑混じりに答える。
「それが解らない様な奴が調査を中止できる権限があるとでもお思いかな?魔術師殿?」
『ならば私の実力も見当がつくだろう?。 それでも危険をおかすかね? 』
いい加減彼の言いようにも苛ついてきてるな、俺は・・・
相手の実力・・・こちらよりは上・・・それだけは確信が持てる。
俺が彼に勝る物・・・そうだな・・・
「だが、お前も三角塔の連中に手を出して無事に済むとでも?」
『地下には権力すら届かない領域があるということだよ・・・』
確かにそうだろうな・・・だが、これで相手の事が少しは解るな・・・
魔術師ギルドの権力とその範囲を知っている。
と俺が考えを巡らしていると、その魔術師の唱える呪文が聞こえてくる、、
『万能なるマナよ・・・真実を見通す瞳となれ。』
それに反応するように俺も古代後の詠唱を始める・・・
「万能なるマナよ・・・彼の魔力をうち破れ」
・・・迂闊にも呪文を詠唱してしまってから、周りが霧に覆われている事に思い当たった。
呪文の詠唱が出来ても相手が見えなければ魔法の力は及ばない。
自分の迂闊さを嘲笑うように霧の中から一条の光が俺に向かって走る。
「ちっ」
舌打ちしつつそれを避けようとするが、霧の中から飛び出したそれを避けきれず、、
多少の痛みと共にかざした腕に投擲用の短剣が突き刺さる・・・
痛みをこらえつつ、相手に向かって・・・これじゃ負け惜しみだな、溜息の様に言葉を吐き出す。
「さっそく実力行使かな、魔術師殿?」
相手はこちらが見えているのだろう・・・恐らく先ほどの呪文は、シースルーだろうな・・・
・・・当たりを今更付けてもしょうがない事だが・・・
『そういうことだ・・・今のは警告だ』
・・・そうだろうな、毒が無いだけでも警告の意味合いなのだろうな。
『毒を塗っていないだけでも感謝して欲しいな。・・・地下では手加減出来ないぞ。』
まったくその通りだな・・・
まあ、後には引けないがね・・・俺の方にも事情があるしな、、
「警告・・・ね・・・警告だけはありがたく受け取るとしよう」
それに、恐らく俺が人を集める手助けをするまでの事もないと思うのだがね・・・
『では、調査方針は変わらない・・・と。』
いささか憮然としながら霧の中の声は言葉を続ける。
『できれば魔術師殿には地下に入って欲しくない物だな。余計な争いはしたくないのでね。』
俺は既に自分のすべきことは決めてあった。彼等は協力者ではあるが、それ以外の目的も持っている。
「、、お互い様だろうな・・・彼等に調査はしてもらうさ・・・調査以外に私が関知はしないがね・・・」
霧の中の声は確認する様に・・・
『調査隊の無事は保証できない、これは構わないと言うことかな?』
小声で後に続ける
『・・・・・ならば死んで帰って貰うだけだ・・・』
「それが、彼等冒険者の仕事だ、違うか?」
「もっとも学院関係者に何か合った場合にはそれなりの処置がとられるだろうがな・・・」
もっとも俺自身、学院力が地下に届くとは到底思えないのだがね。
「そうならない様に祈るばかりだ」
苦笑混じりに俺が返す。
『出かけるなら気を付けることだな・・・』
そう言い残すと彼は霧の中にとけ込むように足音も立てずに消え去った。
まったく、最近ツイてないのは知っていたが、これは極めつけだな・・・
霧の中の声、聞き覚えがある・・・恐らく奴だろうな・・・
彼にも会わなくてはならないだろう。
それに俺は手を出す気はないが、暗黒神官、それもかなり高位の神官らしい。
そこにもし彼が加わるのならば、冒険者達も恐らくは地下から生還出来ることもないだろう・・・
願わくは、大人しく邪神の使徒にはこの街から出ていって貰いたい物だが・・・
まあ、俺がうだうだ考えても仕方のないことではある・・・
すべてが上手く事が運ぶとは思っていないが、「そうならない様に祈るばかり。」
すべてはこれから、地下で何が起きるかは解らない。
果たして彼等は上手く切り抜けることができるのだろうか・・・
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