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No. 00185
DATE: 1999/11/26 01:54:45
NAME: スナイプ
SUBJECT: 監視
「今度も遅かったな・・・」
スナイプが入って来ると男は羊皮紙を書く手を止め、視線だけを向けるとどうでも良い事の様に言って来る。
「また、仕事かよ・・・大丈夫かこのギルド?」
皮肉をたっぷり込めて返すと男は相変わらず素っ気無く答える。
「今度の仕事は暗殺ではない・・・もっともそれも一つの手立てでは有るがな・・・」
「どういう事だ?」
流石に訝って眉を顰めると男はようやく顔をこちらに向ける。
「リックとリュインとは知人だったな?」
「ああ・・・まぁ見かけたら酒を飲む程度の関係だけどな」
リックは以前起こした事件によりエレミアから追って来た神官ヤンターに捕まっていた。
リュインがそれを助けようとしている事は以前自分が話した。恐らくその件の話なのだろう。
向こうも分かっていると思ったのかいきなり切り出して来る。
「リュインはリックの護送を護衛すると聞いたが?」
「らしいな。何する気か知らねぇが・・・」
スナイプにも話の展開が見えて来た。
「何かすると思うか?」
「確かにアイツは直情っぽいが・・・何も考えずに事を起こす程、間抜けでも無いと思うぜ?」
男は苦笑した。
「珍しいな、君が標的を庇うとは」
「俺だって相手が知り合いなら多少のえこ贔屓くらいするぜ?」
ついでにお前が笑う方が珍しいがな、と胸中で付け足す。
「ふむ・・・しかし放って置く訳にも行くまい・・・万が一表沙汰になれば我等にも被害が及ぶ」
「・・・で、俺にどうしろってんだよ・・・?」
スナイプは苛立ったように壁に寄り掛かる。もっとも既に聞くまでも無い事だが・・・
「君もヤンターの護衛を受けろ。そしてリュインの監視をしておけ」
「監視ね・・・」
「何も起こらなければそれで良い。無論報酬は払おう・・・だがもし良からぬ事を画策してるようならば止めろ。手段は問わない。もし説得に耳を貸すつもりが無いのならば最悪・・・」
「消せ、か?」
皮肉をたっぷり込めてスナイプが割り込む。男は意に介さず続ける。
「そう言う事だ。君は多少は信頼されているのだろう?何時ものお節介だと思わせておけば良い」
「どうだかな・・・?」
これは皮肉で言ったつもりは無かった。リュインは感情は分かり易いが真意が掴み難い相手である。自分に対する態度も何処まで本音かは分かった物ではない。
「ま、命令だっつーんなら聞くしか無いけどな・・・」
「君なら要らぬ心配だとは思うが・・・情にほだされて死体を増やすような真似はしないと信じている」
最初から最後まで一切口調を変えずに男は締め括った。暗に見逃せばお前も殺すと言っているのだろう。
「俺を誰だと思ってる?」
こちらは幾分神妙な口調で減らず口を叩き、スナイプは踵を返した。
「・・・大丈夫ですかな?」
スナイプの影が見えなくなった頃奥から声が聞こて来た。
「彼は仕事と私事を切り分けられる男だ。心配は要らんよ」
それだけ呟くと男は再び羊皮紙に目を落とした。
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