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No. 00012
DATE: 1999/12/30 01:25:27
NAME: ビィ・F・イータ
SUBJECT: 降り注ぐ音と風
流れのバーテンダー『ビィ・F・イータ』はエレミアからロマールに移り、しばらくそこに滞在した後、海岸沿いに南へと歩いていた。
つぎにいく店の紹介状を貰い、その街にいく隊商に同行させて貰う事も決まって、きままな旅行気分を味わっていた。
昼はぽかぽか陽気の中をのんびりと歩き、日が落ちるとささやかながらも宴会をし、とても楽しいひとときを過ごす。
しかし、その楽しひとときを一転させる出来事がおこった。
左手に海を仰ぎ、私は馬車の右側を歩いていた。今日も日差しが温かい。雲一つ無い空には鷹と思われる鳥が優雅に回っていた。隊商のメンバーとは楽しい話しをして、いつもと変らぬ時間がすぎていく。
「おい。あの鳥なんか変じゃないか?」
冒険者の1人が今我々の頭上を旋回している鳥に疑問を持ちはじめた。
「変ですか?私には鷹か鷲に見えるんですけど・・」
「何言うとんねん、ありゃ鳶やろ。」
タカ、ワシ、トンビ。そんな論争が始まりそうになったが、私もその鳥の異変に気がついた。
「ちょ、ちょっと待って下さい。何か変ですよ。」
その鳥は旋回を止め、空に制止している。いや、制止していると言うよりだんだん大きくなっている、降下しているのだ。
『キェーーーー!!』
甲高い泣き声と共に急激に巨大化する鳥。その巨大化の速度と言ったら、一般人の私が知っている常識の範疇を越えていた。あっと言う間に目の前にいる馬の上に轟音をともなわせ、いかずちの如く降り立ち、次のはばたきで叩き付けるような強風をその場に残し、矢よりも早く飛び去った。
見る見る小さくなる鳥を呆気に取られて見送り、一同ぼーぜんとしてしまった。
「何だったんだ今の・・・お前知ってるか?」
「さあ」
護衛に雇われた冒険者達の話題は、今飛び去った巨大な鳥の正体についてだったが、雇い主の叫びはそれとは別のものだった。
「馬が持ってかれたぁ〜〜〜!」<(TワT)>
「それぐらい、いいじゃね〜か。持ってかれたのは馬だけなんだから。」(^_^)
冒険者の1人が、怪我一つなく無事に生きているからよかったじゃないか、と言うような事を言って雇い主をはげましている。
「バカモノ!馬が持ってかれたという事はこの荷物を自力で運ばなくてはいけないのだぞ!」
山の様に積まれた大量の荷物。ここにいる人数で運ぶとなるとかなり骨が折れる量だ。
「ヒィ〜〜」<(TワT)>
そして、大量の荷物を背負った一団が、泣きながら次の街に向かって歩き始めたのであった。
後日聞いたのだが、あの巨大な鳥はロックと言う名で、風か何かで飛ばされてきたのだろうと言う話しだった。
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